ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

アナタの隣で

原作: 名探偵コナン 作者: rabun
目次

第一話 平凡な日々

ーチュンチュンー

暖かい日差しが窓の隙間から差し込む。
カーテンを開け、深呼吸をする。

窓から見える木々には露がキラキラと輝き、
朝のほんのひと時がとても特別なように感じる。

ふと目に時計が目に入る。

(もうこんな時間か・・・今日の予定は・・・)

外の輝きから目を背け、サイドテーブルにあるメガネを手に取る。
すぐそばには携帯があり、留守電の通知が出ている。

(・・・降谷さんからか。仕事の依頼だろう。早く確認しなくては)

降谷さんは仕事の上司であり、自分が最も尊敬する人でもある。
冷血なところもあるが、それは国家のため、
日本国民のためであることは自分が一番よく知っていると自負している。

スマートフォンを手に取り、留守電の確認をしようとしたその時だった。

ーピンポーンー

(こんな時間に来客?訪ねてくる友人などいないはずだが)

軽く身なりを整え玄関まで向かい、覗き穴から用心深く外を確認する。

(・・・!!)

穴ごしに見えたのは、褐色の肌に金髪の青年。
先に紹介した”降谷零”だった。

ーガチャー

「降谷さん・・!!なんで・・・」

突然の上司の来訪に驚きを隠せない。
寝起きなことも相まって、なかなか言葉が出てこない。

そんな自分を見かねて、降谷さんの方から話を切り出してくれた。

「なんでも何も、君が電話を取らないから、こうやって来たんじゃないか」

少しあきれたような様子で、でも優しく笑ってくれている。

「あ・・・」

自分の携帯を改めて確認し、今の事態をある程度把握する。

「仕事ですか?それでしたら、いますぐ着替えてきますので・・・」
「違うんだ風見。今日は・・・」

急いで身支度を整えようとしたが、降谷さんの声に動きを止め、振り返る

「・・・へ?」



ーガヤガヤー

「降谷さん聞いてもいいですか?」

「なんだ風見。遠慮なく言ってみろ」

目の前にいる降谷さんは現状をさも当然のように余裕の表情だ。

「なんで私は今降谷さんとランチをしているのですか」



回想

『ランチに行こう、風見!』

『・・・へ?』

『行先は決めてある。早く支度をしてくれ!』

ーーーーー

「なんでとは心外だな。そんなに俺とのランチがつまらないのか?」

ふふっと笑い、コーヒーをすする降谷さん。

「や、そんな!滅相も!!ないです!!ありがたいことです、本当に!!」

慌てて訂正したせいか、言葉が途切れ途切れだ。
そんな私を見て彼はまだ微笑み話しを続ける。

「ならいいが・・・せっかくの休日なんだ。ゆっくりと食事を楽しんだっていいだろう」

「・・・そうですね」

穏やかな日差しの中、おしゃれなレストランで上司と二人でランチを楽しむ自分がなんだか可笑しくなり、思わず笑みがこぼれる。

周りには若いカップルや、女子会をしているのであろう学生たち、
家事を終え、ほっと一息とママ友と話しに花を咲かせる主婦。

いい年をした男二人が真正面に向かいあい、
一人は優雅にコーヒーをすすり、もう一人は緊張した面持ちで
ただただそこに座っている光景は、端から見ても可笑しい絵図なのは間違いなかった。

(降谷さんが休日に誘ってくれるなんて・・)

唐突(かつ強引)な誘いではあったが、
自分にとってはこの上ない誘いであり、断る理由なんてなかった。



「・・・風見。最近ちゃんと寝てるのか?」

「へ?」

彼の突然の問いに箸を止める。
戸惑う自分をよそに、聞いた本人はどうともない様子で、
コーヒー片手に景色を眺めている。

「仕事があるときは難しいこともありますね。最近はなかなか自宅に帰る機会もないので。」

目の前にあるいい香りを漂わせるピザに手を伸ばす。
ちょうど小腹も空いてきた頃合いだった。

「そうか。ここ最近任務も多いから仕方ないとは思うが、たまには仮眠でもいいから体を休めてくれ」

コーヒーを置き、まっすぐこちらを見る彼は突如真剣な様子だった。

「ありがとうございます。降谷さんこそ、ちゃんとお休みになられた方がいいですよ。」

そんな彼の様子に気づいていながらも、なぜか気づいてないふりをして、
軽く話を逸らした。

「俺は大丈夫だ。こうやってお前と息抜きをする時間もあるしな」

そう言って上司もピザに手を伸ばす。

「おいしいですよね!このピザ!」

ふと日常の会話に戻る。
彼も真剣な顔から打って変わって、優しい顔立ちに戻っていた。

「そうだな。トマトの酸味とサラミの塩気がちょうどいいバランスだ、うちの店でもやれば・・・」
「降谷さんっっそれ以上は・・・」

彼の前に身を乗り出して制止する。

「そうか、悪かったな。どうも最近あちらの時間が長いせいか、つい出てしまうことがあって・・・」

頭をかきむしり、バツが悪そうにしているが、
どこか嬉しそうにも見える。

「でも降谷さんにしては珍しいですね、こんな風に私が制止することになるなんて」

彼はいつでも完璧だ。
そうなるために今まで人知れず努力してきたのは容易に想像できる。
ボロを出すなんて、彼の場合あり得ないとさえ断言できるほどだ。

「そうでもないだろう?風見が居てくれてこその俺なんだからな」


そう言ってほほ笑む彼はとても輝いていて自分には眩しすぎた。

目を背けてしまいそうになるほどに・・・。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。