ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第九十二話    悲惨な男


『そんなトコロだろう。世間サマから見れば、オレたちも、邪悪で不思議な術を用いる怪しげな集団という認識から逸脱することも出来ないからな』

『お前たちを悪く言うつもりはない。正義のために、戦っていたようだからな』

『フフフ。そうだ。分かってくれて嬉しいぞ。モルガナよ、お前たちも、我々とは異なる形で独自の正義を貫き、世を救ったようだな』

『……まさか、我が輩の記憶も、覗き見したのか?』

『一部だけな。オレたちの過去を見せた。その対価のようなものだ。そういう交換をした方が、術の効きも良くなる―――それに、お前が邪悪な術士の使い魔かもしれないということを、疑っていた』

『さすがはベテランってところだ』

『あまり多くのことは見ていないから、安心しろ。お前の個人的な感情や劣情までは、把握してはいない』

『劣情とか言うなだしッ!?』

『ハハハ。すまんな。まあ、いいではないか。舶来の血が混ざったおなごが好きか』

『……プライバシーとか守られてねえし!!』

『気にするな。些細なことだ』

『我が輩には些細なこととかなじゃいからな……ま、まあ、それはいい』

『たしかに。本題を話してやるべきだ』

『そうだよ。どうして、お前と葛葉ライドウは、呪われた金属を回収することが出来なかったんだ?……女の子たちの死体は、見つけていたんだろ?』

『……不思議なことに、無かった』

『あの月村ってヤローが、嘘をついていたのか!?』

『いいや。それはないな。悪魔召喚師は、ああいう時には嘘をつかない。月村は、誰かに出し抜かれていた』

『出し抜く?……そんなことが出来るヤツが、いるのか?』

『オレたちも調査した。探偵にコネがあるんで、そいつの力も借りたがな』

『探偵か……怪盗とは、相性が悪い言葉だ』

 ……明智を思い出す。少年探偵明智……哀れむべき男だったが、どこか同情したくなるような部分も同時に持っていた少年―――いや、今は、深く考え直すときじゃないか。

『で。見つけたのか、その出し抜いたヤツを?』

『見つけたよ。そいつは、オレたちと協力関係にあった警官だった』

『警官が?……いつの時代も、ろくな警官がいないもんだぜ』

『……いや。彼は、どちらかと言うと犠牲者だったよ』

『犠牲者?』

『オレたちの身分は、実は公的な存在だ。国家機関の一つであり、本来は帝都を霊的に守護する立場だった』

『帝都ね。東京か』

『東京さ。京都が都だった頃までは、長く生きちゃいない』

『そうか、それで?』

『公僕の一種なんでな。警察ともオレたちは組んで行動していたんだよ』

『そのなかに、裏切り者が出たのか?……呪われた金属を盗んだヤツが?』

『結果論で言えばな。だが、事情があったんだ』

『どんな事情だ?』

『彼もまた誰よりも必死に事件を追いかけていた人物の一人だった。この事件の犠牲者の一人は、彼の娘だったからな』

『……っ!!』

『悪魔に食い荒らされた死体は、常軌を逸するほどに悲惨な形状となることもある』

『それを、そんなことになっちまった娘の死体を、そいつは見ちまったってことか』

『ああ。悲しくて悲惨なことにな。彼は、常識のなかに生きる男で、悪魔や異能の存在を信じることは出来ない種類の男だったが……娘の死が、彼の認識を変えていた。だからこそ、警察も彼を我々の協力者に選んだわけさ』

『……酷なハナシの気もする。仇討ちしたいって感情は、理解することが出来るけど、冷静な判断が出来るような心理状態じゃなかっただろうな』

『その通り。有能な警官であり、マジメで……といか、壮絶なまでの執念で、彼はオレたちに多くの証拠を見つけてくれたよ』

『……なるほど。それは、そうだろう。そいつの気持ちは、よく分かる気がする。復讐者ってものは、自分を犠牲にしてでも、復讐を成そうとするもんだ』

『痛々しいことにな。彼は、常識人でありながら、我々の領分である悪魔の世界にまつわる謎に挑み、月村カイドウを追い詰めることに一役も二役も買ったというわけだ』

『有能なヤツだったのか。いや、執念か』

『妻に先立たれていたからな。一人娘を悪魔に食われて無残な死体にされた男は、鬼や悪魔よりも恐ろしいもんだったよ』

『……そんなヤツが、どうして?』

『『聖母の遺骸』について調べている内に、その邪術にまつわる力の一つに、死者を蘇らせる儀式がるってことまで、知っちまった』

『……おい。じゃあ、そいつ』

『当然なことではあるよな。娘を蘇生させようと考え始めていた。オレたちにも、何度かそんなことを訊ねて来た。しかし、そんな都合の良い術は存在しない……』

『死者は、蘇らないのか?』

『動かすことは出来る。呪いの力でな。だが、真の意味での復活など、空想の産物だ。あるいは、お前たちのように、とりっく……を使う奇術の一種を使うしかない』

『……どうなるんだ、その邪悪な術を使えば?』

『醜く腐臭を放ち、蠢きながら、暴れ続けるだけの肉塊が生まれる』

『……マジかよ、悲惨すぎるだろ……』


目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。