ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

アナタの隣で

原作: 名探偵コナン 作者: rabun
目次

第四話 整理

気付いてしまった

できれば気付きたくなどなかった

この思いを思い知ったところで
自分には解決する術はない

いや

この問題は誰にも解決できないに決まってる


「・・・俺が降谷さんを・・・?」

暗い部屋でベットの脇にともるわずかな光
それを見つめて自問自答を繰り返す

「いや、そんなハズは・・・っくそ」

頭を掻きむしって苛立ちを見せる

降谷さんのことは上司として
先輩として大いに尊敬している

彼のような捜査官になりたいと
日々努力を積み重ねているのも事実だ

出会ったときからその思いは変わらない


「・・・変わってしまったのか」


必要最低限のものだけを配置した殺風景な部屋

ただ茫然と天井を見上げ
独り言を繰り返すだけ

ふと目を閉じるとあの時の光景が蘇る

楽しそうに話す横顔

見たことのない笑顔

思い出すだけでも胸が締め付けられそうになる


「・・・安室透は降谷さんの仮の顔」

薄く瞼を開けると脳裏には大好きな彼の顔

「・・・何を気にしているんだ」

自分の胸の中にあるモヤモヤしたものを
払拭できないままでいると


ーブーブーブーー


「・・・・・誰だこんな時間に」

携帯の画面を見やる

=降谷 零=

「!!!!」

表示されている名前を見て
即座に携帯を手に取る

ーピッー

「・・・はい、風間です」

(悟られてはいけない・・・平常心、平常心・・・)

『遅くに悪かったな、寝てたか?』

いつも通りの声色に拍子抜けしてしまう

「いえ。少し調べものをしていましたので」

咄嗟に嘘を付ついてしまった自分が情けない
同時に上司に嘘をついた罪悪感もあった

『そうか。仕事もいいがほどほどにした方がいい。睡眠による体力回復も大事な仕事を全うするためには必要不可欠だ。休息は取れるときにしっかりとっておけ。」

いつも通り自分を諭す声に耳を傾けていると
胸のわだかまりがゆっくり溶けていくような気がした

『・・・』

「・・・」

急にどちらともなく会話が途切れ、
沈黙が流れる

「・・・降谷・・さん?」

その沈黙に耐えきれなくなって、恐る恐る口を開く

『・・・風間』

低いトーンで呼ばれる自分の名前
心臓が小さく跳ねるのが分かった

その鼓動を打ち消すように何かを話そうと
頭を働かせる


「・・・はい、何か仕事の案件でしょうか」

口から出た言葉は口に戻すことはできない

(なんでこんなことしか言えないんだ。もっと気の利いたことが・・・『僕に隠し事をしていないか』

時が止まったようだった
まるで目の前に彼がいるかのような錯覚に襲われ、
顔を見上げる

その顔は徐々に熱くなり、手には汗がにじむ


ああ

やっぱり彼には

「・・・隠し通せるはずありませんでしたね」

聞こえるか聞こえないかのかすかな声

『ん・・?どうした、なんだ?電波のせいか、うまく聞き取れなかったんだが・・・』

「あ、いえ。なんでもありません。それに、僕が降谷さんに隠し事なんてするはずがありませんよ。」

間髪入れずに話し続ける

「でも降谷さんのことですから、ここの所仕事が立て込んでる私の様子がおかしいので、心配してくださったんですよね。」

『・・・・ん・あぁ・・・』

彼は勢いに沿うようにただただ話を聞いてくれる

「ありがとうございます。でも心配には及びません。きちんと仕事は全うします。それに・・・『風間・・・』

それまで何も言わずに相槌を打ってくれていた彼が、唐突に話を遮られ、次の言葉が浮かばない

短い沈黙のあと、彼がその沈黙を破る

『・・・もういい。悪かった、無理に聞き出そうとして』

その声は少し寂しげに聞こえた

自分のしてしまったことに気づき、
すぐさま弁解を試みるが・・・

「っ降谷さ・・・『夜分遅くに悪かったな。本当にもう休んだ方がいい時間だ』

電話を切ろうとしているのがヒシヒシと伝わってきた

それをとめる術も権利も自分にはない

そもそも自分がそう仕向けたのだから

『また、な。・・・おやすみ』

「はい、おやすみなさい」

ーッツーツーツーー

ゴトン・・・

体の力が抜け、その手から携帯が落ちる

「~~~~~ッッッ」

言い表せない気持ちが胸を締め付ける

せっかくの彼からの心配の電話だったのに
業務的に淡々と返すことしかできなかった

もしかしたら彼を傷つけたかも知れない

彼の厚意を仇で返してしまったような気になって
そのまま部屋の隅でうなだれるしかなかった


ーブーー

床に落ちたままの携帯が光る

=降谷 零=

降谷さんからのメールだった

ーーーーーーー

さっきは悪かった

ーーーーーーー

こっちが謝らないといけないのに
こんな自分に謝罪をしてくれる

それだけ十分すぎるくらいだった

「・・・あれ。空白があるな・・・」

謝罪の下には不自然な空白があった

さらに下にスクロールすると・・・


ーーーーーーー











いつでも聞くから

ーーーーーーーー

「・・・ッ!!!」

胸が張り裂けるようだった

たった二言の短いメールだったが
彼の思いが痛いほど伝わってきた

自分が隠し事をしていることも彼はわかっていて
それを話したくないが為にあしらわれたことも
もちろんわかっていて・・・

それでもこんな形で電話を置いた自分が、
話したくなった時が来たときの為に・・・


「・・・・まったく・・・あなたって人は・・・」


携帯の画面を眺め、静かに目を閉じ彼を想う


「・・・降谷さん・・・」



そうだ

だから俺は












彼を好きになったんだ

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。