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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第二十八話    運命と闘う方法


『……蓮にしては、積極的だというか…………そうか。お前、気にしているんだな。女の子の飛び降り……我々にしては、ある意味では原点でもある事件だな。ヒトを危険から護るということは、とても難しいコトなんだ……復讐は、真の救済ではないものな……』

 守れない者もいる。

 守りたくても、どんなに頑張ったとしても、悲劇を回避することは難しい。

 それは運命と言ってしまえば、それまでなのかもしれないが……運命に屈することを良しとするような男ならば、反逆者としての魂を心には宿すことはないのだ。

 蓮は顔を赤くしている城ヶ崎シャーロットを引き連れて、聖心ミカエル学園の桜の花片が舞い散る坂道を歩いた……2年生と3年生の大半はすでに帰宅して、1年生は校内にいる。

 三人だけしかいない、その坂道を降りていきながら……蓮は気づいていた。

「……あ。すまない、城ヶ崎。ちょっと速く歩きすぎてしまったか」

「う、ううん。大丈夫、大丈夫だよー」

 真っ赤になった顔で、城ヶ崎シャーロットはそう返事をしていた。

「……そうか。悪かったな」

「いいよ。レンレン、私が怖がっていたから、あそこから連れ出してくれたんだよね。それは、伝わって来たよ」

「……うん。強引にしてしまった。それに、勝手に手もつないでしまって。イヤだったかな」

「い、いやじゃないけれど……そ、そうだね……も、もう大丈夫、かな……」

「ああ。そうだな。あの鐘が聞こえて来た場所からは、ずっと遠くに来ている」

「……レンレン、七不思議のことを気にしているの?」

「城ヶ崎を危険な目に遭わしたくないからな」

「ふにゃ!?……そ、そういうセリフを、真顔で……こ、このシャーさんの瞳を見つめながら、言っちゃあダメですぞッ!?」

 ぴょーんと跳びはねて、蓮から離れる城ヶ崎シャーロットがそこにいた。

「そうなのか?」

「う、うん。そうだよ。レンレンは……乙女心に入って来るのが、そこそこ上手なので、あまりカッコいいセリフを、使わないようにね?……ご、誤解しちゃうぞ、シャーさん」

「誤解?どんな風にだ?」

「はうう!!な、なんでもありませーん!!」

『……これを天然で言っているから、スゲーよな……我が輩では、そういうセリフを使うことは難しい……蓮は、やっぱりスゴいなあ』

 蓮はモルガナが何を言っているのかは、よく分からなかった。マジメ過ぎて、どこか恋愛には疎いところもありはする。

 先の1年間で、それなりに奥手ではないことは証明して来てはいるが……。

「……あ。レンレン、ほら、こっちこっち。ここが、バス停だよ!!」

 城ヶ崎シャーロットはぎこちない動きで速く歩き、『聖心ミカエル学園前』と書かれたバスの停留所へと向かう。小さなベンチと、時刻表が記された表示板があるだけのシンプルな停留所であった。

『ふむ……次のバスは、いつだろうな……』

 通学バッグから飛び降りたモルガナが表示板に向かい、その前にいる城ヶ崎シャーロットをじーっと見てみる。

「……っ!!ふむ。ピーンと来たぞ!!今、モビルスーツに乗っていたら、宇宙世紀のエースパイロット特有の、アレが響いていたはずだ!!」

『コイツは何を言っているのだろうか……?伝わっていないんじゃないだろうか』

「はい、モルガナ。抱っこからの……時刻表リサーチだね!!」

 城ヶ崎シャーロットはモルガナを持ち上げて、時刻表を見せてくれるのだ。モルガナはうんうんとうなずいていた。

『そうだよ。分かっているじゃないか、城ヶ崎……さーて、蓮、今、何時だ?』

「14時32分だな」

 スマホを見ながら、蓮は時刻を告げていた。モルガナは、ふむふむ、と言いながらその青い瞳を鋭く細めて、時刻表に書かれている数字を観察していく……。

『なるほど、我が輩たちの家へ方角のバスは……えーと、次は、14時40分か……なかなか、いいタイミングだな。すぐに来るらしいぞ』

「そうか。あと8分だな」

「わー。スゴい。モルガナ、数字を読めるんだね。私、バスの時刻表とか、16才になるまで、ピンと来なかったよー」

『……そんなので、本当によく無事に生きてこれたもんだよなぁ……』

 色々と弱点の多すぎる女の子だな……モルガナはそう呆れてしまう。その愚かさのせいで、さまざまなドジをして来ただろうに……それに懲りることもなく、人助けをする気高さを忘れない。

 それは……とても心の強い者の証なのだと、モルガナは理解する。

『……城ヶ崎。お前の心が宝石に化けたら、それはきっと、ものすごく透明に澄み切った、美しい宝石なのだろうな……』

「……モルガナ、何を言っているの?」

「とてもキザな言葉で、城ヶ崎を口説いているぞ」

『はあ!?ば、ばか!?く、口説いてなんかねえしっ!?』

「わーい!!モルガナに口説かれたー……キスしちゃおうかな」

『ば、ばか。や、やめておけ。そういうのは、ほ、本当に恋をした男のためにとっておくもんだぜ、城ヶ崎』

「……恋人のためい、キスはとっておけと言っている」

「おお。なるほどー、モルガナはキザなセリフを使えるタイプの猫さんなんだね」

『……はあ。もう、いい加減にしてくれ……ん。バスが、来たぞ。ちょっと時間よりも早いようだが、バスが来たぞ!!今度こそは、乗り遅れないようにするぞ!!』


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