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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
目次

会場を訪れる、次世代の猛者達

「兎に角!この顔触れで戦えるのは、今大会が最初で最後だ。一戦一戦、そのことを噛み締めながら戦って来い!」
雷門中へ転校した豪炎寺はフットボールフェスティバル期間中だけ、レンタル移籍という形で木戸川に合流している。木戸川清修が敗退し、フットボールフェスティバルから脱落した時点で、また雷門へ戻ってしまう。現在のエース・武方三兄弟と過去のエース・豪炎寺。この二組の共演を見られるのは、今大会限りなのである。
だからこそ、少しでも長くその夢の共演を続けるために。木戸川清修は勝ち続けなければならない。そしてそれ以上に、この豪華な顔触れで試合が出来ることに感謝しなければならない。選手達が二階堂の『お約束』を心待ちにしていたのも、監督の言葉を聞くことで、その事実を再認識したかったからである。
「さあみんな、楽しもうぜ。木戸川のサッカーをよ。」
サングラスを光らせた勝、キッと鋭い眼差しの豪炎寺を先頭に、木戸川イレブンがフィールドに足を踏み入れた―――

* * *

雷門中と木戸川清修中の試合が、もうすぐ始まる。会場は規模の小さな市営グラウンドだが、沢山のサッカーファンが観客席を埋めている。
「にーちゃん、パパ、ママ、早く早く!」
藍色の髪をオールバック風に頭頂部に向かって流し、もみあげをカールさせた少年が、満面の笑顔で手招きをしている。
年齢は3歳か、4歳くらいだろうか。薄手の赤いトレーナーに、丈の合っていないハーフパンツ。靴は砂にまみれて色が霞んだ、仮面ライダーのシューズ。
もう早く試合を見るのが待ちきれないといった風で、後ろからゆっくり歩いてくる兄や、その更に後ろから連れ立って歩いてくる両親を呼んだ。
「落ち着けよ京介。キックオフまで、まだ時間はあるよ。」
前を行く弟…京介に追い付いた兄が、窘めるように弟の頭を撫でた。
年齢は京介より5、6歳上に見える。小学校中学年くらいの背丈だ。顔は京介に比べてやや大人びていて、もみあげもカールしていない。口許の左下にほくろがある。
「分かってるけど待ちきれないよ。よく見える席を取らなきゃ。」
「…そうだな、豪炎寺さんの試合だもんな。」
弟の気持ちを汲んだように、兄…優一が、グラウンドを見回して息を吐いた。
彼らのお目当ての豪炎寺は、木戸川ベンチで他の選手と共に監督の指示を受けている。
「すげえ、本物の豪炎寺さんだ!」
兄の目線の先に尊敬する選手を認めた京介が、より楽しげに飛び跳ねて見せた。
漸く、後ろを歩いていた両親が、幼い兄弟に追い付いた。仲の良い4人家族は笑いながら、観客席へと歩を進めていく。やがて彼らは電光掲示板の向かい側、ピッチ両方が万遍なく見渡せる絶好の席を見つけ、其処に腰を下ろした。
エイリア学園とイナズマキャラバンの死闘。その戦いをテレビ中継で何度も見ていたこの兄弟は、沖縄でのイプシロン改との試合である選手に心を奪われた。
圧倒的な実力で敵のGK・デザームの必殺技を打ち砕く背番号10番。その貫禄・勇姿は、正にチームを引っ張り勝利へと導くエースストライカーそのものである。
彼ら兄弟は、すぐにその選手のファンになり、イプシロン戦以降もイナズマキャラバンの試合を追い続けた。今大会も一回戦から木戸川の試合をテレビや動画で観戦していたが、この五回戦でとうとう実際に試合を観戦する機会を得た、という訳だ。初めて見る、実物の豪炎寺 修也。もう二人は、試合が待ち遠しくてたまらない。京介はたまらず足踏みしている。先程まで弟を窘めていた筈の優一も、楽しそうに目を輝かせている。
この兄弟、苗字を剣城という。10年後、雷門中学のエースストライカーとなり、尊敬する選手と同じくチームを引っ張ることとなる弟・剣城 京介(つるぎ きょうすけ)。不幸な事故により下半身不随となるも、弟の活躍を見守る兄・剣城 優一(つるぎ ゆういち)。
運命の悪戯か、はたまた偶然の産物か。ピッチの中では過去の木戸川のエース・豪炎寺と現在の木戸川のエース・武方三兄弟が。そしてピッチの外では現在の雷門のエース・豪炎寺と未来の雷門のエース・剣城 京介が。この会場に過去・現在・未来を繋ぐエースストライカーが揃ったのである…

「お、もうすぐ試合が始まるな!」
剣城一家に続いて会場入りしたのは、これまた京介と同じくらいの年頃の三人組。
紫色のセミロングヘアの毛先を外で跳ねさせ、太めの眉が特徴的な少年。彼の左右にはそれぞれ、銀色の髪で端正な顔立ちの少年と、浅黒い肌に鋭い目つきの少年が控えている。
三人とも私服はバラバラだが、お揃いのショルダーバッグを肩から下げている。バッグには清水インテルスのロゴが入っており、それぞれの名前も刺繍されていた。
セミロングヘアの少年が貴志部 大河(きしべ たいが)、銀髪が和泉 奏秋(いずみ かなあき)、褐色肌が跳沢 真波(とびさわ まな)。三人ともプロサッカーチーム・清水インテルスのファンで、同クラブのサッカースクールの練習生である。
「相変わらず、いやーなチームだな。」
跳沢がギョロッとした大きな目を不機嫌そうに細めながら、木戸川イレブンを見渡した。
清水インテルスのスクール生である彼らにとって、木戸川清修は今大会初戦でインテルスのジュニアユースを破った憎き相手である。
その仇敵が五回戦で初めて地元で試合をすること、練習が丁度休みだったことで、3人はそれぞれの保護者同伴の元、観戦に訪れたのだ。
「よし、木戸川が負けるところを見られるよう、いい席取ろうぜ。」
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