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ジャンル: その他 作者: Q_ra123
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ぽつぽつ…
「あ、雨だ…」
天はぽつりと呟いた。さっきまでスタジオでレッスンをしていたから全然気づかなかった。そして、今日の天気予報は晴れ。雨が降るなんて微塵も考えていなかった。いつもは持っているはずの折り畳み傘も今日に限って忘れてしまった。それもあの男のせいだ。本当に…。スタジオからTRIGGERの3人が暮らす家まではあまり距離がない。タクシーを使うのも躊躇われた。
「…しょうがないか」
天らしくは無い発想だったが、走って帰ろうと決心した。アイドルらしからぬ行動だか、今のTRIGGERにはお金もない。無駄金を使ってはいけない。ここから家までもそんなに距離は無いし、別にこの雨で濡れても風邪は引かないだろう。普段から健康面には気をつけてる…。うん、大丈夫。どうにかなる。
楽はプロデューサーと話し合いがあるから遅くなるみたいだし、龍も用事があると先にスタジオを出て行った。
よし、行こう。
天は走り出そうとした。そのとき、天の肩が誰かにぐっと掴まれた。
「おい。何やってんだよ。」
天は慌てて振り返った。そこには呆れた顔をした銀髪の男が茫然と立っていた。
「なに?帰ろうとしてただけだよ。楽、話し合い終わったの?早かったね。」
「あぁ。確認程度のものだったからな。それよりお前、傘は?」
楽は天に不思議そうに尋ねた。
「傘…忘れた。」
「は?珍しいな。いつも持ってんじゃねーか。」
楽は驚いた顔で天を見た。いつでも完璧主義の天が傘を忘れるとは考えてもいなかったのだ。TRIGGERになってから天が忘れ物をしたところなんて見たことがない。それほど普段から完璧なのだ。天気予報が晴れでもいつも折り畳みの傘を持ってるのに。
「………それはがくが…」
天は俯きながら楽にそう言った。
「は?俺?」
楽は天の顔を覗くと、顔を真っ赤にしていた。
「あー………あれかぁ…」
楽はニヤニヤしながら今朝のことを思い出した。いや、今朝というより昨日の夜からか…
昨日は龍が居なくて2人で家に居たんだよな。だから、昨日の夜は盛り上がった。TRIGGERで同居し始めてから天が恥ずかしがって、あまりさせてくれなかったのだが、昨晩は龍が飲みに行ったから、家には楽と天の2人だった。そこで、今日こそ…と意気込んで天を誘ったのだ。
天は恥ずかしそうに、最初は、「え………」みたいなこと言ってたけど、拒絶はされなかった。
天は普段から悪魔じみたな態度を楽に取っているが、結構楽のことが好きなのだ。それを隠し切れていないのがまた愛おしい。
もちろん、仕事中はきっちり隠しているのだが…最近はプライベートの時間も3人で過ごすことが多いからダダ漏れだ。

…龍もこの天の様子に薄々気付いている。この前なんて、「天って楽のこと本当に大好きだよね〜」なんて天が龍に言われていた。天は、「…そんなことない!!!」と顔を真っ赤にして反論していた。説得力のかけらもない。やっぱり隠し切れていないのだ。楽と天の関係は龍に言ってあるが、いざ目の前で言われると恥ずかしいらしい。そこがいつもとのギャップでまた愛おしい。愛されているんだなとつくづく感じられる。
まあ、結局…お互いに久しぶりだったから、相当溜まっていたんだよな。3回もやってしまった。天は感じやすいっつうか…(まあ、俺がこうしたんだけどな)だから、1回だけでも相当身体に負担はかかっている。しかし、欲望というものは恐ろしいもので、見ず知らずに3回もしてしまったのだ。おかげで、天の身体はぐったりしていた。申し訳ないとは思っている。

いつも仕事優先の天がこんなになるまでするのは珍しい。本当に珍しい。やっぱり天も相当溜まっていたのだ。

「まあ、俺だけのせいじゃ無えよな?」
楽は、ははっと笑いながら天の顔を再び覗きこんだ。
「そうだけどさ…もう、大変だったんだからね…」
天は下を向きながら楽に話した。顔はもちろん赤く、耳までも赤くしている。
「でも、後処理もしっかりしてやっただろ。気絶してるお前を風呂に入れんのも大変なんだぞ。」
「なっ…!!!」
天は顔を真っ赤にして楽にボディーブローを決め込んだ。
「うぐっ…!」
「………こんな場所で言わないでよ!誰が聞いてるかわからないでしょ!」
天は慌てて楽の方を見上げて言った。
「大丈夫だって…誰もいねぇよ。」
「………そう。」
安心した様子で、また天は俯いた。

「昨日のせいで寝坊したんだろ。だから傘がねぇのか。」
まぁ、そうさせたのも俺のせいだけどな。可愛い天が悪い。
「そんなこと…」
「ぐっすりだったもんな!久しぶりに寝てる天の顔見たわ。」
「ちょっと!!!」
天は楽の足を勢いよく踏んだ。
「痛!」
「じゃあね!楽!僕、もう帰るから!」
そう言って、天はまた1人で走り出そうとした。まだ雨は降り続いていた。
慌てて楽は天の腕を掴んだ。
「待てって。風邪引くぞ。」
「これくらい大丈夫だよ。」
「いや、俺が心配だから駄目。俺の傘入ってけ。大丈夫だ。誰も見てねぇよ。」
まぁ、天は要するに相合傘というものが恥ずかしいんだろう。それ以上のことまでしてるのに。いつまで経っても初々しい。
「………わかった。」

そして、楽と点は、2人で1つの傘をさしながら帰路についた。
楽は天が濡れないように気をつけながら家へと戻った。途中、天に「近い!」と怒られたが、聞かなかったことにして、天の腰をこちら側に寄せた。また耳まで赤くしていたがそれにも気付かないフリをした。天の反論はただの照れ隠しだからな…。見なかったことにしてやろう。
こうして2人は普段より少しゆっくり目に歩いて帰っていった。
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