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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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必殺戦術完成

二階堂が気付いたのは、自室でとあるサッカー雑誌をペラペラと捲っていた時だった。
巻頭で特集が組まれている、最近のサッカー界のトレンド。その内容を何気なく目で追っていた彼の顔色が、変わった。
彼が着目した内容こそ、欧州発祥で、ここ1、2年でブームを巻き起こした集団戦法。その名を”必殺タクティクス”という。
特集ページでは、イギリスのクラブチーム・ナイツオブクイーンのタクティクス、『アブソリュートナイツ』が取り上げられていた。
余談だが、傘美野中サッカー部もこの雑誌を読んで必殺タクティクスを知ることになる。
”必殺タクティクス”という言葉が生まれたのは、2年前の2008年。尤も名前が無かっただけで、それに近しい戦術は以前から存在していたが。
例えば日本にも、古豪・戦国伊賀島の”蹴球戦術”がある。
しかしながら、必殺タクティクスとしてこの戦法が日本に渡来したのは、ごく最近のことだ。まだプロチームは勿論のこと、中学年代で使うチームも殆どいない。

フルタイムで使用するのは無理でも、時間を限ってみたらどうだろう。例えばこの、必殺タクティクスに落とし込んでみるのは――――――

二階堂、閃く。
試合時間の中で、空中サッカーを展開する時間を限定する。そしてその時間を、まだ日本で使用チームの少ない必殺タクティクスにしてみては…
閃いてから行動に移すまで、然程時間はかからなかった。
照れ臭かったから自分の夢の話は伏せたが、木戸川の戦力アップを図ると熱弁を振るう監督に、部員達も目を輝かせた。
空中でパスを回す。無論お互いのジャンプ力を考慮し、パスコースを確保し、ボールが繋がり易くする為に、選手同士で2手3手先まで読んで動かねばならない。
部員達は話し合い、お互いのプレーの癖やジャンプのタイミング、パスのスピードや長さを把握し合った。
少しでも気になるところがあれば、練習中、何度もプレーを中断して声を掛けた。連携をとる為に意見を交わすその様は、チームプレーに目覚めた木戸川の変化を象徴するものだった。
必殺タクティクスの開発。これもまた、木戸川の組織力を高める一因となった。
苦心して完成させた『フライングルートパス』は今大会でも猛威を振るった。格上のクラブチームに対しても得点の切っ掛けとなり、世宇子との練習試合でもアフロディを驚かせた。
そして今…雷門に対しても、木戸川の空中殺法が牙を剥く…!

「オラァ!!」

努が上空からヘディングシュートを見舞う…と思いきや、ボールはゴール正面に落ちる。
それを空中で拾った屋形が、足の甲にボールを乗せ、更に空高く蹴り上げる。
全くシュートやパスのタイミングが読めない。そして高低差を活かしたパス回しに、雷門はボールを奪えずにいた。
天高く蹴り上げられたボールの先には、友が構えている。
三兄弟の次男が放った『バックトルネード』は、ゴールではなく彼の真下に向かって放たれた。
またタイミングをずらしてきた。雷門イレブンの誰もが、ボールの行方に注視する。そんな中、一足先に着地した炎のストライカーが、爆炎を纏ってバイタルエリアに突っ込んで行く。

「豪炎寺だ!あいつから目を離すな!!」

ディフェンスリーダー・風丸が声を上げる。
空中でパスを回してくるからには、シュートは上空から放たれる筈。雷門の誰もがそう思っていた。
だが友の『バックトルネード』は、囮。シュートに持ち込んだのは、地上を駆け抜ける豪炎寺だった。
これまで圧倒的な存在感を誇っていた点取り屋だが、この時ばかりは敵の視線を浴びることなく突き進んだ。
漸く風丸がその存在に気付いた時には、彼はエリア内に侵入し、ボールの落下地点に走り込んでいた。

「これで1-0だ…!」

余計な動作を挟まず、左足に纏った炎を、落下してきたボールに対してドンピシャで合わせる。灼熱の焔の威力はそのままに、貫通力・スピードを高め、且つモーションを簡略化したシュート。
それはまるで、対明紋戦でシャドウが放った『暗黒スクリュー』を髣髴させた。
緊迫するゴール前、大混戦の中で悠長に構えをとっている暇は無い。敵が詰める前に、ゴールを覆い隠す前に。シュートの鬼・豪炎寺の『爆熱スクリュー』が、ダイレクトで放たれる…!

「今度こそ負けないッス!!『超ザ・ウォール』!!」

何度目だろうか、豪炎寺の眼前に、壁山が立ち塞がるのは。その巨体は豪炎寺のシュートコースを完全に塞ぎ、得点はさせまいという気迫に満ち溢れている。
風丸の指示に反応し、素早くバイタルエリアを埋めてきた。敵がゴール前に大挙する緊張状態の中、風丸との連携はバッチリだ。気弱ながらも、ここぞというところで勝負強さを発揮する。
これが、風丸と並んで雷門の守備の要となる男・壁山 塀五郎の真骨頂だ。そして、最大まで進化させた彼の持ち技、『ザ・ウォール』。
先程は豪炎寺のテクニカルなシュートに敗れたものの、単純な威力だけなら、彼のシュートとも競り合える筈だ。壁山の雄叫びと共に、岩の巨壁が、炎の弾丸とぶつかる。
しかし、上空からの『バックトルネード』で、威力・スピードを伴って降ってきたパスだ。そこにシュートチェインする形で重ねられた『爆熱スクリュー』の攻撃力は、壁山の予想をはるかに上回るものだった。
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