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少女は小さな夢を見た

原作: その他 (原作:銀魂) 作者: 澪音(れいん)
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12話


「で?結局のところ本名はなんだよ。花子」

「居座る気ですか。それと名前を聞きながら、あなたもう花子と呼び続ける気満々じゃないですか」

店内の椅子に座り込み、居座る気しかないお2人にため息をもらした。
サラ子、花子、シン子。どんどん私を形容する名前が増えていく。
名前というよりあだ名。サラ子はサラサラ髪、シン子は死んでる目、癪には障るが自分でもまあ、何となくついた理由は納得できるけれど、土方さんの言う花子っぽい顔ってどんな顔だ。古風って事か。

「この時間ならどうせ客なんて来ねぇだろ、追い出そうとすんなや」

「万事屋さんがうちのお店事情を把握しすぎて気持ち悪いです」

「サラ子ちゃーん?あのね、いい加減さ。銀さんが傷つかない生き物だって間違い正そうよ。銀さんはナイーブな生き物だからね。人並以上に傷つくし、治るのも遅いよ?丁重に扱ってくんないと」

「私には重荷なので帰ってもらっていいですよ」

「お前ならできるって。やれるって。とりあえず喉乾いたから茶」

いや帰れや、と言いたいところだが。一応、お客さんなことには変わりない。
万事屋さんはどうでも、土方さんはきちんとお会計もしてくれるれっきとしたお客さんだ。
薬茶を淹れながらまた浅くため息をこぼした。

「つーか何、お宅今日休み?いいねぇ、平日に休み取れるとか。うちは年中無休でやってるってーの」
「お前のとこ年中休みだろうが。俺はたまたま休みが取れたんだよ。せっかくの休みだから用事全部済ませようと出て来たらとんでもねぇ奴に出会っちまって気分最悪だけどな」
「お互い様だろうがそりゃ。コレステロール下げる薬でも貰いに来たのか?マヨネーズやめたほうが手っ取り早いんじゃねぇのお宅の場合」
「うるせぇマヨネーズバカにすんな」

またケンカが始まった。
本当に仲が悪いらしいお2人の前にお茶を置くと同じタイミングで手に取ってまたお互いを睨みつけている。
仲がいいのだか悪いのだかわからないが、そっとしておこう。己の平穏のために。

「サラ子はどうよ。マヨネーズ大好きな男とか」
「マヨネーズですか。あまり付けはしませんが美味しいと思いますよ。」
「ほーれ見ろ。マヨネーズ好きなのは俺だけじゃねぇじゃねぇか。お前らのほうがおかしいんだよ」
「そりゃ普通の摂取量だと思ってるからだろうが。あの丼ぶり見たら引かれんぞ。マヨネーズ丼ぶり作るレベルの好きなやつよ?並の摂取量じゃねぇんだぞコイツ。下手したら飲むぞ」
「……コレステロールは女の敵です」

マヨネーズ丼ってそもそもなんだ。普通の摂取量じゃない摂取量ってなに。
万事屋さん曰く「温かいご飯の上にマヨネーズを大量にかけて食べるもの」らしい。
なんだその不健康な塊。土方さんは私生活に見直す点があるんじゃないだろうか。

「好き放題言ってんじゃねぇぞ万事屋。花子、コイツはな。温かいご飯に小豆かけて食べるやつなんだぞ」
「あずき…牡丹餅とか、おはぎ感覚でしょうか。まぁ、量はどうにせよ、合わないこともなさそうですが」
「ほーら見ろ、女は基本甘いものが好きなんだよ。」
「うるせぇ宇治銀時丼とか自分の名前なんてつけやがって」
「お宅さ、自分も土方スペシャルとかつけてんの忘れたの?ねぇ」

店先でケンカするのはやめてほしいのだけれど。
十中八九言っても聞かないどころか、さらに彼らにケンカする話題を提供しそうだからお茶を飲みながら黙って聞いていることにしよう。結局未来の人も助けに来てくれないし。明日買ったどら焼きが全部つぶあんからこしあんになーれっと。


言い争いを続ける2人の話を聞いているのも飽き始めた時。
先程から外をうろついている栗色の青年は誰だろうか。着ている服から見るに真選組の人なんだろうけど。
ぱちっと目が合い、暫くお互い表情ひとつ動かさないままお互いを見つめ続けると、向こうが手招きしているのがわかりお茶を置いてそちらに歩いていく。お客さんかもしれない。

路地裏のほうに先に入っていった彼に続いてそっちに行くと壁を背にして立っている栗色青年がこちらを見てにやりと笑った。

「お前どっちの女だ?正直に言わねぇとおまわりさんお前のことしょっぴいちゃうかもよ」
「職権乱用で訴えてもいいですか?」
「いいんだよそういう返しは。で?どっちでィ。万事屋の旦那か?それとも土方の野郎か?」

絶対面白がっている顔をしている。
見るからにして面白がっている、この状況を。
お2人の知り合いなのは確実だけれど、お2人を呼んできた方が良かっただろうか。

「どっちの女でもありませんけれど。そういう関係にないですし」
「じゃあどういう関係でィ」
「店員とお客さんの関係ですね。」

そんな不服そうな顔をされても、それ以上になった覚えはないけれど。

「嘘言ってもバレるぜィ?正直に言いなせィ」
「…じゃあ、ハイ。正直に言います。店内でお宅のお知り合いのお2人がケンカして困っているので、しょっぴくならあのお2人にしてください。なんかこう。店員さんを困らせた罰とかで」

いやだからそんな不服そうな顔されても。
もしどっちかの彼女だったとしてこの人はどうするつもりだったのだろうか、少し考えてみたけれど何かロクなことが起こらない気がして考えるのをやめた。初対面でまだ誰なのかも知らないけれど、何となくそんな感じがした。だから私はこの人を気を付けようと思いました。(作文)

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