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ペルソナ5:OXYMORON……賢明なる愚者へ。

原作: その他 (原作:ペルソナ5) 作者: よしふみ
目次

第七話    怪盗団の技術


『……ああ、言わんこっちゃない……』

 モルガナの声を聞きながら、蓮は、シャーロット号と共に地面へと倒れ込んでいるシャーロットに近づく。

「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫だ。でも、パワー不足だったようだよー……」

 シャーロットは、てへへ!と笑いながらピンク色の小さな舌をぺろりと出した。感情表現が豊かな子だ。蓮はそう思った。自分は感情表現が乏しいから、少しうらやましくもある。もしも、自分が、てへへ!とか笑ってみたら?……不気味だろうなと考えてみたりもした。

 自分はどちらかと言うと、暗闇に合ってしまうような笑みになるだろう―――何というか、魔族系なのかもしれない……そんなことを考えてみた。

 ……とにかく、紳士であるモルガナが無言のオーラを放ってくる。すべきことをしなければならない。

「ほら。手を貸すぞ、城ヶ崎」

「う、うん……あ、ありがとー、レンレン……」

 白くて小さな手を握りながら、蓮はゆっくりとシャーロットを地面から起こしてやった。シャーロットは、えへへ、と笑う。どこか照れくさそうだった。

「朝からこういうシチュエーションだとー……恋に落ちちゃうパターンだよねー」

「そうなのか?」

「そ、そーかもなーって?」

『……あいもかわらず、蓮ばかり……』

「あれ?また、猫さんの声が……も、もしかして!?」

「……もしかして?」

「レンレン、猫の悪霊に、取り憑かれているの!?」

 城ヶ崎シャーロットは大変に驚いている。だが、蓮はマジメな表情だった。

「……あるいは」

『ねーよッ!!幽霊じゃないし!!……たぶん!!』

 一度は消えかけたし、それから復活して戻って来たけれど。多分、いや、幽霊ではないはずだ。

 だって脚はあるし?……モルガナは通学バッグのなかで暴れながらも、己のアイデンティティーを探していた。

 シャーロットは、暴れる通学バッグを見つめながら……ハッ!と何かに気がついた顔をする。

「それ、腹話術とか……そーいう芸?」

「……そんなところだ」

『……ちげーだろ』

「あはは。また、ニャーって言った!レンレン、猫さんのマネが上手なんだねえ!!……って!?」

 城ヶ崎シャーロットが、よろけた。蓮は素早く動き、彼女を支えてやる。

「大丈夫か?」

「う、うん……なんていうか、足首、ちょっと痛くなって来たかもー?」

『……大変だな。もしかしかしなくても、捻挫したのかもしれない。壮大に転けていたからな……』

 捻挫か……武見の診療所で、ファースト・エイドは習っているし、バッグの中にも応急処置用のセットを携帯しているな……怪盗のたしなみとして。

『蓮、技術を見せるときだぞ!!』

「ああ……城ヶ崎、こっちに来い」

「え?う、うん……ど、どこに行くの?」

「バス停だ。イスがあるから、あそこまで行こう。歩けるか?……何なら、抱っこするが」

「お、おう。抱っこか……そ、それは、その……恥ずかしーし」

「そんなことを言っている場合か」

 真顔でマジメな言葉を使う蓮に対して、城ヶ崎シャーロットは赤面する。

「……こういう、天然ジゴロさんなのかなー……」

『そうなんだよ。コイツ、全自動フラグ・マシーンなんだよ……』

「あはは。また猫さん腹話術してるね。何か、練習中?」

「そんなところだ。抱っこがイヤなら、肩を貸す。痛めた足に体重をかけないようにして進め」

「おう。オッケーさんだぞー」

 蓮は城ヶ崎シャーロットに肩を貸したまま、バス停に置かれているベンチにまで彼女を運んでやった。そして、彼女をそこに座らせるのだ。

「あはは。一休み出来たーって、カンジ。でも……ちょっと足首痛しだ」

「靴下を脱げ」

「え。ええ!?……こ、こんなところで、脱ぐんすか!?」

 それなりに大きな声で、城ヶ崎シャーロットは叫んでいた。周囲の人々に対して、大きな誤解を発生させそうだ。蓮は、そんな事態を防ぐために、正論を使う。

「捻挫の治療をする。テーピングで固めて、包帯でぐるぐる巻にする」

「なるほど。レンレン、そういうの手慣れているの?」

「熟練者だ」

「スゴい!どっかのスポーツ・クラブに入っていたとか?」

「……ジムには通っていたな。格闘技も習った。それなりに、ケガが多い一年間だったから。こういうことにも詳しくなった」

『我が輩も仕込んだのだぞ……っ』

「にゅーにゃー!……うーん。私じゃ、ニャーニャー言いながら同時に人間さんの言葉、しゃべられないっす」

「これもコツがあるんだ」

『……また、テキトーなことを言いやがって……』

「ほら。とにかく、縛ってやるから脱げ」

「……お、おー。それ、何か使い方間違えているよーな気もするけど、ガチで足が痛いんで、お願いしやーす!!」

「任せろ」


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