ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第五十一話    脱出


『殺すううううううううううううッ!!猫おおおおおおおおおおおおおッ!!』

『ハハッ!!大きくなったけど、その分、動きにあるムダも大きくなっちまっているぜ!!』

 巨大化した少女の攻撃を躱して、モナはジョーカーと城ヶ崎シャーロットが待つ場所に向かう。

『待たせたな!!』

「ああ。脱出するぞ!!」

「お、おー!!」

 非常階段にジョーカー、城ヶ崎シャーロット、モナの順番で突入する!!そこは螺旋階段だ。

『転ばないように急げよ、城ヶ崎!!あの子は、この狭い階段には入って来れないと思うが、それでもどうなるかは分からない!!急ぐにこしたことはないぞ!!』

「う、うん!!……モルガナって、そんなしゃべり方するんだねッ!!」

『無駄口叩くなよ。殺されかけただろうが……?』

「うん……これってさ、私の夢じゃないんだよね?」

「そうだ。夢じゃない」

「そかー……そだよね。レンレンも、変なマスクしているけど……心の怪盗団って、ホント?」

「……ああ。本当だ。だが、それは、後にしよう」

 ガガガキキキイイイイイイインンッ!!

 金属が鳴り響く音が頭上から降ってくる。

『待ちやがれええええええええ!!猫おおおおおおおおおおお!!殺してやるぞおおおおおおおッッッ!!!』

『……あの子、我が輩のことを狙って来てやがるな……ッ。悪くはないことだ……城ヶ崎が狙われるよりは、ずっとマシだからな』

「モルガナ……っ。やさしい!」

『まあな!!我が輩は、とっても紳士なのだ!!』

「……でも、大丈夫なの?私の代わりに、狙われるってことだよね?」

『まあ、そうだが。百戦錬磨の我が輩なら、どうにでもなるさ』

「それに、オレもいる」

『……ジョーカー。へへ。そうだな!我が輩たちのコンビは、負けないぞ!』

「そうなんだ!いいコンビだもんね!…………あれ?……なにかな、階段の下の方、何だか、光ってる……?」

『おそらく、あれが出口だろう。あそこに行けば、この狂った世界から脱出することが出来るハズだ。そういう認識をしていてくれるらしい、あの子は……』

「……どういうことかは分からないケド、とにかく、あそこに逃げ込めば、助かる的なことだよね?」

「そうだ。ついて来い、城ヶ崎」

「ラジャーだよ、レンレン!」

 城ヶ崎シャーロットはそう言いながら笑う……その笑顔は何ともキラキラと輝いているなとモルガナは思う。

 ジョーカーめ、可愛い子にばかり追いかけられやがって。我が輩は……とても怖い子に追いかけられているってのにな。

『猫おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!』

 ギギュギュキキキキキイイッ!!

 刃だらけの巨体を、無理やりに非常階段にねじ込もうとしているのだろう。金属同士がこすれ合うイヤな音が聞こえて来る……。

「……あの子……七不思議の子なの……?」

「そうらしい」

「……かわいそうな子なんだね?」

「おそらくな。だが……今は撤退することしか出来ない」

『そうだ。我が輩たちもデカブツとの戦いで、かなり消耗している……それに、あの子を倒さずに状況が解決出来るとすれば、そちらを選びたくもある……』

 ……天使さま。

 彼女は、確かにそう言っていた。天使さまが力を貸してくれるとも、天使さまが城ヶ崎を殺せと吹き込んだようなことも……もしかしたら、それが『親玉』なのかもしれない。

「あ。光りが強く……っ」

『城ヶ崎!恐れずに飛び込め。あそこからは、元の世界のにおいがするんだ!!』

「ら、らじゃー!!」

 螺旋階段の先にある、強い光を目掛けて、ジョーカーと城ヶ崎シャーロットが肩を抱き合うようにして飛び込んでいった。

 モナは……その場で立ち止まり、無理やり体を螺旋階段の中へとねじ込みながら、自分を追いかけてくる死霊を見上げた。

『……『吉永比奈子』。それが、お前の名前だ。それが、本当の名前だぞ。お前は、そんなバケモノみたいな姿をしていてはいけない。ヒトの魂は、ヒトの姿でいるべきだと我が輩は思う…………本当のお前を、天使さまに盗られちまったのなら……我が輩が、盗み返してやる』

 意志を込めて、そう告げる。その言葉を聞いたとしても、『吉永比奈子』は止まることはない。彼女にはあまりにも小さすぎる螺旋階段の中で、溺れるようにもがきながら、モナのことを追いかけることに必死だった……。

『……じゃあな。今夜は、ここまでだ』

 モナはそうつぶやきながら、白くて強い光が漏れてくる、空間の裂け目に対して跳び込んでいた。

 ……光の奥へとモナは落ちていく。

 その光りはどこか温かく、あの危険な場所からの解放を意味しているのだということを、モナは実感する……これで、大丈夫だ。大丈夫だが……あの子を……『吉永比奈子』を置き去りにしたことは、紳士の心にこたえはする。

『……助けて、やらなくちゃなあ。我が輩たちは、きっと……そのために、お前と出会ったんだと思うんだよ……じゃないと……悲しすぎるよな……ジョーカー……』

 現世へと帰還していく中で、モナの姿が、いつもの猫の姿へと戻っていく……。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。