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一期一会

原作: ポケットモンスター 作者: mqw
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ナイトメアキャットとエネコロロ

月が出ている間は、私が一番早く動ける時間だ。
別に、そういう特性があるわけじゃない。私はポケモンではないからね。
ただ、気分が上がる。それだけだ。
エネコロロが、私に並走しながらのどを鳴らす。

この子は戦闘が得意ではない。主にサポート役だ。
私のポケモンはこの子だけ。でも、それで十分。

なぜなら、私自身が戦うから。

私には、人並み外れた身体能力がある。
これが血によるものなのか、幼いころから続けてきた訓練の成果なのかは、わからない。
母や父に聞いても、何も教えてくれない。

私が普通ではないと気付いたのは、旅に出てからだ。
普通、トレーナーはポケモンを仲間にする。というよりも、ポケモンを仲間にして旅をする人をトレーナーと呼ぶ。
その理由は、ポケモンに対抗できるのはポケモンだけだからだ。
多種多様な姿、技、タイプ、特性を持つ彼らに、人間では対抗することはかなわない。一部の力の弱いポケモンならあるいはとも思うが、彼らでさえ思いもよらぬ強力な技を放つこともある。
 何かに特化した専用な道具を使えば、対象のポケモンを狩ることは可能だろう。漁師や狩人は、そうやって生計を立てている。しかし、多くのポケモンは人知の及ぶ存在ではなく、あまつさえ道具を使いこなしてみせるのだから、対抗することは難しい。
 だから、トレーナーはポケモンを仲間にするのだ。ポケモンに対抗しうる存在として、同じポケモンを。

 しかし、私は違った。
 ケッキングを投げ飛ばす筋力。マッハパンチを受けてもびくともしない耐久力。サンダースともかけっこができる程の脚力。十万ボルトや火炎放射を軽く受け流す耐性。
 それらを併せ持つのが私だ。それに気づいたときは、化け物かと思った。
 なにせ、ポケモンよりも強いのだ。今まで、私より強いポケモンに出会ったことがない。

カントー地方では、まれに私のように特殊な人間が生まれてくるという。
 同じように身体能力の高い者や、ポケモンと心を通わせる者。育成に長けた者や、並外れた戦闘センスをもつもの。

 まるで、人間がポケモンになったかのようだ。

 それも、おかしくはないのかもしれない。
 そもそも、ポケモンの存在自体おかしい。もともとは動物だった彼らだ。なぜポケモンになり、あのような能力を手に入れたのだろうか。そう考えると、私はすでにポケモンなのかもしれない。動物がポケモンになるのだから、人間がポケモンになることも、そう不思議ではない。

あるいは、バリヤードやワンリキーのような人に近い姿を持った彼らは、人間がもととなったポケモンではないだろうか。
私もいずれは姿を変え、完全にポケモンになるのか。もしくは、代を重ねるごとに、人間から離れていくのだろうか。

 今度モンスターボールに入ってみようかしら。

幸い、姿形は人間そのものだ。大人しくしていれば、怪しまれることはない。
わざわざ戦ったりしなければ、普通に生活できるのだ。

しかし、そうも言っていられない理由がある。
マグマ団、アクア団。それぞれ陸と海の拡大を目指す、悪の組織だ。
彼らは古代の伝説ポケモン、グラードンとカイオーガを目覚めさせようとしている。
もしそれが成功し目覚めてしまえば、ホウエンは災禍に見舞われるだろう。
津波と地震、嵐と溶岩が、そこかしこを襲うことになる。

なんとしても、それを止めなければならない。
 たとえ人々に恐れられようとも。
 この身がポケモンになろうとも。
 持てる力のすべてを使う。この、人間はおろかポケモンさえも凌駕するこの体のすべてを。

夜は、私にとって都合がいい。
人々の目から、姿を隠してくれる。
それに夜は体が軽いんだ。

もしかしたら、夜に由縁のあるポケモンなのかも、なんて。
このエネコロロのように、月の光で力を得ているのかも。
もしそうなら、ふふふ。
昼間は寝てすごして、夜になったら駆け回る、姿を見せない幻のポケモンになれるわね。
人の世界が嫌になったら、そうしてみようかしら。
その前に、人並みの生活を人の世界でおくってみたいけど。

さあ、戦いに行かなくちゃ。
もし、この戦いが終わったら、そうね。
子供を授かるのもいいかもしれない。普通の人のように、子育てをしてみたいな。
子供を抱くときは力を入れすぎないように気を付けないと。
まあその前に、伴侶を見つけないとね。ちゃんと人間の伴侶を。
私の子供は、普通の子だといいな。
変な力を持たず、普通にポケモンを仲間にして、戦うような。
でも、もし特殊な力をもって生まれても、私の力のことは隠して普通に育てよう。
こんな力、必要もないのに振るうものじゃない。


この一週間後。
二つの組織は、正体不明の人型ポケモンによって、あっけなく壊滅することになる。
必ず夜に現れること、傍らにはいつもエネコロロが控えていることから。
ナイトメアキャットと呼ばれ、わずかな残党から恐れられ、語り継がれた。

余談だが、ナイトメアキャットの大暴れの余波で古代伝説ポケモンがびっくりして目覚め、暴れかけたところを強大な力によって再び眠らされたのは、別の話。
ぶっちゃけ、焦った私が全力で殴った。
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