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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第十七話    『神代』


 罪と罰。厳格なジャッジをする教師、それが神代らしい。だが、たしかに蓮は罪悪感も背負っていた。自分を助けようとしたせいで、城ヶ崎シャーロットはケガをしてしまったのだから。

『……いい先生だな。お前の心のなかにある罪悪感を、見抜いていたみたいだ。いい機会だから、罪を償おうとしようぜ。こんな美女とお近づきになれたら、それだけでも最高のことだしな!!』

「……あれ?どこからか、猫の声が?」

「そ、それは、アレですよ、先生。近頃、野良猫が校内にいるって噂、知りません?」

「そうなのですか?聞いたコトもなかったですが……まあ、入学式の準備やら、受験生の担任になったりと……私も、いつもより注意力が散漫となっているのかもしれない。学校の変化に気づけないのは、教師として修行不足を感じます」

 ……神代はずいぶんマジメな性格をしているらしい。自分のテリトリー内の異変に気づけなかったことを反省し始めている。

「……主よ。未熟な私をお許しください」

 そんな行動に出ている神代を見ていた城ヶ崎シャーロットは、蓮の制服を引っ張りながら、小声で訊いてくる。

「……うう。どーしよ、レンレン、先生を追い込んじゃった……咄嗟についた嘘が、なんだか罪深く感じるよう」

「……罪深いなら、罰を受ければいい」

「え?……あ。そうか。先生!……神代先生!!」

「なんですか、主へ祈りと反省の言葉を捧げている最中に……?」

 神代先生は口を細めて、不機嫌そうに膨らんだホッペタを見せつけてくる。どこか子供らしい表情をするみたいだ。

 モルガナは、美女が見せるその子供らしさを気に入っていたようだが、蓮にはそんな属性は存在していなかった。

 城ヶ崎シャーロットは神代先生へ、交渉を試みる。

「……あのですね。私もレンレンに二人乗りをしようと誘ったりしましたし、そもそも遅刻しちゃっています」

「そうですね。だから、どうしたというのですか、城ヶ崎シャーロットさん?」

「だ、だからですねー。私も、レンレンといっしょに、ここの教会のお掃除を手伝わせてもらいたいです!!レンレンだけ、掃除させるなんて、ダメです。ズルした気になります」

「……ふむ。たしかに、貴方の言い分にも一理があるように感じます。貴方も遅刻したのは事実ですし、ね……?」

「はい。遅刻しちゃいました!!」

「……たしかに、褒められてことではありませんからね。事情は把握していますが……でも、いい機会かもしれません。二人に手伝ってもらうとしましょう。それで、遅刻の件は帳消しにしておいてあげます」

「やったね!レンレン、いっしょに掃除だよ!!」

「……ああ、がんばろう」

「うふふ。いい心がけです……充実した歳月を、過ごされたようで、何よりです」

 ……この一年間のことを言っているのだろうか?……神代がこちらを見つめて来る慈愛に満ちた瞳は……何か、もっと長い期間を見据えての発言のようにも感じられる。

 ……どこかで会ったことがあるのだろうか?

 いや。そんな記憶はないはずだが……?

「……とにかく。今さら入学式に駆け込んでは、新入生に間違われてしまう危険もありますからね」

「え。さ、3年生としては、それ、屈辱の極みなんですけど?……だよね、レンレン?」

「若く見られるぞ」

「おお。そ、そうだ。2才も若返ることになるのか……って、そうはならないよ!?恥をかくだけの気がするんだよー?」

『実際、その通りだろうな』

「……あら。また、猫ちゃんの声が……?」

「き、きっと、あっちの草むらの方ですよ。猫さんは、草むらとか好きそうじゃないですか!?」

 誤魔化し方が下手だな。猫の口を肉球で押さえながら、モルガナは城ヶ崎シャーロットに対して、そんな評価をつけてみた。演技力は、少なそうだ……と。

 だが、杏殿も、最初はヒドい演技しか出来なかった。ヒトは、磨けば化けるものなのである。

 そのうち、城ヶ崎も化けるのだろうか……?

「……まあ。猫のことは、とりあえず問題はありません。新入生の門出に対して、この場で祈りを捧げて下さい」

「わかりました」

「……わかった」

「……そのあとは、3のBの教室に戻っておきなさい。ホームルームをして、今日は解散です。クラス委員候補の生徒に、雨宮さんに校内を案内してもらおうかと考えていたのですが……城ヶ崎さんに任せましょうか」

「オッケーです。レンレンに、ミカエルのこと教えたげますよ!頼れる先輩として!」

「……それは嬉しいが。足首は?」

「え?……んー。そうだね。かなり痛みは引いてる」

「そうか。じゃあ、教室に行ったら、アイシングしておこう。アイシングは、回数が多いほど有効だからな」

「そなんだー。おねがーい!」


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