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桃色パンプキン

原作: その他 (原作:デスノート) 作者: 澪音(れいん)
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ななつめは幸せを運ぶパンプキン


※時間軸はキラが捕まった後という設定です。
原作キャラ生存が御座います。ご注意ください。


その日も何も変わらなかった。

ワタリの淹れた紅茶にたくさんの角砂糖を流しいれると後ろから月君の注意の声が聞こえて、Lがそんな月君に如何に糖分が大事な要素であるかを説く。
私に振られた話だというのに、いつの間にか後ろで起きる論争にマットが2人に呆れた声を上げる。

キラ事件は「キラ死亡」という形で世間には報道されたが、実際キラ容疑者であった月が捕まったことで事件は終息したことはここには居ない警視庁キラ事件日本支部の面々と今ここに居る者達しか知らない真実である。

夜神月はLの指揮のもと、彼の事件に協力をするという形での終身刑が決定したからである。
それはL自身が下した刑であり、月自身が受け入れたあの事件の結末であった。

デスノートは破棄された。
今後またこの世界に現れることはないだろう。


しかし、平穏が訪れたとはいえキラ亡き後の世界はそれは悲惨なものだ。今までキラの脅威から大人しくしていた者たちがまた事件に手を染め被害者は増える一方。
ここ元キラ日本支部は新たな面々を加えた新体制で再び捜査本部として活動することを余儀なくされていた。

かくいうそれは私も含まれたものでいて、パソコンの画面に現れた「Case resolution:事件解決」の文字に息をつき伸びをする。

ニュース画面には「キラが現れる前と今」と比較をしている番組で多くのキラ信者の嘆き声が聞こえている。
それに呆れた声を上げたのはLだった。
「キラ様が居てくれたら」だなんてよく言えたものだ。
罪なきものを巻き込んだあんな事件は、もう二度と起こさないに越したことはない。そんな事情も知らずに、よくもまあ語れたものだと。

しかし同時に、あの時犯罪率が減少の一途を辿ったのは紛れもない事実であることを私たちも認識している。
だからこそ、そうしてキラに縋るものたちを全面から否定することなど出来ずにいた。

すっかり冷めた紅茶に口を付けると、後ろから肩を叩かれ振り向いた先に見えたよく見慣れた3人に紅茶を置いてキャスターを動かし振り向いた。

「どうかしましたか?マット君、メロ君、ニア君まで」

キラ事件終息に一役買った彼らは元々Lや私と同じワイミーズハウス出身であり、キラ事件終息後に真っ先にこの捜査本部への協力を受け入れた協力者でもある。

そんな彼らが少し挙動不審にこちらを見てくるのに首をかしげた。今は捜査時間外であり、彼らはLに似て自由奔放な性格であるがために休憩時間が始まると各々が好き勝手に本部から出て行ってしまうためこうして3人が同時にSのところへやってくるのは稀であった。

2人と丁度いい距離感を保っているマットなら珍しいことなどではないが、ハウスの中でもライバルであったニアとメロは普段は共にいることなど皆無。

そんな異色ともとれる彼らにじっと3人を見比べていると視界の端で何かが動き、ちらりとそちらに視線を向けるとマットの持っていた赤いリボンのついた可愛らしい箱が差し出された。

「アリーさん、いつもありがとう!」

がばりと勢いよく下げられた頭に驚きが隠せずにいた。
驚きの余り、紅茶に入れようと持ち上げていた角砂糖が指の先から滑り落ちカランと音を立てて皿に落ちた。

「ああ…そう言えば今日は私の。よく覚えていますね、マット君」

「そりゃね、アリーさんは毎年忘れるからってワイミーズハウスに居た時に思い出させるの俺らの役目だったし」

「懐かしいですね。あの時は君たちもうんと小さかった」

「ニアは未だに小さいけどな」

「コラ、メロ。今日はケンカはやめようって言っただろう。ニアもその振り上げた拳を仕舞えよ」

変わったと言えば小さい頃は可愛げがあったメロが目つきの悪い不良少年になったことだろうか。
あの時は好少年だったというのに、月日の流れは恐ろしいものだ。今ではパンクロッカーが着るような厳つい服装で身を固め、裏の職業についている大人が震えあがるような睨みでその手の事件を次々と解決してしまうのだから。

あんな目で睨みつけられたらと思うと、何だかずっと素直だった子供に急に反抗期が訪れた母親のような心境になってしまう。

「ありがとうございます、マット君、メロ君にニア君も。開けてもいいですか?」

「うん、3人でそれぞれ選んだんだ。赤が俺で金色がメロ、ニアが銀色のリボンね」

プレゼントの中身はなんだろうか。
楽しみにリボンを紐解いているとフッと3人の姿が彼らが幼い頃の姿とダブって見えた。
なんだ、変わったように見えたのは容姿だけでフッとした時に見せる表情はあの頃のままじゃないか。

自分がプレゼントをもらった時の子供のように、期待に満ちた瞳を向けてくる彼らに自然と口角が上がるのを感じる。

さて、3人の誕生日には一体何を贈ろうか。


(3人からのプレゼント)
(中身がなんだったかはご想像におまかせ)

(Happy Birthday,S)

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