パーティが平穏で終わったら乙女ゲームじゃない
無事にパーティが終わりましたで、終わるわけがない。
どうして悪役が大人しくしているのに、事態が動くの。
吸血鬼二匹で楽しく血まみれになりながら血を飲みあっていたら、メイドたちが遮る声をものともせず、リリトスが部屋に突撃してくれた。
「ふふふ、お取り込み中にごめんね」
「なんの用だ、リリトス」
不機嫌極まりないと声音だけでなく魔力でもリリトスを威圧しながらジルが返事をする。
いくらリリトスが幼なじみとはいえ、双子の空間にはいるのは良しとしていないらしく、ジルが顕著に威嚇している。
「いまねえ、一人、人族の生徒が見当たらなくて、そしたら血の匂いを振り撒いている君らがいるでしょう?まあ、私はこんなことだろうと思っていたけど、ね。君らがあからさまに銀の服で揃えてきたから、今夜を楽しむ気満々だとわかってたよ」
あれ?
原作だったらハビラントが断罪されたあと、腹いせにヒロインを攫って贄とするべく血を流させて儀式……要はハビラントの奴隷にするような魔法契約を結ばせようとするんだけど、当然今のハビラントはできない。
可能性があったジルも今目の前にいる。
つまり、何が起こったのか私はわからない。
「この状態のまま、僕らにパーティ会場に戻れと?」
「中途半端に血を与えた吸血鬼が一番危ないの、リリトスも知っているでしょう?」
「私も中途半端が辛いのはわかるよ、インキュバスも同じだからね」
「仕方ない、ハビー、立てる?」
部屋の鏡を見るが、お互いの血に染まって、あちこちの牙の跡がついている。
これ、見た目が完全にR18案件だよ。
「ええ、ジル。もちろんよ。ドレスを直すから手伝ってちょうだい」
「髪も直そうか」
ドロドロの血の模様がついているだけで、見た目はキレイになった。
けど、絵面が完全に誰かを屠ったあとになってしまったのは事故だ。
獣人やエルフ、インキュバスは鼻が効くから、吸血鬼同士の血だとわかるけど、人族からしたら恐怖の対象だろう。
パーティ会場にリリトスの後ろに並んで戻れば、会場の中央にヒロインと攻略対象者たちが揃っていた。
あ、この構図、知ってる。
「ジル……と、ハビラント嬢?」
私たちの姿を見て固まったのは、案の定、人族のアレス。
「うわ」と顔を歪めたのはエルフのクリストフと獣人のレオナルドだ。
「探していた人族の生徒は見つかったようだね?楽しいクリスマスを片割れと楽しんでいたのに、途中で止められて大変不服だよ。アレス」
「マジか、リリトス、おま、よくこれ連れ出せたな」
「ふふっ!双子のお楽しみの最中にはいるのは、なかなかにスリリングな体験だったよ」
呼び出すように言ったのだろう教師たちも顔が引き攣っている。
「解決したなら戻って良いかしら?ねえ、ジル」
「僕の可愛いハビーも望んでるし、良いよね?」
片割れと顔を見合わせながら会話をすると、獣人のレオナルドが吐き捨ててくれた。
「鼻がもげそうなぐらい臭う、さっさと帰ってくれ」
「……と、尊い」
レオナルドのあとに微かだけど、ヒロインの声が聞こえた。
え?もしかして、ヒロインって……
「はう」
「え?うそ、やばいって!今、血は」
濃厚な血の匂いに危うく意識が飛びそうだった。
ハビラントになってから日が浅いからか、さっきまで二匹で遊んでいたからか、よくアニメとかで見ていた理性が限界ってこういうのだなと妙に納得できる。
ジルを見上げたら、片割れも目が銀色に染まっている。
クリストフの慌てようから恐らくヒロインが「尊い」と言って鼻血を出しちゃったみたいだ。
「ねえ、ハビー」
「うん、ジル」
先生たちから帰って良いの許可がないなら、仕方ないよね。
双子の空間に入っちゃえば周りが見てようと知ったこっちゃない。
まあ、よくも悪くもハビラントは元から悪いやつだ。
仕方ないでしょう?
