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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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雷門陣内の攻防

それでも木戸川イレブンはおろか、練習相手の世宇子イレブンの助力もあって、どうにか完成に持ち込めた。未だ友と努は完成出来ていないが、形にはなってきている。
合同練習から四回戦、そして昨日までの間にV2まで進化させた勝の努力。その鍛錬がこの試合で実を結ぶことを確信し、自信を持って右足の踵を叩き付ける。
今試合で初めて目にする、強力なシュート。豪炎寺のマークに付いた壁山は、シュートレンジの外。ブロック技による支援は望めそうにない。
『バックトルネード』の強化版ということもあり、属性は風だと予想される。シュートブロックを挟まないうちに、初見の技に対して属性面で不利な技を出すのは危険だ。
円堂は『マジン・ザ・ハンド』や『怒りの鉄槌』ではなく、『正義の鉄拳』を選択した。

「『正義の鉄拳、GX』!!!」

円堂が捻りながら右腕を突き出すと、黄金に輝く拳が紺碧の弾丸を迎え撃つ。『リバースストーム』の属性は風、という円堂の読みは当たり、青い炎の弾丸と正義の拳は互角の削り合いを演じた。これが山属性のキャッチ技や、低威力の『爆裂パンチ』では、すぐに競り負けていただろう。
ガガガッという鈍い音と共に、青い炎がかき消されていく。その身に亀裂を入れられ、あわや決壊というところまで押されつつも、風属性の必殺技同士の対決は、円堂側に軍配が上がる。

「よーし、反撃だ!!」

円堂が数歩前に踏み込み、『正義の鉄拳』ごとボールを弾き飛ばす。このボールをうまく繋げれば、再度雷門にも攻撃のチャンスが訪れただろう。だが、それを拾ったのは、黄色いユニフォームの誰でもなく。
味方であればとても頼もしく、敵に回すと恐ろしいこのストライカーだった。
豪炎寺が、ボールの落下地点に構えている。雷門イレブンの誰よりも早く、ボールが弾かれるであろうポイントを読み、走り込む。チームメイト時代、円堂と豪炎寺のこういったコンビプレー、阿吽の呼吸は見事なものだった。
皮肉にもこの試合で、それが仇となるとは。フットボールフロンティア地区大会から、チームを支え続けた守護神とエースストライカー。その二人が、再び相対する。
雷門ゴール前にぽっかりと空いたバイタルエリア。敵の得点を防ぐ上で、最も危険視しなければいけないゾーンに、雷門のセンターバックは誰もいない。東は距離が開き過ぎているし、壁山は巨体でシュートレンジを塞いでいるものの、円堂との間に絶好の隙を作っていた。

「円堂、先制点は俺が貰うぞ…!」

元チームメイトとて、容赦はしない。付け入る隙があるのなら、そこを攻めない手はない。
左手を振りかぶり、灼熱の炎をその身に纏う。この構えは、先程壁山と東に阻まれたチェイン性能を備えたシュート技。
振り被った左腕を荒々しく払えば、空気との摩擦によって更に炎が熱く燃え上がる。前回は失敗したものの、今度こそ雷門のゴールを射抜く。そんな豪炎寺の決意を体現するかのように、劫火に包まれたボールが蹴り出された。

「『爆熱スクリュー改』ッッ!!」

空気を焼き、砂塵を焦がし。海岸から吹き付ける秋風を、常夏を思わせる熱風に変える。
火の粉を散らし、炎を飛ばしながら、灼熱の弾丸がゴールに襲い掛かった。
しかし、円堂とその劫火のシュートの前に、壁山が立ち塞がる。易々とシュートを撃たせ、尚且つ点を奪われてしまっては、自分が此処にいる意味がない。今試合、”豪炎寺キラー”としての役割を担う壁山が、果敢にシュートブロックを試みる。
彼が放った『ザ・ウォール』は、雷門の砦とボールの間に大きな隔たりを作り出し、豪炎寺の猛攻を防ぐ希望となる。


「上手くなったな、壁山は。」

壁山と同じくDFの生業とする土門が、後輩のプレイングに目を細めた。

「ああ。ポジショニングが絶妙だ。壁山は巨体故、足は遅い。だがそれを補って、良い位置取りでゴールを守っている。」

鬼道も同調する。豪炎寺が狙った円堂と壁山の間に出来たスペースは、壁山が作った罠だった。彼はわざとサイドに流れてスペースを作り、豪炎寺がそこにシュートを撃つように仕向けたのだ。
予めシュートコースを限定し、何処にシュートを撃たれるか分かっていれば。守る側としては、幾らか対処し易い。
巨体を生かした激しいディフェンスや、強固なブロック技だけではない。ポジショニングや戦術眼も磨いている。自分達がチームを離れている間に、壁山も確かに成長しているのだ。

だが、豪炎寺もシュートの直前、壁山の狙いに気付いた。既にキックモーションに入っていた彼は、咄嗟に爪先でボールに回転を掛けた。不規則な軌道を描いた『爆熱スクリュー』は、『ザ・ウォール』に触れると、その岩壁を撫でるかのように這い回る。
ごつごつとした岩肌に勢いを削がれ、炎の鎧を砕かれながらも、ボールは岩壁を飛び越える。雷門のエースディフェンダー対木戸川のエースストライカーの対決は、戦術眼では壁山に分があったものの、テクニックの差で豪炎寺に軍配が上がった。
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