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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第八十二話    怪盗猫の冒険その三


『……どういうことだ、お前……ッ!!生きているんじゃないなッ!?……生きていないけど、何でか分からないが……お前は、話せるのかッ?!』

 モルガナは驚愕と恐怖と、警戒心に強ばる声を使い、問い詰めていた。センザンコウの剥製のはずの首が、ゆっくりと動いていく……数十年に動いているのか、パキパキとウロコが剥がれ落ちていくのだ、そして、謎の粉も……。

『く……さすがに、もう、動けんか……』

『……お、おい。やめとけよ。なんだかさ、お前の首がぽろっともげちまいそうだぞ……?』

 何だかそうなっては気の毒すぎる。モルガナはセンザンコウの身を案じてやっていた。

『……ハハハ。そうだな……ならば……そうさせてもらおう。夜ならば、悪魔どもの力を少しばかり借りることも出来るが……昼間では、これ以上、動くことは難しい……お。しゃべていると、歯がぐらついているな……作り物の歯だから、抜け落ちても構わんか』

『いや。よく分からんが……体をいたわれって』

 モルガナは警戒を解いている。センザンコウが素早く動けそうにないからということもあるが……センザンコウのしゃべり方から、モルガナは何か懐かしさを感じるのだ……雨宮蓮や……そして、モルガナの主であった、イゴールのような気配が……。

 直感のままに、モルガナの口は言葉を走らせる。

『なあ、お前は……ペルソナ使いなのか……?』

『……ぺるそな……ん。それは、確か、仮面という名の意味の、舶来語だな』

『舶来語……?』

『異国の言葉だ。英語だったかな……?』

『異国って、お前も海外から来たんだろ、センザンコウ……?』

『ハハハ。センザンコウじゃないよ。いや……まあ、この体はセンザンコウだがな。オレは、たんにこの剥製の獣に宿らせてもらっているだけの、魂の残滓だ』

『魂の残滓……?』

『そうだ。本体は、とっくの昔にくたばっちまっている……あるいは……違う世界で、まだ生きているのかもしれないが……』

 違う世界。モルガナの顔に険しさが宿っていた。昨夜、足を運んだあの異世界のことが頭をよぎったからである……。

『……まさか、あの世界に、お前はいたのか!?』

『……ん?どの世界のことだ?』

『え?……いや、吉永比奈子とか、この学園の七不思議になっている怪物がいる世界だ』

『ふむ。そんな世界は知らない。いや、何となく理解が及びはするがな……オレが言ったのは、本来の歴史の流れとは、異なる歴史の流れにある世界のことだ』

『……なんだ、それ?』

『そういう世界もあるのだ。オレは、悪魔や世界の不思議なことと関わり過ぎちまったからな。色々と、おかしな運命にある……気にするな』

『気にするなと言われてもな……ちょっとムリだろ』

『……まあ、そうだろう。だが、答えてやっても、お前さんにはおそらく理解が及ぶことは少ないだろうよ。オレは、あまり一般的な価値観のなかに生きてはいない……お前さんもだろうがな』

『まあな。猫の姿をしている怪盗だ』

『盗人か?……このセンザンコウの剥製を盗みに?……物好きだな』

『いや。七不思議を確かめに来たんだよ。我が輩は、吉永比奈子を助けてやりたい。天使サマとかいうヤツに……たぶん、我が輩や、お前のような異能の力を持ったヤツに、利用されているようだ』

『……ほう。そいつは、興味深いことだ』

『……心あたりが、あるんだな?』

『あるとも。オレは、そういった事態に対応するために、何度かこうして目覚めたのだからな……しかし、今回は、体がかなり壊れてしまっている……』

『お前は、一種の守護神みたいなものか?』

『神と呼ばれるには、大いに罪深い存在ではあるがな。ここに封じられていたモノに対しての、対策じゃあるよ。本体ではなく、式神という存在に模造した自我を持たせた存在なんだがな』

『そうか……よく分からないハズだけど、何となく、分かる。お前は嘘をついていないような気がするぞ』

『いい感性をしているな、猫に見える悪魔よ』

『悪魔!?……ちがうぞ。まあ……シャドウに近いかもしれないが』

『高位の悪魔に作られた存在のようにも見えるが……いいさ。とにかく、こちらに来い。知りたいことを、見せてやろう。長く話していると……口がもげてしまいそうだ』

『お、おお。見せてくれるってのは、どうするんだ?』

『オレが術を使い、過去を見せてやる。受けるヤツにも才能がいる行いではあるが、お前さんなら、おそらく見れるだろう。オレは、黒い生き物とは、縁が深いからな』

『センザンコウは、赤黒いカンジだぞ?』

『……本来のオレは、もっと分かりやすく黒いものに宿る咎人なんだがな……だが、いいさ。そんなことよりも、こっちに来いよ。オレを怖がるようなタマじゃないだろ、怪盗さんってのならよ』

『もちろんだ。我が輩は、知りたいことがあるんだ。一連の事件の真相ってヤツをな……』

『いい目をしている。十四代目も、もっと分かりやすい気迫を発揮してくれたら、良いんだがな……いや、もう、この世界の、今にはいないのか』

『誰かと迷子になったのか?』

『そんなことろだ。だが、信じている。本体のオレは上手くやっただろうし、十四代目もいい使い手になったとな……さて。おしゃべりは限界だ。行くぞ、黒猫』

『モルガナだ』

『そうか。オレは、ゴウトという。よろしくな』

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