「え?!ちょっとあの双子の理性飛んじゃってる!待て待て!ジュリアンもハビラント嬢も、ここで始めないで!お願いだから!リリトス!笑ってないで、アレ、連れて帰って!」
サポートキャラも兼ねてるクリストフは常識人だからか、悲鳴のような声をあげている。
まあ、そのせいでより視線が集まってる気もしなくはないけど。
しーらない。
あまいあまいジルからの愛情が多分に含まれた血を得るべく、ジルの首筋に牙を突き立てた。
どうして悪役が大人しくしているのに、事態が動くの。
吸血鬼二匹で楽しく血まみれになりながら血を飲みあっていたら、メイドたちが遮る声をものともせず、リリトスが部屋に突撃してくれた。
「ふふふ、お取り込み中にごめんね」
「なんの用だ、リリトス」
不機嫌極まりないと声音だけでなく魔力でもリリトスを威圧しながらジルが返事をする。
いくらリリトスが幼なじみとはいえ、双子の空間にはいるのは良しとしていないらしく、ジルが顕著に威嚇している。
「いまねえ、一人、人族の生徒が見当たらなくて、そしたら血の匂いを振り撒いている君らがいるでしょう?まあ、私はこんなことだろうと思っていたけど、ね。君らがあからさまに銀の服で揃えてきたから、今夜を楽しむ気満々だとわかってたよ」
あれ?
原作だったらハビラントが断罪されたあと、腹いせにヒロインを攫って贄とするべく血を流させて儀式……要はハビラントの奴隷にするような魔法契約を結ばせようとするんだけど、当然今のハビラントはできない。
可能性があったジルも今目の前にいる。
つまり、何が起こったのか私はわからない。
「この状態のまま、僕らにパーティ会場に戻れと?」
「中途半端に血を与えた吸血鬼が一番危ないの、リリトスも知っているでしょう?」
「私も中途半端が辛いのはわかるよ、インキュバスも同じだからね」
「仕方ない、ハビー、立てる?」
部屋の鏡を見るが、お互いの血に染まって、あちこちの牙の跡がついている。
これ、見た目が完全にR18案件だよ。
「ええ、ジル。もちろんよ。ドレスを直すから手伝ってちょうだい」
「髪も直そうか」
ドロドロの血の模様がついているだけで、見た目はキレイになった。
けど、絵面が完全に誰かを屠ったあとになってしまったのは事故だ。
獣人やエルフ、インキュバスは鼻が効くから、吸血鬼同士の血だとわかるけど、人族からしたら恐怖の対象だろう。
パーティ会場にリリトスの後ろに並んで戻れば、会場の中央にヒロインと攻略対象者たちが揃っていた。
あ、この構図、知ってる。
「ジル……と、ハビラント嬢?」
私たちの姿を見て固まったのは、案の定、人族のアレス。
「うわ」と顔を歪めたのはエルフのクリストフと獣人のレオナルドだ。
「探していた人族の生徒は見つかったようだね?楽しいクリスマスを片割れと楽しんでいたのに、途中で止められて大変不服だよ。アレス」
「マジか、リリトス、おま、よくこれ連れ出せたな」
「ふふっ!双子のお楽しみの最中にはいるのは、なかなかにスリリングな体験だったよ」
呼び出すように言ったのだろう教師たちも顔が引き攣っている。
「解決したなら戻って良いかしら?ねえ、ジル」
「僕の可愛いハビーも望んでるし、良いよね?」
片割れと顔を見合わせながら会話をすると、獣人のレオナルドが吐き捨ててくれた。
「鼻がもげそうなぐらい臭う、さっさと帰ってくれ」
「……と、尊い」
レオナルドのあとに微かだけど、ヒロインの声が聞こえた。
え?もしかして、ヒロインって……
「はう」
「え?うそ、やばいって!今、血は」
濃厚な血の匂いに危うく意識が飛びそうだった。
ハビラントになってから日が浅いからか、さっきまで二匹で遊んでいたからか、よくアニメとかで見ていた理性が限界ってこういうのだなと妙に納得できる。
ジルを見上げたら、片割れも目が銀色に染まっている。
クリストフの慌てようから恐らくヒロインが「尊い」と言って鼻血を出しちゃったみたいだ。
「ねえ、ハビー」
「うん、ジル」
先生たちから帰って良いの許可がないなら、仕方ないよね。
双子の空間に入っちゃえば周りが見てようと知ったこっちゃない。
まあ、よくも悪くもハビラントは元から悪いやつだ。
仕方ないでしょう?
「え?!ちょっとあの双子の理性飛んじゃってる!待て待て!ジュリアンもハビラント嬢も、ここで始めないで!お願いだから!リリトス!笑ってないで、アレ、連れて帰って!」
サポートキャラも兼ねてるクリストフは常識人だからか、悲鳴のような声をあげている。
まあ、そのせいでより視線が集まってる気もしなくはないけど。
しーらない。
あまいあまいジルからの愛情が多分に含まれた血を得るべく、ジルの首筋に牙を突き立てた。
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