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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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木戸川の奇策

山属性の長身センターバックコンビ。火属性の豪炎寺対策という訳である。
しっかりマークされた豪炎寺は、身動きが取れない。敵将の動きを捉えたのを確認し、風丸が持ち前の俊足を活かして左サイドを駆け上がる。必要と有ればボランチの二人と協力し、屋形からボールを奪う。もし二人でボールを奪えたら、パスを貰って攻撃に参加する為に。
「監督の言う通り、豪炎寺を抑えてきやがったか。だったら…!」
左サイドに開いていた勝が右手を挙げる。その意味を悟ったオフェンス陣が、陣形をじわじわと変えていく。サイドハーフの友と努がトップの位置に。
屋形はボールをキープしたまま、少し上がる。相方の茂木は一人でボランチを務める。
「このフォーメーションは…」
雷門ベンチで、木野が息を飲んだ。
木戸川の今の布陣は、秋葉名戸の5トップ程の無謀さはないものの、バランスを重んじる強豪校にしてはあまりに大胆過ぎるものだった。
それは過去四試合で、木戸川が一度も見せたことのない攻撃的なフォーメーション。
「まさか4人のFWを、同時にトップに据えるとはのう。」
流石にこの展開は予想できなかったと見え、古株が感嘆の溜息を吐いた。そう、今の木戸川は、豪炎寺の1トップでも、先程までの2トップでも、武方三兄弟の3トップでもない。
友、勝、豪炎寺、努の並びで、全員がFWを務める4トップ。4バックはそのままで、ボランチとトップ下が一人ずつ。4-1-1-4といったところか。
「雷門が豪炎寺をマークしてくるのは、何となく予想できたからな。」
二階堂が自慢げに独りごちた。五回戦に向けて練習した、木戸川の新たな布陣。豪炎寺と武方三兄弟を同時にトップに起用し、4人の力をフルに活かすためのシステム。
攻撃陣を活かすだけでなく、雷門の守備陣対策にもなっている。鍵を握るのは、トップ下の屋形 直人。その名前に肖り、フォーメーション名を『F-ヤカタノオロチ』という。

木戸川清修中(F-ヤカタノオロチ)
FW  友(9)  勝(10)   ★豪炎寺(17)   努(11)



MF           屋形(7)        

              茂木(8)
DF 黒部(5)               西垣(2)
       光宗(4)      女川(3)
GK           軟山(1)

「今の木戸川の布陣はこんな感じじゃな。」
ホワイトボードの上でマグネットを素早く動かし、古株がベンチ陣に説明する。
「4-1-1-4って、ちょっと危なくないですか?」
半田が疑問を口にした。彼の指摘したいのは、ホワイトボードの両脇、ピッチ上で言うと、屋形と茂木の両サイドに出来たスペースである。
「確かに…中盤を二人で守るって無謀かも。サイドをケアできる選手がいなくなっちゃう。」
大谷も同調する。サッカー歴の浅い彼女だが、マネージャー業をこなすうちに、自然と見る目が養われたようだ。
「いや、雷門だからこそ、このシステムはハマると思うよ。」
一之瀬が冷静に異を唱える。その理由を問おうと五郎が口を開きかけた時、ピッチの方から歓声が上がった。
風丸が努を放置して、更に上がっている。中盤に出来た広大なスペースを、俊足のこの男が狙わない筈がない。栗松も右サイドをやや上がり気味に構え、勝と友へのパスコースを塞ぐ。
此処で屋形からボールを奪えば、前線の豪炎寺ら4人は怖くない。ボランチも茂木1人しかいない。風丸が上がれば、雷門オフェンス陣は4人に風丸自身と、中盤で数的優位に立てる。
得点を狙うには絶好の機会。
だが、風丸が上がったスペースを、屋形は見逃さなかった。
「うーん…そこしかないよなあ…」
間延びした口調とは裏腹に、鋭く速いパスが雷門左サイドに放たれる。それをフリーで受けた努が、敵陣深く切り込み、蒼い炎を纏って飛び上がった。
「先制点を挙げるのは、俺だああああ!!」
豪炎寺の『ファイアトルネード』に似ているが、回転が逆で、炎も青い。空中に留まった努の踵が、ボールを真っ直ぐ捉えた。
「『爆・バックトルネード』!!!」
切れ味鋭い青い弾丸が、雷門ゴールに迫る。今試合ファーストシュートは木戸川。キックオフから6分、早速雷門は窮地を迎えた。
だが、熱血キャプテン円堂は、臆することなく右手を突き出すと、マシンガンの様な連続パンチをシュートに浴びせた。
「『超・爆裂パンチ』!!」
『熱血パンチ』を超えるパンチングの雨霰。数十発のパンチを見舞った後、トドメとばかりに右ストレートをかます。
弾かれたボールは東が前線へクリアし、まずは最初の危機を脱した。

「雷門対策としては、この布陣は理に適っているな。」
スタンドに佇む鬼道が肘を掛けた鉄柵をトントンと叩いた。
「4トップが攻め込めば、豪炎寺に付いたマークを緩めざるを得ない。屋形からのパスの選択肢も広がる。中盤にスペースが出来るのが難点だが、風丸のオーバーラップを封じることでその問題も解決している。」
「なるほど…さっきの11番へのパスは、風丸を上がらせない為の威嚇射撃ってとこか。」
「ああ。明紋戦でも、風丸が上がった穴を狙われる場面があった。それを思い出させ、迂闊に上がらせないのが狙いだ。屋形がそういった隙を見逃さないことは、雷門も把握済みだろうからな。仮に風丸がボールを持って上がっても、右サイドの西垣が止める。これまでセンターバックを務めることが多かった西垣がサイドにいるのは、そういうことだろうな。」
「風丸が封じられるってことは、逆サイの栗松も牽制出来るな。」
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