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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
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第二十五話    『それは懐かしいにおいであって……』

 教会の前にたどり着いた時……蓮と城ヶ崎シャーロットは、仔猫のように神代先生に甘えているモルガナを目撃することになった。

 大地に背をつけて、腹を見せつけるようにしながら……モルガナはシスター服を着た美女に甘えていた。

『みゃーごー、みゃーごー』

「ま、まあ。なんとも……可愛いですね……っ」

 神代先生も猫には目が無いらしく、なんとも嬉しそうな表情でモルガナのお腹をナデナデしているのであった。城ヶ崎シャーロットは目を細めながら、蓮に質問する。

「ねえねえ、レンレン。今、モルガナはどんな言葉を使っているの?」

「みゃーごー……っと言っている。フツーの猫のフリをしているみたいだな」

「そかー……策士だね……でも。フツーの猫じゃないんだね、モルガナ。魔法の世界から来たのかな?」

「そんなところだ。でも、二度とオレの側をいなくなることはない」

「……絆を感じるね!」

「ああ。頼りになる仲間で、師匠でもある」

「おお。何を習ったの?」

「……色々だな。それは、また今度教えてやる」

「うん。楽しみにしてるね、レンレン」

 神代先生は二人の話し声に気がついたようだ。モルガナへ注いでいた視線を外し、二人を見て来る。やや赤面しているが、コホンと咳払いをすることで茶を濁そうとしていた。

 だが、城ヶ崎シャーロットはニコニコしながら、女教師の見せた新たな一面を追及する。

「神代先生、猫さん大好き同盟のメンバーだったんですね!!」

「そ、そんな同盟に所属した記憶はありませんからねッ!?」

「ちなみに、その子のお名前は、モルガナですよ」

「モルガナ……不思議な響きの名前ね……」

『モルガナです。今後とも、ナデナデ、よろしくお願いします』

「……まあ。みゃーみゃーと可愛い声で鳴いて……どこから迷い込んで来たのかしら。お腹、空いてないかしら……って?」

 モルガナは風のように素早く走り、どこかへと消え去っていく。神代先生は逃げてしまったモルガナの影を、残念そうに追いかける。

「逃げちゃった……」

「また、すーぐに来ますよ。モルガナ、先生のことを気に入っているみたいでしたから」

「そ、そうね…………さ、さてと。えーと……そ、そうだ。遅刻した罰に、教会の掃除をしてもらいます」

「……はい。分かりました」

「りょーかいデース」

「二人にして欲しいのは、礼拝堂のお掃除です。床とイスに対する雑巾がけですね。単純な作業ですが、主の御前での清掃作業です……心して行うように」

「はい」

「神代先生、それですか、掃除道具?」

「ええ……バケツと雑巾です。監督したいのも山々ですが……私にも仕事があります。一通り掃除をしたら、いつもの場所にそれらを戻して、下校してもよろしいですよ」

「分かりました」

「いい返事です。昨年度は、大きな試練に見舞われたようですが。自分と周囲の人たちの力で、逆境をはね除けた……貴方の今後の成長に、私は期待しています。精進することですよ、雨宮蓮」

 ……厳しくもやさしい表情で、神代先生はこちらを見つめてくれている。

 蓮は自分が何やら評価され、期待されていることに気がつく―――それは、教師としての感情なのだろうか。だが……どうにも、既視感を覚える……。

「では。掃除を開始してください。与えられた役目を全うしてくださいね、二人とも。手を抜いた掃除をすれば……より大きな罰が二人にやって来ることを、忘れないように」

「……はい」

「は、はい!!」

「よろしい」

 最後に迫力を見せつけて、神代先生はこの場を立ち去っていく。周囲をキョロキョロと見回しているのは、おそらくモルガナを探しているからだろう……。

 蓮が教会の方へと振り返ると、モルガナが尻尾をピンと立てたスタイルのまま、教会の裏手から姿を現していた。なんとも、上機嫌そうな顔であった。

『……ああ。神代殿。毅然とした態度で、素晴らしい女性だ……ッ。お前たち、礼拝堂をピッカピカに磨き上げるんだぞ!!』

「……モルガナ、テンション高そうだけど。何を言っているのかな?」

「礼拝堂の掃除をがんばれと言っている」

「うん。そだねー。せっかく、お掃除するんだもん。キレイにしないとねー……じゃあ、行こう。レンレン」

「ああ」

『よし……我が輩にも、雑巾を寄越せ。床を磨くことぐらい、この体でもこなせるぞ』

「……そうか。がんばれ、モルガナ」

『任せろッ!!神代殿が住まう聖なる空間!!我が輩の手で、キレイに磨きあげて差し上げるのだッ!!』

 こうして三人の掃除が始まる。教会の礼拝堂は大きくはない。小さくて、静かで、厳かで……聖なる気配が漂っていた。しかし、古い建物であるがゆえ、独特のホコリっぽさも漂ってはいた。

 蓮とモルガナの強い嗅覚が、そのホコリの気配に、強い懐かしさを覚えていた。

『……なあ。蓮、ここ、ルブランに似ているな』

「ああ」

「どうしたの?」

「オレとモルガナが東京で住んでいた屋根裏部屋と、同じにおいがするんだよ」

「えへへ。そっかー。懐かしい?」

「……ちょっと前までいた場所だからな。そんなに日にちは経っていない。でも、そうだな……たしかに、懐かしい気持ちになれる」
 

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