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イナズマイレブンX -Another episode-

原作: その他 (原作:イナズマイレブン) 作者: ゆりっぺ
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木戸川のキーマン

「はい、答えはブーじゃ!」
「何でですか!?」
「豪炎寺を意識しすぎじゃ。」
「じゃあ西垣さん。」
「ブーじゃ!」
「そんな…」

これ以上問答をしていても埒が明かないと判断したのか、古株はニコニコしながら正解を告げた。

「正解は7番の屋形じゃ。」
「えっ、あんなモブ顔が!?」

今度は宍戸が頓狂な声を上げる番だった。半田も「俺より半端だ」と同調する。

「これこれ、あまり調子に乗るでない。そもそも、宍戸も半田も充分モブ顔だぞい。」

古株のモブ顔認定に落ち込む2人。そんな彼らに構わず、古株は言葉を続けた。

「木戸川はFW陣の組み合わせも自在だし、時には4人同時にピッチに立つことさえある。一度試合が始まれば、パスの選択肢は少なくないだろう。そんな中、敵のプレッシャーを受け易い中盤で、屋形は瞬時にパスの受け手を選択している。そしてその選択をミスすることが殆どない。」
「屋形さんのFWへのパス成功率は92%。出せば殆どカットされることがありません。強力なFW陣を止めるためには、まず彼からのボールの供給を断つ必要があります。」
「そこでじゃ、屋形がボールを持ったらダブルチームで当たって欲しい。寄せきれなかったらパスコースを塞ぐだけでも構わない。屋形に考える隙を与えるな!」
「「はい!!」」

古株の意図を理解した少林達が、力強く頷く。勿論この仕事の他に、宍戸には雷門の速攻・遅攻をコントロールする役目がある。

「両サイドバックは、サイドでの攻防に強そうな者を選ばせて貰った。」

左サイドバックの風丸のオーバーラップは最早雷門の代名詞だが、右サイドで栗松が起用された理由は、その負けん気とガッツあるディフェンス力である。
二回戦の対ガイア戦、体格や身長、実力で大きく劣るウルビダ相手に果敢に挑み、敵の必殺タクティクスを無効化した実績。それは今回も必ず活きると古株は考えたのだろう。
この2人のオーバーラップによってサイドアタックに厚みを持たせ、両サイドから木戸川陣営を切り崩す、というのが古株のアイディアだった。
しかし、そうなると中央の守りが薄くなる。必ず雷門戦で出てくるであろう天才ストライカーを、誰が止めるのか。
皆一様に同じ疑問を持っていたが、貼り出されたメンバー表のセンターバックのポジションを見て誰もが目を瞠った。
左のセンターバックには、怪我から復帰した壁山の名前が。そして、右センターバックは…

「お、俺ですか?」

東が眠そうな目を見開き、声を上擦らせた。雷門のディフェンスの要・壁山とコンビを組むのは、今大会加入したばかりの東だった。

「何を驚いておる。そもそも東は、二回戦でもスタメンで出場しとるだろう。」
「そうですけど…」

そのことは東も覚えている。二回戦のガイア戦、東は初期メンバーの部員達に混じって、五郎と共にスタメンで出場した。
結果は散々なもので、エイリア学園の戦士達のスピードとパワーには全く歯が立たず、何度も敵の突破を許し、4失点を喫した。
それだけなら兎も角、一緒にコンビを組んでいた壁山がウルビダの必殺シュートをまともに受けて負傷し、今試合まで欠場を余儀なくされた。
本来なら東もシュートブロックに入れる距離だった。だが、明らかに次元が違う必殺技を目の当たりにし、足が竦んでしまった。一方壁山は、そんな強大なシュートを前にしても臆することなく、ゴールを守るため、そして円堂の負担を軽くするためにブロック技を発動した。結果、彼は必殺技を足にもろに受け、負傷退場に追い込まれた。
東はそのことを引き摺ったまま奮戦するも、特にチームの反撃に貢献できず、後半途中で飛鷹と交代することとなったのだった。
二回戦での大失態に負い目を感じていた東は、それでも折角始めたサッカーを辞める気にもなれず、かといって重大な局面を任されることも望まず、もやもやした気持ちのまま今日を迎えたのである。三回戦、四回戦ではスタメンで無かったことに安堵していたのだが、まさかまたスタメン、しかも二回戦の時と同じ組み合わせとは。
必然、彼の顔色は悪くなる。だがそんなことにはお構いなしに、古株は壁山と東の顔とを交互に見比べた。

「まあ、東は入ったばかりで緊張しとるだろうが…この組み合わせにはちゃんと意味があるんじゃ。」
「はあ…」
「此処まで4試合全てに出場しとる豪炎寺が、雷門戦でも出てくる可能性は極めて高い。尚且つ雷門のメンバーを知り尽くしたあいつのことじゃ、積極的にゴールを奪いに来るのは想像に難くない。そこで少しでも此方が優位に立つ為に、豪炎寺より体格が良く、属性面で有利な2人を選んだという訳だ。」

壁山と東は山属性。火属性の豪炎寺に対して相性は良い。そして、豪炎寺より身長が高く、彼を跳ばせなければ充分抑え込める。
がっちりマークして、シュートコースを塞いで、シュートを撃たれても2人でブロック技を発動すれば…然しもの豪炎寺といえど、かなりシュートの成功率は落ちるだろう。
そしてこの作戦を実行するには、身長はあっても、属性の相性面で陰属性の影野は豪炎寺に不利。これが自分が起用されなかった理由か…と影野は納得した。

「東さん、よろしく頼むッス!」
「あ、ああ!任しとけ!」

とは言ったものの、東の声は心なしか震えている。彼が緊張した様子で唾を飲み込む音が、壁山にははっきりと聞こえていた。
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