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俺だけのメイドになってよ

原作: その他 (原作:うたの☆プリンスさまっ♪) 作者: めぐりめく
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俺だけのメイドになってよ

王子様みたいな人と出会って、運命の恋をしたい。そう夢見る女の子は多いはず。私も例外なくその一人で、けれどそんな夢物語が叶うはずがないとどこかで諦めてたりもしていた。だって、現実って都合よくいかないものでしょう?
そんな現実主義者の私に、神様がえこひいきをしたのか、最近の私の身の回りでは夢みたいなことばかり起こっている。始まりは、芸能界へのスカウトだった。
「ユー、アイドル目指しちゃいなYO?」
街角で出会った怪しげなおじさん(後にシャイニング早乙女だと知る)にそう声を掛けられ、特待生として早乙女学園に入学したのが数ヶ月前。特待生なので、入学金・授業料免除という夢のような待遇。家が貧乏なのでこれは有り難かった。
芸能専門学校だけあってクラスメイトは、美男美女ばかり。あまりの顔面偏差値の高さに、クラクラする。中には財閥の御曹司もいて、彼らはスクールカーストの頂点に君臨していた。王子様と持て囃される彼らと庶民出身の自分には、接点などないだろうなと思っていた。思っていたのに!
「どうしたの、ユキ?さっきからボーッとして」
こちらを気遣うよう優しいレンの声。私はハッと我に返った。
「はっ、ごめん!! 話聞いてなかった」
「大丈夫かい? なんだか顔色が悪いようだけど」
「う、うん。ちょっと寝不足なだけ」
「夜遊びでもしてたのかな?」
言いながら、レンが私の頰に手を当ててくる。男性らしい大きな手に思わずドキリとする。その手はそのまま、テーブルの上に乗せた私の手に重ねられる。
「なんだか手も冷えてるみたいだね。本当に大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だって!」
「あれ、なんだか手が荒れているようだけど」
私の右手を手に取り、まじまじと見つめるレン。私は慌てて弁解した。
「最近、家の掃除をしたから、手が荒れちゃって!あははは…」
これ以上突っ込まれたらヤバい。私は慌てて立ち上がった。
「いけない、習い事の時間だ!今日はごめんね、レン」



私とレンは付き合っている。話せば長くなるのだが、紆余曲折あって1ヶ月ほど前から付き合い始めた。
学園は恋愛禁止なので、周りには秘密にしている。特にレンは女子からの絶大な人気があり、ファンクラブまで結成されているほど。彼女達にバレたときのことを考えるとゾッとする。
「どうした、ユキ?さっきからボーッとして」
いけない、また考え事をしていた。本日二度目の注意に、私は慌てて意識を呼び戻した。
「ごめんなさい、真斗。ちゃんと働くね」
「少し疲れているようだが」
「ううん、平気平気!次はどこを掃除したらいい?」
「次は客室を頼む」
「オッケー!」
掃除用具を抱え、私は客室へと向かった。客間はスイートルーム並みの豪華さだった。さすが御曹司。こんな別邸を持っているなんて。
私はシーツを取り替えようと、ベッドに手をかけた。あぁ、ふかふかで気持ちがいい。なんだか意識が遠くなってきた……



暖かくて大きな手で頭を撫でられている。気持ちがいい。少しくすぐったくなって身悶えすると、手は私の頰へ。そしておでこに柔らかな感触。これって、キス……?
寝ぼけ眼を開くと、すぐそこにレンの顔があった。
「おはよう、マイハニー」
「おは…よう…?」
状況がうまく飲み込めず、ぼんやりと挨拶を返す私。するとレンの顔にいたずらっ子のような笑みが浮かんだ。
「そんな無防備でいると、襲っちゃうよ?」
レンの顔が近づいてくる。私はハッと身を起こした。ここは、ベッドの中だ!
「どうしてレンがここに!? 私、掃除していたはずなのに!」
「真斗から連絡を貰ってね。君が倒れたっていうからびっくりしたよ」
「そんな……私、寝ちゃってたんだ…」
なんたる失態。落ち込む私に、追い打ちをかけるようにレンが言う。
「どうしてこのことを黙ってたんだい?お金が欲しいなら俺に相談してくれれば良かったのに」
「ごめん、習い事に行くなんて嘘ついて。でも、レンに頼るわけにはいかなかったんだ」
「どうして?」
「来月、レンの誕生日でしょ?」
私は貧乏であまりお金を持っていなかった。だから、デートのときはいつもレンに頼りっぱなし。誕生日くらいはちゃんと自分で稼いだお金でプレゼントしたかったのだ。
レンを見ると、呆れたような、それでいて嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。
「君って人は…なんて可愛いんだ」
そのままベッドの上で抱きしめられる。服の上越しでも分かるレンの厚い胸板にドキドキする。
「それで、メイド服を着て掃除なんてしていたんだね」
「うん…許してくれる?」
尋ねると、レンの瞳にまた意味ありげな光が宿った。
「俺だけのメイドになってよ」
「!?」
「ユキの可愛いメイド服姿、他の男に見せたくないんだ」
「でも、それじゃプレゼント買えなくなっちゃう」
「1日俺専用のメイドになってよ」
「そんなんでいいの!?」
「どんなお願いでも聞いてくれるならね」
なんだか嫌な予感がする。でも、私に拒否権はなかった。
一体どんな誕生日になることやら。
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