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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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序盤のせめぎ合い

「フットボールフェスティバル・ファーストステージも折り返し地点を過ぎました!セカンドステージ進出まで残り3勝!強豪を倒して勝ち残ってきた雷門としては、此処で勝って更に勢いをつけたいところですが…」
角馬はそこで言葉を切ると、マイクを握る手に力を込めた。
「此処で立ち塞がるは、四天王の一角!”東の王者”木戸川清修中!!そしてエースを務めるのは、これまで雷門を引っ張ってきた豪炎寺 修也!強力なチームと天才ストライカーを前に、雷門はどう立ち向かうのでしょうか!?」
甲高い声の実況を聞きながら、センターサークルにボールをセットした豪炎寺が、雷門イレブンを…そしてその最奥部にいる円堂を見据え、小さく息を吐いた。
「行くぞ、円堂。みんな…」
キックオフの午前10時まで、あと30秒を切っている。
奇しくもこの五回戦、木戸川以外の”四天王”三校も、同時刻に試合開始を迎えようとしていた。
ベンチでは腕組みをした二階堂が、緊張した面持ちで左手首に巻いた腕時計に視線を落としている。
「(そろそろか…舷也、頑張れよ。)」
二階堂監督の四男・舷也もまた、四天王の一校に在籍しているのだ。シードとして加入した息子の活躍は聞いている。
今年のフットボールフロンティアで決定力不足が明らかとなり、四天王最弱の汚名を着せられた”西の王者”雌斗路学院。
その問題解決のために招聘された舷也は、周囲の期待通りの活躍をしているらしい。今大会でも一回戦からスタメンを努め、毎試合得点を決めている。今の雌斗路学院は、最弱の汚名を返上したばかりか、四天王の中で最強とすら言われるようになった。
”プロサッカー選手の息子””二階堂ジュニア”など、2世選手と呼ばれるのを嫌い、父である修吾や3人の兄と距離を置き、シードとして雌斗路学院に身を置いた舷也。
疎遠になったとはいえ、息子の近況が気になるものである。中でも、雌斗路学院躍進の立役者が息子というのは、誇らしいことであった。
今大会を勝ち抜き、息子のいるチームと戦うために。二階堂の組まれた腕にも力が入る。
そして、午前10時ジャスト。時計を確認した主審が、力強くキックオフの笛を吹いた。

・雷門中VS木戸川清修中

雷門中(F-ベーシック)
FW        染岡(11)   シャドウ(17)

MF マックス(9)                  一斗(21)
          少林(7)   宍戸(8)
DF 風丸(2)               栗松(5)
        壁山(3)     東(19)
GK           ★円堂(1)
ベンチ 五郎(18) 影野(4) 半田(6) 飛鷹(20) 一之瀬(16)

木戸川清修中(F-ベーシック)
FW        勝(10)   ★豪炎寺(17)

 
MF 友(9)                     努(11)
          屋形(7)   茂木(8)
DF 黒部(5)              西垣(2)
       光宗(4)    女川(3)
GK           軟山(1)
ベンチ 段堂(12) 深沢(13) 跳山(6) 守野(14) 石井(16)

開戦の合図を聞き、いち早く反応したのは勝だった。
「っしゃあ、行くぞ豪炎寺!みたいなァ!?」
「おう…!」
早速木戸川の2大エースが、雷門陣内へ切り込んでいく。
染岡やシャドウへは目もくれず。ひたすら敵のゴールを目指す。
「行かせませんよ、豪炎寺さん!」
敢然とドリブルで斬り込む豪炎寺の前に、1年生プレイヤー、少林寺が立ち塞がる。此処で豪炎寺は足を止めると、少林の背後に構える壁山の姿を認めた。
無理には攻め込まない。競り合いを避け、あっさり背後の司令塔・屋形にボールを預けた。消極的ともとれる豪炎寺のプレーに、虚を突かれる雷門イレブン。雷門に在籍していた頃の彼なら、ドリブル技で強引に突破していてもおかしくない場面である。事実、彼が少林寺を抜いたところを狙うべく、壁山は機を窺っていたのだ。
「豪炎寺の奴、判断力により磨きをかけたようだな。」
スタンドでピッチを見下ろし、ドレッドヘアーにゴーグルの少年…鬼道 有人が小さく呟いた。
相方の牛蒡少年、土門 飛鳥もそれに同調する。
「ああ。壁山が狙っているのが分かってたから、無理に勝負しなかった。周りがよく見えてるぜ。」
「キックオフ直後にいきなりボールをロストするよりは、頼れる司令塔にボールを預けた方が無難だからな。」
「見応えのある試合になりそうだぜ。…座って見れればもっと良かったんだけどな。」
土門の皮肉たっぷりの一言に、鬼道が珍しく肩を縮こまらせた。この二人はスタンドで立ち見する羽目になったのは、意外にも鬼道に原因があった。
明日、この近くの会場で試合をする予定の帝国学園は、地元のホテルに泊まっていた。今日は雷門VS木戸川というビッグカードを見るために、安西監督の許可を貰って外出するはずだったのだが。当日、鬼道がまさかの寝坊。必死に彼を叩き起こした土門が、引っ張る様に会場へと急いだが、彼の健闘も虚しく観客席は既に満席となってしまっていたのである。
寝坊の原因は、円堂と豪炎寺の対決に興奮し、前日中々寝付けなかったという、何とも微笑ましいものだった。土門も同じ気持ちだったから、強く責めることはしなかったが。
土門にとっても、一之瀬VS西垣という、旧友同士の対戦である。鬼道の気持ちは非常によく分かる。
二人は元チームメイト同士の対戦を感慨深く思いながら、試合を見守っていた。
ピッチの上では、屋形にボールを預けた豪炎寺が、単身雷門ゴールへ上がって行く。
ゴール前に陣取り、屋形からのパスを待つ彼の両脇から、壁山と東が挟み込む。
「豪炎寺さん!シュートはさせないッスよ!」
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