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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第六十五話    精神暴走事件……?

「……あのウワサ?」

「そうだよ。生物の石崎先生っていたじゃん?」

「いたな……って、何で過去形なんだよ?」

「いや……例の精神暴走事件ってヤツ?……春休みのあいだにさ、石崎のヤツ、それになっちまったらしいんだよ」

「え?マジかよ……?ああいうのって、治っていたんじゃなかったっけ?」

「さあな……でも、アタマおかしくなったみたいだぜ?……うちの母ちゃんがウワサで聞いたらしいけど……全裸で走り回って、支離滅裂なことを言ってたらしいってさ」

「……マジかよ。ウケるけど、ちょっと引くな……先生、マジメでほがらかなカンジだったじゃん」

「3年生を受け持っていたからかね、とか母ちゃんが言ってたな。受験生だけじゃなく、周りのヤツもストレス抱えることになるんだから、アンタも心配かけるなって言われちまったよ―――」

 ―――精神暴走事件。

 ペルソナ使い、明智吾郎による事件だ。精神世界にいるヒトの歪んだ意志の体現、シャドウ……それには個人の精神が反映されたものが存在していることがある。

 特定の個人の、邪悪で歪な意識の象徴……ペルソナのなり損ないとも言える、個人の精神の象徴……それを破壊することで、ヒトの精神もまた破壊されることになる。廃人になる場合もあれば、一時的な混乱を来すこともある……ヒドい場合では、死ぬこともあった。

『……事件は解決したハズだ。もう絶望に染まったメメントスもなければ、ヒトの都合の良い欲望を叶えてくれる『聖杯』も存在はしない。しかし、あれらは表在化し、結晶化したようなもんだ……残念ながら、ヒトの怠惰な願望や、ストレスから来る狂気は慢性的に存在しているんだ』

 精神疾患の全てがペルソナや認知世界に根差しているワケではないだろう。むしろ、歪んだ病理が現実世界に存在しているからこそ、あちら側の世界も歪むだけのことである。

 ……とはいえ。

「……ペルソナ使いの犯行かもしれない」

『……うん。昨夜のような世界が存在している。我が輩たちの知らない手段を使っても、この現実世界に表裏一体のような関係を持つ異世界に介入することが出来るのかもしれないな……天使サマか』

「……なんだか、怖いね、レンレン」

 城ヶ崎シャーロットが不安げにつぶやく。

「……生物の石崎先生、いいヒトだったんだけどなぁ……そういうヒトを、酷い目に遭わせているかもしれない子がいるのって、何だか怖いことだよね……」

「まあな……」

 『心の怪盗団』、『ザ・ファントム』もまた、世直しのための改心を行う存在と認識されると共に……怖がられる存在でもあったのも事実である。

 ヒトは得体の知れぬ存在を怖がり、不明確な未来を不安がる。確かなものを求めようとしてしまい、ザ・ファントムのような異能力集団に対して恐怖を抱き、排除しようとする力も働くことになるのだ……。

 ……自分の力を知った今、城ヶ崎シャーロットは自分のことを怖がるのだろうか。不安を覚えながらも、勇気を奮い起こしてコトバにすることを蓮は選ぶことが出来た。

「……オレやモルガナのことも、怖いか?」

「え?……ううん。だいじょうぶ。不思議な力があってもね、レンレンはその力を悪いコトに使ったりはしない子だもん。信じてるから、怖くない。もちろん、モルガナもね」

『……いい子だな、城ヶ崎』

「そうだよ。シャーさんは、いい子なんでーす」

 ……どこか安心した。拒絶されることはともかく、恐怖されることは辛いことではあるからだ。いや……もちろん、拒絶されたって平気じゃないが……自分の存在に城ヶ崎シャーロットのような子が怯える……それは、紳士の道を進む蓮にとっては、あまりにも辛い状況ではある。

「良かったよ、城ヶ崎が強い子で」

「私、強い子なのかな?」

「ヒトを信じられるのは、強い心がないとダメだからな。理性があれば、疑う心も生まれてしまう。それを抑えきってまで、ヒトを信じられる……それは、強い心の現れだ」

「……そうだといいなー」

『……蓮の言う通りだと思うぜ。城ヶ崎、お前はやさしくて強い。ドジでマヌケなところもあるが』

「褒められた直後にダメ出しされてしまった……っ」

『悪い。つい、な……でも、我が輩も蓮も、お前の心がやさしくて強いから、お前と一緒にいると、とても居心地が良いんだ』

「そうなの?だったら嬉しいな…………あ、あの。レンレンも、かな?私といっしょにいると……居心地がいいって、ホント……?」

「ああ。城ヶ崎といると、楽しくて落ち着いた気持ちになる」

「そ、そーですかー…………うー……さすが、そこそこモテモテのレンレンだなあ」

『……まあ。いちゃついているのも良いことだが。蓮、アタマには入れておけよ?生物の石崎先生……精神暴走事件の犠牲者の可能性もある…………もちろん、ただのストレスから来る精神疾患の可能性もあるが……点と点が浮上している……』

 そうだ。もしも、石崎先生という人物が、シャドウを攻撃された結果に精神に異常を来していたとすれば……ペルソナ使いの介入が疑われる。天使サマ……死者にまで力を与えたらしいその存在は、もしかして近くに潜んでいるのかもしれない……。

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