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双子に婚約を迫られて…。

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 小笠原諸島弟島
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1話

「選ばないなら、呪い殺ころしますわよ?」
 ベールの奥の顔が、にこやかに笑っている気がする。

「選ばないと、殺ります」
 急に現れた熱のない背後の気配に、俺はビクリとする。

 呪い殺す、と言ったのは双子の姉メリッサ。職業、呪術師。特技、呪い殺すこと。
 殺る、と言ったのは双子の妹ダーナ。職業、暗殺者。特技、殺すこと。

 因みに、メリッサの顔もダーナの顔も俺はまだ見たことがない。
 メリッサはそのベールを外そうとしないし、ダーナはそもそも姿を現すことは滅多にない上に現れても俺の背後を取るからだ。

 二人が俺に選択を迫ったのは、結婚。
 この国は一夫一婦制がとられている。重婚や浮気は重罪で最悪死刑だ。
 昔の王様が奥さんたくさんもらったあげくに何かやらかして民が蜂起した事件があったらしく、それ以来、やっぱり奥さんは一人にしないといけないよね、ってなったらしい。にしても極端だけど。

 そして今俺に突きつけられた死しかない選択肢。

 俺の明日はどこにある?! 

ーー翌日ーー

「ちょっと邪魔なんですけど」

大学の階段に座ってこの世を憂いていると邪魔者扱いされた。

振り返ると金髪の女性が体に不相応な大きさの段ボールを抱えて…。
顔が見えない…。

「あぁ、すいません。どうぞ」

立ち上がって道を開ける。

「え?私女なんですけど」
「はぁ…」

こいつ何言ってんだ?

「小柄なんですけど。重いんですけど」

ーー数分後ーー

数分後には段ボールは先程より床から高い位置にあった。
つまり俺が運んでいる。

「ふぅー。軽いっていいわねー。ね、そう思わない?」

ダーナ呼ぼうかな…。腹立ってきた。

「あぁ、ごめんね。ありがと、ダーリン」
「いや、いいよ…。どうせすることもないし、家にも帰りたくないし」

うぅ、手が痺れてきた…。

「話聞いてあげる。それが対価でいい?」
「え?あ、ありがとう」
「じゃ、しっかり運びなさい」
「わわわっ!」

地面と強く衝突する。いってぇ…。
背中叩かないでよ…。

ーー数十分後ーー

「へぇ、何よこの色ボケ」
「え?いや!俺全く怒られる筋合いねぇだろ!」
「二人から迫られる時点で女をたぶらかしすぎなのよ!
あっ、コーヒーもう一杯御願いします」

今のウェイター注文じゃなくて声量を注意しに来たんでしょ!
ほら!呆れてるよ!

「で?どっちを選ぶわけ?」
「それがわかれば相談しねぇよ…」

姉のメリッサは素敵な女性というイメージが強い。体も華奢だと思う。
一方、妹のダーナは心を許せば甘えん坊な気もしてそれもそれでいいと思うんだよなー。

「はぁ、相談相手の私の事を考えなさい…。そうね。
最近流行りの影武者は?」

影武者…。同姓同名の自分が二人いるって事だ。
王様も代替わりして見て見ぬふり。
だが、それに関係した事件がどんなに小さくても、発生したら死刑。
貴族がときどきやっている。

でも…。

「独占欲が強いから…」
「あらら。じゃあ…。合体?」
「同一人物として見るってことか?
だから独占欲が…」
「ほんとに合体したら?」

え?

「ちょっと!卑猥な意味にも聞こえるからやめろ!」
「耳が穢れてるわね…。冗談よ…。うーん」

悩ましげに顎を手の甲で押し、ウェイターが持ってきたコーヒーを引ったくるように飲む。

「どっちも選ばない」
「それをするとどっちにも殺される」
「え?」
「物理的に殺されるんだ」
「マジ?」
「大マジだ。昨日から一日待ってもらってるだけだ」

はぁ。解決策は無いものか…。

「それ逃げられないの?」
「妹は俺より何百倍も強いし、姉の方は呪い殺すから意味ない」
「なにその理不尽。あんた…。そう言えば名前聞いて無かったわね」

確かに…。思えばよく会話がここまで続いたな…。

「下の名前だけでいいよ。俺はリュート。職は学生。特技は誤魔化すことかな?」
「私はレイラ。職は只の研究者。特技としては…。相手の言葉の真偽を図ることかな?」

俺の目が勝手に見開く。レイラは薄く笑みを浮かべた。

「ほら、名前も違うし職は学生じゃないでしょ?」
「なっ…。ま、まぁそうだけど…」
「特技を誤魔化す事って言うだけのことはあるわね。まぁいやなら聞かないわ」
「そうしてくれると…。助かる」

よかった。優しいやつで…。

「じゃ、考えといてあげる。ほら、会計よろしくね。
なんかあったら第2研究室に来て。相談のってあげる」

今金あったっけ?あいつ高いケーキばっかり頼んでた気がする…。


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