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アナタの隣で

原作: 名探偵コナン 作者: rabun
目次

第五話 互いの思いを重ね

電話が切れてからもう何時間経っただろう

もうしばらくただただ携帯を前に呆然とするだけで
何をする気も起きず、じっと床の光る画面を見つめている

『いつでも聞くから』

彼の優しさにあふれた言葉

その言葉に自分の幼さと余裕のなさを痛感させられる

「・・・どうしてこうなったんだろうな」

もう画面は消え暗くなっているにも関わらず、
携帯から目を逸らすことができずにいた

「・・・明日、連絡しよう」

もうだいぶ重くなった体を起こし、
寝床に入る。

瞼はまったく重くなる気配がなかったが、
無理やり閉じて休息をとることに集中しようとした



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ーチュンチュンー

「・・・ん、朝か・・・」

いつも通りの時間
いつも通りの朝陽

「・・・・」

でも今日はいつもと何か違っている

気持ちが高揚しているようだった

「・・・連絡・・・・するか」

携帯を手に取り、連絡先を探す

『降谷零』

文字を見つけるがなかなかボタンが押せない

「・・・まだ朝も早いしもう少し後にしよう」

あまりにも朝いちばんでの電話は失礼かと思い、
とりあえず朝食をとり、身支度を整えた。

「・・今日は非番だが、何があるかわからないしな」

いつも通りスーツに着替えて、家を出る。


ーーーーーーーーーーーー

「安室さ~ん!そこのダンボール取ってもらえますか?」

場所は喫茶店ポアロ。
明るい女性店員の声が店内に響く。

「梓さん。はい、これでいいですか?」

屈託のない笑顔を見せる青年は、
日差しの照らす窓辺を見やる

『降谷さんに隠し事なんて』

昨日の電話の内容が頭から離れない

『お見通しなんですね』

彼の発した「お見通し」という言葉

「・・・買いかぶりすぎだ、風間は」

自分の中で隠していることが何か、
ある程度検討はついていた。

自分の悪い癖だが、それを直に問うことはせず、
相手の意思で話してもらうよう誘導をする。

「・・・それでも話そうとしないんだから、きっと俺の検討違いなんだろうな・・・」

ふぅと一息ついて仕事に戻る。

ーカランカランー

来客の報せに振り向くと、そこには見慣れた人影があった

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「いらっしゃいませ~!おひとり様ですか?」

向き合う二人をよそに明るい声が誘導する。

「・・・はい」

「ではこちらのお席にどうぞ!」

席に着く客の姿を横目で追う。
席に着いた客もまた、店員を見つめていた。

「コーヒーを一つ。」
「はい!ありがとうございます!」

客のコーヒーを淹れている最中、
ふと声をかけられる。

「安室さん、あのお客様とお知り合いですか?」

「・・・さあ、見たことのない方ですよ。何でですか?」


「あの方、スーツもビシっとしてて、このお店にくる常連の方とは少し雰囲気が違うような気がするんですよね~。それに入ってきたとき、安室さんをじっと見ていたような~・・・」

「気のせいですよ。ドアの前に僕が居たから席を誘導してもらいたいと思ってみていたんじゃないですか?」

「・・ん~そうなんですかね~、でも安室さんが言うならそうなのかもしれないですね」

「そうですそうです。、コーヒー入りましたよ」

「あ、はーい!届けてきます~」

ぱたぱた

客席に向かう女性店員を見つめ、
その先の男性客を見る

「・・・なんでこんなところに来たんだ」
ボソ・・・


ーーーーーーーーーー

カランカラン

「ありがとうございました~」

男性客はコーヒー1杯だけ飲んで、
あっという間に出て行ってしまった。

エプロンを外し、カウンターに置く。

「・・・梓さんすみません。サンドイッチの食材切らしてるみたいなので、買い出し行ってきても大丈夫ですか?」

「あれ?昨日買ってきたと思いましたけど?」

冷蔵庫を除く、女性店員。
そこには少しのレタスやトマトが並んでいる。
食材を切らしているというほどではないように思えるが・・・

「夕方まで持ちそうにないので買っておいた方がいいですよ。夕方結構サンドイッチ注文入りますよね」

「確かに!そしたらお願いできます?」

「もちろん。行ってきますね」

カランカラン


ーーーーーーーーーーー


少し汗ばむくらいの日差しがさす中、
目的もなく歩く。

「・・・困った顔してたな」

喫茶店ポアロの男性店員の仮面の下に、
あきらかに動揺の顔が見えた。

「なんで行ったりしたんだろう」

普段なら彼の別の顔に会いに行くことはしない。

彼の仕事の妨げになる。

でも足が自然とあの場所へと向かってしまったのだ。

向かった先の店のドア越しに彼の顔を見たとき、
止まりかけてた足が更に進んだ。

「・・・恐ろしいな。自制ができなくなるというのは」

仕事柄、自分の気持ちのなすがままに動くことは
ほとんどない。

今日は不思議なくらいに自分の気持ちに
素直に行動できている

「まあ、そのせいであんな顔をさせてしまったわけだが」


少し体が火照ってきたので、
ちょうどいい木陰のベンチで一休みすることに。

「・・・」

心地よい風が通り抜ける。
木々の間からさす木漏れ日に目を細めると・・・

「・・・!!!」

「非番なのになんでスーツなんて着てるんだ」

そこにはさっきまで喫茶店にいたはずの降谷。

「降谷さ・・・!なんで、お店は?」

「お前が急に店に来たから何かがあったのかと思って、こうして追いかけてきたんじゃないか」

まっすぐに自分をみつめる瞳に
思わず目をそらしてしまう

「・・いえ。近くまで用事があったもので。ポアロには立ち寄る予定ではなかったのですが、ちょうどのどが渇いていて・・・」

苦しい。
我ながらかなり苦しまぎれの言い訳だと思った。

「そうか」

それでも問い詰めるわけでもなく、
静かに話を聞いてくれている。

「ここまで追いかけてきていただいたのにすみません」

相変わらず目を合わせることはできず、
深く礼をすることで自分の気持ちをごまかした。

「風間・・・」

ふと肩に触れられる。
それだけで心臓が破裂しそうなくらい脈を打つ。

「・・・はい。」

そう答えるのが精いっぱいだった。

「・・・こっちを見てくれ」

「!」

その声は今まで聞いたどの声よりも温かく、
どこか寂しく苦しく聞こえた。

思わず顔を見上げると・・・

チュ・・・

「!!///」

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