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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第二十六話    『七不思議』


 蓮とモルガナ、そして城ヶ崎シャーロットは礼拝堂の掃除をスタートさせる。それほど汚れているというわけではないが、朝に夕に生徒や教師陣がここで祈りを捧げるわけであり、そうなれば自然とホコリや砂が礼拝堂のなかには入り込んでしまうのだ。

 蓮は、一年前、ルブランにやって来た日のことを思い出していた。物置に使われていた、あのホコリっぽい古くて木造の空間……そこのゴミを捨てて、掃除をし……住めるようにして行く。

 あの時の掃除は大変なものではあったものの、自分の力で住む場所を切り開くような体験であり、それは独特の喜びを雨宮蓮に与えるものでもあった。

 三人で手分けしたこともあり、その掃除は20分ほどで完璧に終了する。

「やったー、完成したねっ!!」

 城ヶ崎シャーロットのにこやかな勝利宣言が、聖なる場所の静けさを打ち破っていた。

「ああ。そうだな、かなりキレイになった」

『うんうん。二人とも、よく頑張ったじゃないか!……この美しさなら、神代殿にも満足してもらえるだろう!』

モルガナは満足げである。

「モルガナ、喜んでるね。みゃーみゃー!……気合いが入ってるよ!」

「そうだな」

「まさか、猫さんが雑巾がけをするシーンを見れるなんて、思ってもいなかったよー。シャーさんの目玉は、癒やされましたぞー、モルガナー」

 器用な猫型生物を、城ヶ崎シャーロットは抱き上げていた。その胸に抱きしめながら、猫の毛皮に鼻を埋めて、くんくんしてみる。

「……モルガナにも、ホコリのにおいが移ってる。一生懸命、がんばってたもんねー……うん。お風呂に入れてあげるべきだ」

『お風呂っ!!じょ、城ヶ崎っ。出会って初日でお風呂なんて、お風呂なんて……』

「バケツに入れるのは……ダメだよね」

『ば、バケツっ!?お風呂じゃないし!!そんなの、ぜんぜん、お風呂じゃないし!!』

「……モルガナは後で家の風呂にでもつける」

「そっか。そだよね。レンレンの家でお風呂に入れば良いわけだし―――」

 ―――ゴーン!!ゴーン!!ゴーン!!

 大きな鐘の音が、礼拝堂に響いていた。

『……ふむ。この教会、鐘があるのか……?外から見たカンジでは、鐘楼があるようには見えなかったが……?』

「……城ヶ崎?」

 蓮が気づいていた、城ヶ崎が通常モードよりもはるかに、ボーッとしてしまっていることに……。

「…………っ」

『おい。どうしたんだ、城ヶ崎のヤツ?』

「大丈夫か、城ヶ崎」

「……え?……あ、う、うん。大丈夫……何か、今……変なコトが起きたような?」

『変なコト?……鐘が3回なっただけだぞ……?』

「鐘が鳴った。それが、変なコトなのか?」

「……そ、そっかー。やっぱり、そーかー……」

『どうしたんだろうな、城ヶ崎のヤツ……?』

「何かあるのか、あの鐘が鳴ると……?」

「……無いはずなの」

『え?』

「……どういうことだ?」

「このミカエルにはね、昔はあったんだよ。鐘楼が……でもね。ある女子生徒がそこから飛び降り自殺を起こしちゃったみたいで……それで、鐘楼は取り壊されちゃったんだよ」

『……おい。じゃあ、さっきの鐘の音は……?』

 モルガナの毛皮が波立つようにざわついていた。心霊現象、怪奇現象、オカルト……そういったモノに、あまり耐性が強くあるわけではないのだ。本人そのものが都市伝説の化身のような存在であるというのに……。

「……学園には、無いはずの鐘が鳴ったということか……?」

「うん。そうみたい……これね、アレの一つなんだよ」

「アレ?」

『ま、まさか……っ』

「聖心ミカエル学園の七不思議の一つ。『あの世から聞こえる鐘の音』……」

『ひ、ひえええっ!!ま、マジかーっ!!』

「……ふむ。不思議だな」

「……う、うん……噂だと、その鐘を聞いちゃうと、自殺した女の子に誘われて、飛び降りちゃうって言われているんだよね」

『と、飛び降りるのかよ。学校の七不思議らしいっちゃそうだケド、どこかエグさが強いような気がするな……』

「ま、まあ。ただの噂だから、気にしない気にしない!」

「そうだな……」

 蓮は鐘の音が聞こえて来た礼拝堂の天井を睨みつける。怪盗の視力を使っても、そこには異常が見つからない。スピーカーでもあれば、自分ならば気づけるはずなのに。何やら不可思議な現象に巻き込まれているのかもしれない。

 ……蓮の口もとが自然に笑みを浮かべていた。不敵な笑みである。『心の怪盗団』……『ザ・ファントム』のリーダー、『ジョーカー』の笑みであった。

「……と、とにかく、レンレン!お掃除も終わったことだし、もう学園から帰っちゃおうよ!!……まだお昼過ぎだけど……ちょっとだけ、怖くもあるし……」

「……そうか。送っていく」

「えへへ。そうだね。送るっていうか、レンレンのお家に行きたいかな」

『……おいおい、積極的じゃねーか、城ヶ崎シャーロットさんよ……』

「……自転車、置かせてもらっているもんね、レンレンのお家に」

『……ああ、そういうことか……どこか、こう、ガッカリ要素がひょこひょこと頭を出してくる子っていうかなぁ……彼女に惚れた男子は、なかなか関係性を深めるのが難しそうだぜ』


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