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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第二話 鬼哭の異変

しかしその時、ローが手で持って地面に立てていた鬼哭が、また女のほうに倒れた。
「えっ?!」
さすがに女は面食らったようだった。倒れてきた鬼哭は、顔に当たる前に女自身が手で受け止めた。
「もっ、申し訳ねえ。なんでこんなことに…」
ローは驚いて、困惑していた。自分の手はしっかりと鬼哭を握っていたはずである。それがなぜ倒れた?
「おい、何やってるんだよ。ボーっとしてんじゃねえぞ」
ゾロがローに向かって、ちょっとドスの効いた声で言う。そして改めて女に向かって「多分、手元が狂ったんだ。許してやってくれ」と声をかけた。
女は「はい」と短く返事をして、足早に立ち去っていった。
その後ろ姿を見送りつつ、ゾロはちょっと笑いながらローに言った。
「なんだお前、ああいう女が好みなのか?」
「違う、ナンパじゃねえ。鬼哭が勝手に倒れたんだ!」
「鬼哭が勝手に倒れたあ?」
ローは頭の中で、今起こったことを考えていた。肩に担いでいた鬼哭が落ちた…。
可能性1、自分の後ろに誰かがいて、鬼哭の柄の辺りを振り払って肩から落とした…あり得ねえ、自分の後ろに人がいたら気が付かねえはずがねえ。しかし、能力者等の特殊な能力を持つヤツだったら、あり得ねえというばかりでもねえかもしれねえ。例えば、麦わら屋が手を伸ばしてやったとか…??
可能性2、鼻屋がパチンコ弾で、離れたところから鬼哭の柄を打った。それではじかれた鬼哭が肩から落ちた…奴の狙撃の腕は超一流だ。あり得るかもしれねえ。
可能性3、ドフラミンゴが糸で鬼哭を操った…これが一番ヤバいが、可能性が全くねえ訳でもねえ…。
それに肩から落ちた次は、立てて持っていた鬼哭が倒れた。これはさっきと違って目の前で起こったことだから、麦わら屋の手がどっかから出ていたとしても、それを見逃すはずはねえ…いや、そうでもねえか?上手く死角を突かれた可能性もあるかもしれねえ。そうだ、犯人はニコ屋という可能性もある。どっかからニコ屋の手が出て鬼哭を倒した…。
「おい、何変なこと言ってんだよ。そんなことある訳ねえじゃねえか」
「いや、しかし…」
ローは戸惑いながらも言い訳をし、この状況の可能性を必死に考える。

その時、一瞬の隙をついて、鬼哭がローの手をすり抜けて、なんと真っ直ぐ前方に飛んだ。そして、数メートル先を歩いていく女の肩のあたりに、後ろから思いっきりぶつかったのだ。
「あっ!!」「何だこれは!!」
「きゃあっ!!」
バシッっと音をさせて女の肩にぶつかった鬼哭は、ガシャリと大きな音を立てて、石畳みの道路の上に落ちた。鞘が付いたままだから当たっても切れはしないが、重さがあるので痛い思いをしたはずだ。
女は転びこそはしなかったが、前方につんのめった。
思いもかけない出来事と大きな音に、周囲の視線が一斉に三人に集中する。はた目には、二人組の男の片方が、通行人の女性に後ろから刀を投げつけたと写った…かもしれない。それにしては、刀を投げたはずの男の動作が不自然だったのだが。
「おい、大丈夫か」
「誤解するな、俺は何もしちゃいねえ」
ローとゾロが女に駆け寄る。通行人達は立ち止まって、その様子を遠巻きに見ていた。二人の男が堅気でなさそうな様子なので、積極的に係わることを躊躇しているようだ。「何だ?」「若い女性が男二人に因縁を付けられているようだ」と、ヒソヒソささやく声も聞こえてくる。
女は肩のあたりを押さえながら振り返った。相変わらず帽子のせいで表情はみえないが、口元をきつく引き結んでいる。通行人の目には、女が怯えているように見えているかもしれない。
「コイツを投げたのは俺じゃない。信じられねえかもしれないが、何かが近くにいて悪さをしているらしい」
地面に落ちている鬼哭を拾いながら、ローはそう女に説明した。こちらに悪気がないことを示すために、腰の低い態度に徹している。
ゾロは周囲に注意を集中させていた。何者かが近くにいるなら、例え透明人間であっても、気配で分かるはずだ。しかし、怪しい奴は見つけられなかった。
「ただのいたずらか…。それにしてもたちが悪い。アンタ、ぶつかったところは大丈夫か?」
もしもいたずらだとしたら、犯人はルフィーやウソップ等ではないだろう…犯人は俺たちに悪意を持ったヤツだ。あるいは…。
ローとゾロが考えていることは、ほぼ一致していた。先にそれを相手に向かって口に出したのは、ゾロだった。
「ところでアンタ、誰かからこういう嫌がらせをされる覚えはあるか?」
見たところ、いかにも非力そうな女である。上品な雰囲気ではあるが、運動神経はこの上なくどんくさそうで、頼りなげだ。これでは、ある種のヤカラに付けいられることがあっても、おかしくないかもしれない…。
ゾロが言ったことに、女がピクリと反応したような気がした。なるほど、いわゆるストーカーだろうか。つまり、ターゲットは俺達じゃなく、この女だったという訳か。
「どこまで行くんだ?心配なら送って行ってやるよ」
親切にも、ゾロが女にこう提案した。
女は、顔の半分を帽子で隠したまま、うつむいていた顔を二人のほうに上げた。
そして、しばらく間をおいてからこう言った。
「それでは、お言葉に甘えることにします」
「ああ、そのほうがいい」
「どこまで送っていけばいい?家か?」
「…」
三人を遠巻きに見ていた通行人達は、それ以上の騒ぎは起こらなそうだと見て、ほとんどがこの場を離れていた。
三人は連れ立って歩きだした。
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