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悪役令嬢が悪くてなにか悪いかしら?

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: 藤原遊人
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異文化交流の文化祭

R15な兄妹の戯れをしたあと、ジルは随分とハビラントに過保護だ。
幼なじみのリリトスもどうやら歓迎会のあとのことを察しているらしく、ジルがいないときは積極的に構ってくれる。

おかげさまでヒロインがどのルートかさっぱりわからない。

まあ、私の目の前にジルとリリトスがいるから、とりあえず2人じゃないことだけは確実だ。

「文化祭、ハビーはなにがしたい?」
「リリトス、ハビーに近過ぎる。僕に喰らわれたいのか」
「ヤダヤダ、俺はもっと楽しイイ感じがいいな」

打ち合わせがR18指定されそうな2人を横目に、記憶を探る。
文化祭の出しものね。さすがに途中参加の双子はイベント展開が早い。

文化祭スチルで、ジルとリリトスは何してたかなあ。

私個人の欲望としては、白制服は基本的に美男美女なんだからそれを生かして飲食系のをやったら荒稼ぎできる気がするけど、被害も甚大そう。メイド喫茶とか、執事喫茶とか。倒れる人続出間違いなしだね。

でも、リリトスはまあ自分で良いようにあしらうだろうけど、ジルは人をあしらうの苦手そうだし、変なのついたら困る。バンパイアの双子は基本セット行動、私に攻撃きてもめんどくさい。

「わたあめ」

そうだ!思い出したわ。
リリトスが綿あめを出汁にして、際どい発言繰り返してくるイベントがあった。スチルがあったのは、ジルの方でカラフルなわたあめを迷子の子どもに渡して微笑む光景だった。

「決定だね。甘い香りをまとったハビーちゃんがベタベタになっているところとか、たのしみだな」
「実行するようなら、僕にも考えがあるよ?リリトス、幼なじみのよしみで警告しておこう」

はじめのインパクトが良かったせいか私の鶴の一声で出し物が決まってしまい、あれよこれよと進んでいく。
本来のストーリーならハビラントは孤立していて、兄にベッタリ。リリトスにすら警戒……って、今、まんま双子の立場が逆転してるな。これだけストーリークラッシュしていたら、転生ヒロインだったとき言い訳きかないけど、そのときは身分でごり押すしかない。

ちょっと立場入れ替わっちゃってるのかも……と思っていたら、案の定、文化祭で迷子の子どもに遭遇した。しかも、ちょうど私が一人で売り子をしているときにだ。

「おかあさん、どこおお」

お店の目の前で泣く子どもに困惑して動揺するジルの画面での姿を思い出す。
ゲームでもなんで双子の片割れもリリトスもいないんだ?と疑問に思っていたけど、ジルはお砂糖の補充に席を外していて、リリトスはどこかに口説きに行ったタイミングだった。

「まんまぁぁ」

なるほど、こういう理由でジルは一人でお店にいたのか。確かに人嫌いのハビラントだったら一人で売り子なんてできなかっただろう。
中身が会社員の私なら手酷いクレーマーがこない売り子なんて御茶の子さいさいだったけど。

それで、この子どもどうしよう。

ジルが戻ってくる気配がないから、まさか、スチルと同じことを私がやるのか?!
私が悩んでいる間にもギャン泣きを続ける子ども、うぅ、こんなに泣かれると中身がおばちゃんなだけに心が痛い。

「そこの人間の子ども、甘いものを食べて頭を働かせるとよい。私も一緒にどうしたら良いか、考えてあげるわ」

原作ママだと双子の口調が違うから若干違うけど似たようなことを言うと、まだグズグズ言っているもののギャン泣きからちょい泣きぐらいに進化した。

ピンクと水色のわたあめを差し出して、問いかける。

「どっちかあげるわ。片方は私のものよ」
「じ、じゃあぼくはあおにする」
「そう、どうぞ」

ちょっと屈んで渡してあげれば私の記憶通りのスチル光景とドンピシャ。こうなってくると、ハビラントのバッドエンド心配よりも、ジルが追い込まれないか心配しておかないといけない。

「ハビー!体調悪い?大丈夫?」
「おかえり、ジル。体調不良じゃないわ、それよりも迷子の子どもみたいなの。どうしたらよいかしら」
「人族の子ども?人族が単独で子どもを放置するなんて、どれだけ危険だと……。ハビー、お店を任せても良い?アレスに任せてくる」
「ええ、わかったわ」

ジルが連れて行ってくれれば、大幅なクラッシュには……ってスチル絵うばってるあたりでクラッシュしてるか。まあ、その後の話だけはクラッシュさせない心遣いに感謝して欲しい。

さて、えーと?ハビラントは人間の子どもをどう呼んでだっけ?
あ、そうそう、思い出した。吸血鬼に子ども時代ないのかよとツッコミ入れた覚えがあったわ。

「さあ、子ども、この人はジル。私の双子よ。あなたを親御さんのところまで連れていってくれるわ」
「ほんとう?」
「ええ、もちろんよ。ジルは優しくてすごいのよ」
「おねえさん、おにいさん、ありがとう」

照れたように頬を染めたジルが子どもを抱きかかえる。
なぜスチルはわたあめを差し出した方にしたんだ、こっちの方が絶対良かった。可愛い×可愛いの暴力にノックアウトされそうだ。

「行ってらっしゃい、ジル」
「行ってくるよ」

わたあめをフリフリしながら遠ざかる子どもと、わたあめをベタベタにくっつけられているのに気がついていなさそうな天然なジルを見送った。

リリトス、甘い香りをまとってベタベタになったのはジルだったわ。
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