ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第七十話    神代


「……そ、そっか……たしかに、猫さんに対して、ムチャクチャに機嫌がいい担任を見ると、ちょっと引くところもある……っ」

「引く?」

「だって。先生、独身だから。きっと、小動物に男性とか子供とかを連想しながら愛でているんだよ……っ。ああなっちゃ、イケない。猫さんとか犬さんに、人命をつけるようになったらお終い」

 ……なんだか、ヒドい言われようの気もする。だが、蓮は……『容疑者』として神代先生を見ていた。

 シスターでもある彼女の命令で、教会を掃除していたら、あの鐘の音を聞くことになったことを、偶然だと処理するほどには、お人良しではないのだ。大人はよく嘘をつくものだ。そして、蓮の勘は、彼女に対して何か常人とは異なる気配を嗅ぎ取っていた。

 モルガナが懐くような存在には、美しい以上の何かが隠れている気がする。杏によく懐いていたが、杏もまたペルソナ使いである。モルガナは、ペルソナ使いに惹かれる性質を宿しているのかもしれない。

 気配を殺して、しばらくモルガナと戯れる神代のことを、蓮は観察しつづけていた。変なトコロは、感じない。神代は、ただの猫好きの女性にしか見えない。妙に、はしゃいでいるのは……少しばかり、引く。

「……うふふ。この子にも名前をつけてみたいところよね?……で、でも。もうあるのかしら?飼い猫みたいだけれど……近くの家から、学園に迷い込んで来たのかしらね?猫は400から500メートルぐらいは歩き回るみたいだし……」

『みゃーご、みゃー……っ!?』

 モルガナが物陰に隠れて自分たちを観察しつづける、蓮と城ヶ崎シャーロットの存在に気がついていた。ビクリを毛皮に驚きの波を走らせたあとで、顔を赤くしてこの場から逃げ去ってしまう。

「ああ!まって、健太郎!!」

「……ひとっぽい、名前をつけている……ゴクリ」

「え?……あ、あなたたち!?」

 神代に気がつかれてしまった。このまま逃げるワケにもいかないだろう、蓮と城ヶ崎シャーロットは物陰から出て行く。

「み、見てたの……?」

「い、いえ。べ、べつに、そ、そんなことないですよ?……ねえ、そ、そーだよね、レンレン?」

 何もないようなヒトの態度ではない。蓮は城ヶ崎シャーロットの演技力の低さに、少しだけ呆れつつも、彼女は嘘のつけない好ましい性格をしている少女なのだとも評価してみることにした。

「……何も見ていない」

「そ、そう……いや……見てたわよね?」

「……実は、見ていた」

「そう……あの、他の先生たちには言わないでもらえるかしらね?……猫に餌付けしていたのがバレると、厄介だし……保健所に連れて行かれるようなことになったら、困るもの。私が、近日中に保護してみせるから、それまでは内密にしていくれないかしら?」

「はい。分かりました。ね?レンレン?」

「問題ない」

「そ、そう……ありがとうね、二人とも。ふう……それで、貴方たちは、どうしてここに来たのかしら?……何か、悩み事があるのかしら?」

「……そ、それはですね。レンレン、どうしよう……?」

 困り顔の城ヶ崎シャーロットに見つめられる。このまま誤魔化そうか?……神代は天使サマの可能性もあるわけだが―――しかし、彼女は善良さを見せている。その善良さが偽りのものとは、蓮の直感は判断することはなかった。

 情報収集の相手として、神代に質問してみるべきではないだろうか?……蓮は、5秒ほど考えて、決断する。全てを話す必要はないだろう。もしも、天使サマだとすれば、城ヶ崎シャーロットが無事な様子を見て、もっと動揺しそうなものだが……猫と戯れていたことばかりを気にしている。

 彼女が、天使サマである確率は、かなり低いのではないだろうか……?そうだとすれば、蓮の行動は早いものだった。

「……先生、実は、昨日、城ヶ崎と一緒にここで掃除をしていたんですが」

「ええ。そうよね。ちゃんとサボらずに掃除してくれたみたいね」

「掃除は問題ではないんですが、ここで鐘の音を聞いたんです」

「え!?……鐘の音なんて、ここには鐘楼は無いわよ?……放送の音じゃ?」

「違うんですよう、神代先生……本当に、ガランゴロンいう、リアルでガチなほうの鐘の音を聞いちゃったんです……」

「そんなハズはないでしょう?」

「でも、聞いちゃったんですよう、私たち……七不思議のアレ、聞いちゃったんです」

 その言葉に、神代の表情は強ばっていた。七不思議にまつわる悪いウワサを知っているのだろう……。

「……まさか……」

「オレも聞いたんです。幻聴じゃありません」

「……雨宮くんも……?」

「ええ。城ヶ崎が怖がっているんです。先生、もしもあのウワサについて、何かしっているのであれば……詳しいことを聞かせてくれませんか?」

 ……どんな態度を取るだろうか?……七不思議など、高校生にもなってと軽くあしらうのであれば、常識的な対応ではある。だが、そうでなければ?……彼女は、七不思議の脅威が実在していると把握しているのか、もしくは、ただの気の良い親身な教師か……。

目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。