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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
目次

にじゅうにこめ


「アリーさん、あっちでLが「お菓子がない」って不機嫌になっているよ」

「まだワタリが休暇に入って10分ですが」

次の日、やってきたワタリに昨日全員で決めた旨を伝えると丁度遠くで仕事が入っていて助かると言いながら、仕事に向かって行った。いや休暇。ワタリは休暇すらも仕事に当てるらしい、社会人の鑑というべきか社畜を極めた者と呼ぶべきか。会社ではないから社畜ではないのかもしれないが。その辺どうなのだろうか。

「確か買い置きしておいたものがキッチンにあったはずです。取りに行くので角砂糖でも食べさせておいてください」

「オッケー」

ストックとして置かれている自身の角砂糖をマットに2,3瓶一気に手渡すが糖分不足でイラついているLはきっとそれをスナック菓子でも頬張るように口の中に投げ込んでいくだろう。それを考えるとお菓子を早急に用意しなければまたイラついたLに仕事に支障が出たりしたらそのしわ寄せがワタリに行くことになる。

そしたら今回彼に休暇をと提案した意味がなくなってしまう。

キッチンの上の棚を見ると、流石と言うべきかL好みの甘いお菓子が種類別に並べられているのを見て大皿にそれを並べてLの下へ持って行くと今まさに角砂糖の瓶を口につけジャリジャリと口を動かしているLがいた。

彼は絶対将来的に糖尿病になるだろうが、そうして角砂糖を食べることによって世界の難事件が円滑に解決しているのだからそれを止める人間もいない

ワタリ同様音を立てずに彼の後ろに立ち、彼の意識がパソコンに向いたのを見計らって素早く角砂糖の瓶と皿を入れ替える。角砂糖の瓶は下げずに一応皿の近くに置いておこう。Lのテーブル周りを整えて振り向くと静かに見守っていたらしいマットが親指を立てた。

「(ナイス、アリーさん)」

「(お安い御用です)」

これではワタリの役目をSとマットが肩代わりした形になってしまうが、Lが糖分不足でイラついて作業量を減らしてしまうよりも、2人が時間を割いて彼のバックアップを取っていたほうが効率的だと判断したからだった。

実際、Lひとりで処理する仕事量は普通の何十倍とあるだろう。

そのアシスタントとして動いている月、ニア、メロを動かすよりは絶対的に効率的である。

Sとマットがそれぞれの仕事に戻り暫く室内はタイピング音と時折どこかと通信を取るLの声だけが聞こえる室内で、ぼそっと聞こえたのが「チョコレートがない」というつぶやきだった。

それにいち早く反応したのはマット。
彼は自身の仕事を切り上げ手早く後ろのストック置き場から板チョコの入った箱を手に取ると隣に座っているメロの隣に置いて再び仕事に戻った。

それを少し離れた場所から見ていたSは、フッと普段の捜査本部を思い浮かべた。

ワタリはいつも誰かが何か不足したと口に出す前に補充をしていた。
自分たちを裏からサポートしている彼は仕事量からすればLの次に多いかもしれないというのに。
パソコンの前から動かないLから見れば、外回りだってこなしているワタリの仕事量はそれを上回っているが。
それなのに一度も愚痴だってもらしたことのない彼は流石と言うべきなのだろう。
だからこそ彼は多くに慕われている。

「アリーさん」

仕事がひと段落し、珈琲でも淹れようかと立ち上がったSに近寄ってきたのはニアだった。
Lとメロのお菓子は十分に置いてあるし、ニアは先程まで二色の角砂糖を積み上げては崩して遊びながら捜査を捗らせていたはずである。

「どうかしましたか?ニア」

「いえこれといって用事はありませんが」

彼の手元には角砂糖が入った瓶がひとつ握られており、ちらりとその瓶のストック置き場をみると角砂糖がいつの間にかなくなっているのが見えた。そう言えばL達の方に気が向きすぎていてそっちのストックが疎かだった。

「すみません、ニア。すぐにストックを」

「いえ、これはアリーさんに持ってきました」

「わたしに、ですか?」

「お2人のストックばかりを気にしていて角砂糖がなくてイラついていた様子でしたので」

先程までの流れをみられていたのだろうか。
いつもならば角砂糖がなくなる前には瓶を取りに行っていたのを今回は気が散漫していて遅れてしまった。
角砂糖の瓶に手を伸ばすと、瓶の中を手探りで探したけれど角砂糖に行き当たらず目線をそちらに向けるとすっかり空になった瓶の中に少しムッとしてしまったため珈琲を淹れるついでにストックを持ってこようとしていた。

「ありがとうございます、ニア。お礼と言っては何ですが、好きな飲み物を淹れますよ」

「では紅茶をお願いします」

すたすたと歩いて行ってしまうニアは、再び角砂糖を積み上げる作業に入っていた。
周りのことなど何も見ていないようであの3人の中では一番人の動きに敏感なのかもしれない。

帰ってきたら自分を入れた5人の面倒を文句ひとつ言わずに見てくれるワタリをもっと労わろう。
そう思いつつ彼らに持って行く紅茶を淹れに部屋を出た。



おまけ

月「ただいま、何だか静かだな。L達は文句言わなかったのか?」

S「おかえりなさい夜神君。まぁ何とか、ワタリのようにはいきませんでしたが。松田さんお久しぶりです」

松田「うん、久しぶりアリーちゃん。今日はワタリさんに用があったんだけど、外出中なのかい?」

S「ええ、今日はワタリは休暇です。私でよければ話を聞きますよ」

松田「そうかい?なら、そうさせてもらおうかな。それにしてもワタリが休暇って珍しいね」

S「ええ、まぁ。休暇と言っても海外の仕事相手に会いに行っているだけですが。」

松田「あはは…ここの人達は休暇って言葉を知っているのか時々心配になるよ」

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