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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第四十四話    エレベーターの使い方


『ぐおおおおおおおおっ!?』

「消えろ」

 バシュウウウウウウウウウウウウッッ!!

 ジョーカーの指が、何とも乱暴にシャドウの仮面を剥ぎ取ってしまっていた。

『ぎゃがごおおおおおおおおおおんんん…………』

 全身から血を吹き出すかのように、黒い闇色の何かを噴出しながら、そのシャドウは融けるように朽ちていく。

『……さすがの早業だ。そして、危険察知の勘。やっぱり、頼りになるぜ、ジョーカー』

「……まあな」

 ジョーカーの指が閉じられて、青い仮面が砕け散る……怪盗の指は、敵を掌握して消し潰すその瞬間にも、アイテムを奪い取ってみせていた。傷薬……装備が手薄な今では、悪くないアイテムだ。

『ふむ。ここのシャドウからも盗めるわけだな……って、他のシャドウが来ちまうな。ジョーカー、ドアを閉めろ』

「了解だ」

 エレベーターのドアが閉まっていく……しかし、閉まりきる直前に、エントランス・ホールに入ってきたシャドウたちが二人の存在に気がついていた。驚くそのマヌケなシャドウたちに対して、ジョーカーはニヤリという挑発的な笑みをもって応じていた。

『ぎがごおおおおお!!』

『がるるるうううう!!』

 激昂するシャドウたちが、こちらに向かって走って来るが……時はすでに遅し。エレベーターのドアは閉まり、上昇を始めていた。

『……お前、相変わらず怪盗モードのときは、態度が悪くなるよな?』

「反逆心がそうさせる」

『……ホントかよ?……普段は抑圧されているオラオラな本性が、にじみ出ているとかじゃないよな……?』

「オレは紳士だ」

『……まあ、いいや。とにかく……このまま無事に最上階までたどり着ければいいんだが……』

 モナは天井を向きながら、何かを考えているようだ。ジョーカーもそれにならい、エレベーターの天井を見上げる。メンテナンス用のハッチがあった。

『……念には念を押しておくべきだな。さっきみたいなこともあるんだ』

「ああ」

『手を貸せ、ジョーカー。メンテナンス・ハッチを開けて、エレベーターの天井裏に潜んでおくことにするぞ』

 怪盗たちは有言実行に移る。メンテナンス・ハッチをこじ開けると、そのままエレベーターの天井裏に身を潜めた。

 ホコリっぽいが、この場所なら敵に気づかれることはないはずだ。モルガナは音を立てないように、ゆっくりとメンテナンス・ハッチを閉じるのだ。

『ふう。しかし、このエレベーター……かなりゆっくりだな……というか。屋上が高すぎるぜ』

 ジョーカーは暗闇が立ち込めた頭上を見つめた。外から見たときと比べ、このマンションの内部は巨大だった。しばらくエレベーターは動き続けることになるかもしれない。

『……この何でも有りなカンジは……パレスにも似ているな』

「ああ。だが……欲望がない」

『そうだ。生命力を宿した目標がない…………もしかしたら、幽霊のパレスなのかもしれないな……』

「……そうかもしれないな」

 先ほど目撃した少女の幽霊……あれが、七不思議の『主』なのだろうか?……そうだとすれば。彼女を退治しなければ、この状況は解決しないのか……?

 そうだとすれば……あまり、楽しい行為ではないな。

 ジョーカーの仮面の下にある表情にも、モルガナは気がついてやることが出来た。

『……あの幽霊と戦うことになるかもしれない状況を、辛く思っているんだな』

「……モナも同じか」

『……ああ。我が輩もだ。紳士としては、自殺して亡くなった少女の霊と戦うなんて、あまりにも抵抗があることだからな……それでも』

「……わかっている。城ヶ崎が狙われているのなら、どうにかしなくてはな。城ヶ崎以外だって、狙われることになるかもしれない……こんな状況に巻き込まれたら、普通は助からないだろう」

『……だな。ペルソナ使いにしか、こんな事件を解決することは出来ない。我が輩たちが聖心ミカエル学園に来た途端にコレだ……やっぱり、ジョーカーは、色々と巻き込まれやすい体質なのかもしれないな』

「だが。そのおかげで、城ヶ崎を助けられるのかもしれない」

『……前向きで素晴らしい評価だ。ああ、我が輩たちだからこそ、巻き込まれているのかもしれない。こんな事件を解決しろって、神サマが仕事をくれたのかもしれないぞ』

「……神さまか」

 信心深くはない方だが……今は、少しでも加護が欲しい時ではある。エレベーターに乗った選択は、正しかったとは思うが……間に合うのだろうか?あと24分で城ヶ崎シャーロットへの予言が成された時間になる……。

 焦るジョーカーの足下で、エレベーターが静止する。シャドウたちの気配を感じて、ジョーカーとモルガナは沈黙し、その気配を消した。

『ぎゅるるううう』

『ぐええええええ』

『ごるごるるおお』

 シャドウの群れが、エレベーターの内部へと入ってくる。もしも、エレベーター・ルームのなかにいたままであったら、大惨事となっていたところだ。

 狭い空間で大型のシャドウとの戦闘を行うことは、ジョーカーとモナの二人でも避けたいところだった。
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