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悪役令嬢が悪くてなにか悪いかしら?

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: 藤原遊人
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心棒者は増える

想定外だったけど、ヒロインが実は転生者で、それもヘビーなオタクだったことが判明した。

女子会と銘打ったお茶会で、と言っても心配した保護者ズが遠くから観察しているお茶会で、双子推しと熱く語られた。
思わず、これまで、原作クラッシュに奔走した日々はなんだったのか……とスペキャ顔になったのは今では笑い話だ。

なぜならあのときが一番大人しかった。

「いくら同性とはいえ近いでしょう。離れてください」
「あぁっ!素敵すぎる、このスチルください」
「ふふ!ジルがイイ顔して、興奮しちゃう」

ヒロインが私を見てかけ寄ってくると、ジルが威嚇をはじめて、それを「尊い!」とヒロインが仰いで、リリトスが爆笑する。
もはや恒例行事過ぎて、クリストフは呆れているし、レオナルドに至っては視線すら寄越さない。

クリストフから話を聞くに、どうやら腐女子でもあるらしいヒロインは攻略対象者同士が会話しても、なんなら呼吸してるだけで崇め奉ってくるレベルらしかった。
悪い子ではないんだけど、ちょくちょく興奮し過ぎて、身分の高い人にも見境なく突撃しちゃうところがキズ……とアレスがため息ついていた。

それじゃあ誰ともルートはじまんないわ。
なんならなにもなく終わってる。
今日も虚空に向かって「この世界の神に感謝を!」と悶絶しているヒロインは鼻血数秒前だ。

ちなみにパーティの日はリリトスとクリストフの会話を聞いて鼻血を出してしまい、退出してたとか。
パーティというシチュエーションに興奮が収まらず、トイレで鼻を抑えてたら騒ぎになってて慌てたらしい。あんまり過ぎる理由に、怒っていたジルも気力が失せたらしい。

「血は出さないように気をつけてくださる?」
「が、がんばります……っ!あぁ!ハビラント様に心配していただけるなんて!」

言った傍から鼻血が出そうになったらしくトイレに駆け込んでいる。

いや、その程度の距離じゃ臭いはするんだけど、人族にはわからないのだろう。
私もハビラントになる前は血がこんなに遠くまで匂うなんて知らなかった。

「ハビー?」
「どうかしたかしら、ジル?」
「制服が乱れているよ」
「あら、ありがとう」

リボンが歪んでいたらしく、ジルが慣れた手つきでリボンを解いて結び直す。

「よそ見なんてしたら、わかってるよね?」

先日も噛み付かれたばかりの首筋をなぞられる。

原作のバッドエンドにいくのは回避したけど、ヒロインになまじ気に入られたせいで、毎日メリーバッドエンドへの道を邁進してしまっている気がする。

でも……。

ハビラントは転生した「私」の意識ではそれはマズイでしょうと苦言を呈するような感情を持て余している。

「お互い様でしょう?褒められて良い気分になってご覧なさい。すぐに棺に納めてあげるわ」

ハビラント嬢も紛うことなきヤンデレだった。
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