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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
目次

ブレーメンの音楽隊②


ロバ→永倉新八
犬→藤堂平助
猫→斎藤一
雄鶏→土方歳三

4匹はブレーメン郊外に向かって歩き始めます。
けれどブレーメンの街は広くてなかなか着くことはできません。
日が暮れてしまったため、今夜はそこで夜を明かすことにしました。
ロバと猟犬は大きな木の下で寝て、猫と雄鶏は枝に登りましたが雄鶏は一番安全な木のてっぺんまで飛んでいきました。雄鶏が眠る前に当たりを見回すと、遠くのほうに小さな火花が散っているように見えたように思いました。

土方「なんだありゃ。おい、遠くねぇところに家があるぞ。明かりが見える。」

下を向いて仲間たちにそういうと、眠りにつく準備をしていた彼らは雄鶏の指さした方向を見て首を傾げました。街中と言えどここは商店が多く、住宅地とはうんと離れた場所にありました。それに人間も寝静まったこの時間に、誰が明かりをつけているというのでしょう。

永倉「それならそっちに行くか?ここで野宿するよりはいいかもしれねぇ」

ロバの発言にそれぞれ頷き、もう少しだけ歩いてみることにしました。
もしかしたら居ないと思っていただけでまだ起きている人間がいるかもしれません。

明かりに向かって進み、まもなくその明かりがだんだんと輝きが大きくなって、こうこうと明かりのついた家が見つかりました。
町外れの家はどれも暗闇のなかでひとつだけ明かりがついたのは何処か不自然ですが、もしかしたら酒場か宿屋なのかもしれません。ロバはそっと窓から中を覗くと雄鶏が後ろから声を掛けます。

土方「新八、何が見える?」

永倉「食いもんと飲み物があるテーブルと、そこに何人か男たちがいるな」

土方「男たち?」

永倉「何か不穏だぜ、土方さんよ。どうやらここは強盗か何かの家らしい」

中に居た男たちはどれも獲物を持った如何にも悪そうな顔立ちをしており、土方は窓ぶちから中の様子を見ると永倉の言葉に頷いた。

藤堂「どうすんだ?見るからにだし、ここに泊まる訳にはいかねぇだろ?」

土方「んなもん、こいつ等脅してこの家とっちまえばいい」

藤堂「俺たちが言っていいセリフなの?それ」

斎藤「世の中弱肉強食だ。それに俺たちは今人間ではなくロバ、鶏、犬、猫…咎められまい」

藤堂「一番の堅物が言っちゃダメだろそのセリフ」

動物たちは強盗を追い払う方法を相談し、とうとうある計画を思いつきました。
ロバが前足を窓枠にかけ、猟犬がロバの背中に飛び乗り、猫が犬の上によじ登り、最後に雄鶏が猫の頭に止まりました。

永倉「いででで!?平助お前暴れるんじゃねぇ!」

藤堂「しょうがねぇじゃん!これ体格的に順番おかしいだろ!?」

斎藤「致し方あるまい。童話ではそのような順に…副長…俺も首が」

土方「俺だけ明らかおかしいだろ!?斎藤すまねぇ…!」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ動物たちが暴れる勢いで窓はバンバンと音を立て、その音に気付いて窓の方を振り向いた男たちはその大きな影に唖然としました。
グラグラと揺れる影はだんだんと窓の方へと近づいてきます。
それには強盗達は大慌て、恐ろしいその光景に飛び上がり家を出ると一目散に逃げていきました。

4人はぐったりと地面に転がっていた体勢から起き上がり家の中を見ると、中にあった食べものでその日の夕飯を済ませて大満足。中にあった灯りを消すと、それぞれお気に入りの寝床で今晩はここで夜を明かすことにしました。
ロバは庭のわらの上に、猟犬はドアの後ろに、猫は暖炉近くの温かい場所で寝て、雄鶏は猫の近くで寝転がりました。

真夜中を過ぎた頃、強盗達は遠くから家の明かりがもうついていないのを見て強盗の親分が「俺たちは何であんなに取り乱したんだ?」と言って子分の一人に家に行って様子を見てくるようにと言いました。

使いにやった子分はひっそりと家のそばへやってくると、台所に入り、家の中で物音で起きた猫のギラリと光る炎のような目を燃えている炭火と勘違いして、火をつけようとマッチを持っていきました。しかし猫はそれを見て飛び上がると子分の顔に飛び掛かりその顔を引っ掻いてしまいました。

子分はとても驚いて裏口から飛び出します。
しかしそこに寝ていた犬が飛び上がり足に噛み…いえ、寝ぼけながら子分の足を掴むと子分は急に引っ張られた足にバランスを崩して地面に顔面を強打。足を掴まれたのは幽霊か何かの仕業だと思った子分は「祟りだ」などと泣きながら今度は外へ飛び出して、わらのそばまで走っていくと今度はロバが自慢の筋肉を見せつけながら子分を背負い投げました。
どうやらロバも寝ぼけて立ち上がったようで、「どうだー!筋肉―!」などと鼻提灯と膨らませながら言うロバに、子分は恐怖のあまり中庭の方へと飛び出しました。

強盗は出来るだけ早く親分のところへいき「あの家には恐ろしい化け物がいる!長い爪で俺の顔をひっかいて、足を引っ張った上に、意味の分からない言葉を言いながら投げ飛ばされたんです親分!俺は必死に逃げてきました」と言いました。

それを聞いた強盗の親分はすっかり青ざめた顔で、二度と家に戻ろうなどとは言いませんでした。しかし4人のブレーメンの音楽家たちはその家がたいそう気に入ったようでもう出て行きたいなどと思いませんでした。

藤堂「土方さん、さっきそこで聞いたんだけどさ。この町魔女が出るらしいぜ。引っ越そうよ」

土方「魔女だァ?んなもんいるわけねぇだろ」

永倉「その魔女ってのは何してくるんだ?」

藤堂「顔を引っ掻いてきたり、足を掴んで転ばせてきたり、「筋肉」とかなんとか言って投げ飛ばしたり、たくあんの味が薄いだのって呪文を唱えるらしい!」

斎藤「何とも面妖な奴がいるものだな。」

その後暫くブレーメンの七不思議としてその「魔女」の話が噂されたとかされなかったとか。

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