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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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31話 「お正月企画ver.2019」


12月31日。

結局あの箱は万事屋さんがいくら力を入れても、神楽ちゃんが押さえてその間に引っ張っても開くことはなかった。痺れを切らしたお妙さんが薙刀をどこからか引っ張り出してきて気合いを入れて振り下ろしても斬れるどころか傷一つつくことはなかった。それにお妙さんは笑顔のままこちらを振り向き「捨てちゃいましょこんな箱」と言って近くのゴミ捨て場にそれを捨てた。

あれから2日後。
クリスマス会は思いのほか夜遅くまで続いてしまい、神楽ちゃんと新八君がこたつに入ったまま寝てしまったのを合図に今日はこのまま泊っていくことになり翌日解散になった。

29日に大掃除を終わらせたおかげで、30日も何もなくのんびりと過ごすことが出来、そして大晦日を迎えた。

朝起きて、雨戸を開けて、今日はいつも着ている袴ではなく、今日の為に用意した白地の着物に袖を通した。
大晦日は29日に手が回らなかったおせち料理を作るのにあてることにしよう、なんて思いながら朝ごはんを作っていると、また台所の窓がコンコンと2回ノックされて何かが置かれる音がする。

今度は間髪開けずに勢いよく窓を開けたけれど、やはり人影はなく、下を見ると見慣れた箱が置かれていた。
ここまでくると気味が悪い、眉を顰め、どうしようかと悩んでいたけれど、「いつでも連絡してきてね」と言ってくれた言葉に甘えることにした。



「こんにちは」

数分時間を置いて、玄関の扉を開けたのは真選組監査方、山崎退さんだった。
土方さん繋がりで知り合った時に「いつでも困ったら連絡してね」と連絡先を貰ったきり、連絡することはなかったけれど今がその時だろうと連絡させてもらった。

「これが例の不審物か。電話で聞いた通りだと確かに怪しいよね」

山崎さんは直ぐに居間を通り抜け勝手口の方から外に出ると箱の前にしゃがみこんで辺りを見回した。

「ここは外から入ってくることは出来るの?」

「うちの裏は一段低くなっていて、よじ登ってくれば入ってくるには入って来れますよ。」

「あーこっちは結構高さがあるんだね。素人には登ってくるのは無理そうだけど」

お店側は通りに面しているけど、裏は高台になっていて、下のほうは石垣になっていた。
ただ、表面はつるつるとしていて足を引っ掛けるところはもちろん、よじ登れる場所なんてひとつもない。
隣から侵入したなんてことも考えたけれど、みんな裏口には庭を構えていて、うちも例外なく裏には薬草園を作っているため防犯のためというか、お互いのプライベートな空間は守ろうということから塀が建てられやはりこちらも素人がすんなりと通れるような造りにはなっていない。

うちの場合はお隣さんに許可を得て薬草を壁の付近にも這わせているため、誰かが侵入してきたら、どちらにせよ様子で分かるようにはなっているけれど、薬草が踏まれたような痕跡も、誰かが踏み入ったような様子もない。

だからこそ、自分にはどうしようも出来ないと悟り山崎さんに連絡したのだけれど。
山崎さんは暫く辺りを見回して「俺一人ではどうにも出来なそうだなァ、ちょっと応援呼んでくるよ」と携帯片手に玄関のほうへと向かってしまった。

ひとり庭に残された私は箱と残されることになり、何だか居心地の悪さを感じて、山崎さんが戻るまで家の中にいることにした。



山崎さんが連れてきてくれたのは原田さんという方だった。
スキンヘッドに強面な容姿だったけれど、笑顔で挨拶してくれた様子から優しい人だということが分かる。
山崎さんに連れられ勝手口から出た原田さんは「中身は見ましたか?」とこちらを振り向かれたため首を横に振った。

「実は29日にも同じ箱が置いてあって、知り合いに開けてもらうように頼んだ時には中が開かなくて。誰からかもわからなくて気味も悪いので捨ててもらったんです。そしたら今朝また窓をノックされて、開けたらそれが」

「確かにちょっと不気味だね。副長たちにも連絡したら今街の方で人を追っているみたいで手が離せないみたいだし、一度こっちで引き取らせてもらってもいいかな?」

「はい、すみませんお忙しい中」

「ううん、副長たちがお世話になっているしこのくらい何でもないよ」

山崎さんは箱を持ち上げ持ってきた風呂敷に包むと、丁度いいタイミングなのか携帯が鳴り「ごめんね」とすぐに受話器を取った。暫く話を聞いていた山崎さんが「あの子が!?」と驚いた声を出し、それに原田さんと一緒に肩を跳ねさせ驚いているとこちらにジェスチャーでごめんと伝えながらも何やら焦っている様子だった。

「一応形式的なものなのですが、こちらに必要事項を書いてもらえますか?」

山崎さんの電話の邪魔にならないように原田さんと勝手口から中に入ると、渡された書類にあの箱についてを詳しく記述する欄があった。原田さんに座ってもらうように声をかけると、勝手口が開き、転がるように入ってきた山崎さんが「ごめんね花子ちゃん!仕事入っちゃって、これ副長たちにしっかり渡すね!」と慌ただしく出ていかれた。通りすがりに原田さんに「後はよろしく」というのも忘れずに。

「大変ですね…」

「大晦日だと人が集まって問題が多いですね。花子さんも今日はあまり出掛けられないようにした方がいいですね」

「はい、そうします」

書類を手渡すと丁寧にお辞儀をして、後日また連絡する旨を伝えてくれた原田さんを見送ると、箱を持って行ってもらったこともあり、安堵した。

おせちの準備に取り掛かった時に、どこかで発砲音のようなものが聞こえたけれど、どこかでセールが始まったのだろうか。

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