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ゴルゴ13の休暇

原作: その他 (原作:ゴルゴ13) 作者: paranto
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第六話

轟音と同時に空の黒い影はきりきり舞して地上に落下した。
ゴルゴの後ろからガイドが歓声をあげる。
「あんた、凄すぎるよ! いったい何者なんだい?」
ガイドの手にはすでにぐったりしたリョコウキジが握られ、傍らの地面にも数匹の鳥が並べられている。
口笛を吹いてガイドは新たな一匹をその列に加えた。
「お世辞じゃないよ、セニョール。猟が趣味ってやつはいくらでもいたけどさ、あんたは違う。こんな凄腕の奴見たことない。なんだかほんとに“プロ”って気がするよ」
表情を変えずにガイドの言葉を聞き流しているゴルゴ。じっと銃を見つめる。
「銃がいい」
「えっ?」
「ヘビーな銃器だが、慣れればこれほど頼もしいのはない」
「そうかい」
ガイドは笑った。
「それ、市販の銃じゃないね。キチガイじいさんのところのだろ?」
「……ああ。あの店主のお手製のだ。こっちの腕を気に入って貸してくれた」
ゴルゴは唇の端に少しだけ笑みを浮かべた。

耳をつんざく轟音と立て続けの銃撃で鳥の姿はまばらになってきている。
空をすかすと森の離れにわずかに数羽のツグミらしき姿が見え隠れしている。
ゴルゴは海の彼方に霞むワタリドリの群れに目をやった。
「鳥を撃つ時と人を相手にする時の違いが分かるか」
「えっ」
ガイドは目を白黒させて言葉の意味を図りかねている。
「……どういうことだい」
「あの爺さんなら分かるだろうな」
いぶかしげにガイドは首を振る。
「人を撃つ時…… あんた軍隊にでもいたんだな」
「…………」
銃身をガイドに見せてゴルゴはつぶやく。
「鳥は反撃してこない」
「…………?」
「まれにハゲタカみたいにヒトの腐肉を狙う鳥はいる。だがな、果敢に反撃してくる鳥はマレだ」
「そりゃそうだろうけど……」
「巣の雛を守ろうとする鳥もいるが、それは話が違う」
ゴルゴはポンポンと銃身を叩いて空に目をやる。
「どんな荒っぽい鳥でもこちらが同じ目に合うリスクは考えなくていい。これほどラクな射撃はない」
「…………」
ゴルゴの話にガイドは唖然としている。
「なんかさ、あんた普通の人と感性が違うね。ついていけないや」
ガイドは頭を振った。

新たな獲物をきちんと並べ直すとガイドは振り返った。
「どうする? まだやるかね? 鳥はね、町のレストランに頼めばサバいて旨い料理を作ってくる」
「……あと一羽で終わろう」

崖の岩肌から双眼鏡の先が覗いた。
スキンヘッドにライフルを構えた男が背後のバルーゾにささやく。
「おい、話が違うぞ。ゴルゴも銃持ってるじゃねえか」
双眼鏡をひったくってバルーゾも舌打ちする。
「なんてこった。街で手に入れやがったのか」
二人はしばらく無言でゴルゴの様子を眺めた。
「ただの猟銃ならいつものゴルゴのようにはやれないはずだ」
「……無茶言うなよ。あいつの腕は知ってるだろう。銃をもたせたら奴に勝てる奴はいねえ」
苛立って唇をバルーゾは噛んだ。
「いいか、今は千載一遇のチャンスなんだ。ゴルゴを殺れればおまえは世界中に名が知られるぞ」
「そりゃそうですがねえ」
困ったようにスキンヘッドの男は首を振った。
「奴はまだこちらに気づいちゃいねえ。いいか、チャンスは一度だけだ。ゴルゴが銃を手放したらその瞬間にぶち込んじまえ」
「……やってみますがねえ」
「失敗したら俺もカバーに入る」
胸元から拳銃を取り出して示す。
スキンヘッドの額には汗が光りだし無言で了解という風にうなずいた。
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