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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
目次

狼と七匹の子ヤギ③


※グリム童話のものとは結末が異なります。
ご了承ください。


前回までのあらすじ

天霧がおじいさんのふりをして子ヤギ達を誘き出そうとするも、町の外れに住んでいたのはおじいさんのようでおばあさんだった為作戦失敗に終わってしまった。
今回こそは子ヤギ達を外に誘い出すことはできるのでしょうか。


沖田「懲りないよねぇ外にいる狼さん達。どう足掻いたってここから様子見えるのにさ」

斎藤「仕方あるまい、きっと正規雇用では雇ってもらえなかったからこうして子ヤギを誘拐するしかなかったんだ。」

土方「お前らは窓辺に張り付いてなにやってんだ?」

子ヤギと言えどこの家の子ヤギ達は一味も二味も違いました。
隣町の子ヤギ達は狼の思案に騙されてしまい扉を開けてしまったといいますが、その後ヤギ界では同じ手口に引っ掛からないようにと防災訓練ならぬ狼対策訓練が行われてきました。それで対処を教わった彼らは未だに玄関横の木陰で何やら話している狼3匹を哀れんだ瞳で見つめます。

原田「なんつうかこう見ると可哀想に見えてくるな。もうヤギであんな手口に騙される連中なんていないってぇのに未だに同じ手口を使おうとしてるだなんてよ」

永倉「ほら見てみろ左之、あっちの藍色の狼が金色の奴に腕に小麦粉塗りたくられてらァ。あれでヤギに化ける気なんじゃねぇか?」

沖田「古典的な方法使うよねぇ。あんなのもうとっくに知ってるっていうのに。」

不知火は木陰の裏で風間に塗られた小麦粉まみれになった腕を見て文句を言いながらも、背中を押されて送り出されれば渋々と小屋の方へやってきました。
そんな不知火に子ヤギ達は「ほら着た」と言いたげにしらっとした目をしています。

不知火「坊やたち、お父さんだ。少し早めに帰ってこれたから開けてはくれないか?」

一度目の指摘を思い出し、できるだけ優しい声で問いかけた不知火に子ヤギ達は窓の方からそれを見ながら言います。

沖田「そんなに小麦くっつけて料理にでもなるつもり?釜戸に火炊いてあげようか?」

不知火「小麦ィ?…そんな意地悪な事言わないで開けておくれ防や」

土方「開ける訳ねぇだろうが。とっとと帰れ狼が」

不知火と子ヤギ達の攻防戦は一向に終わりません。
痺れを切らしたのは子ヤギ達の方。六男は隣にいた長男にひっそりと耳元で何かを伝えるとしばし悩みながらも頷いた長男に部屋の奥へと行ってしまいます。
その間にも三男、四男、五男に何やら言い返されている不知火は面目も何もありませんでした。
小麦粉を足につけた狼に騙される子ヤギはもう遠い昔の話、防犯意識はこのヤギの世界でも当たり前のように向上していくのです。
しかしそろそろお父さんヤギ、次男と一緒にが帰って来る頃。
いつまでも狼達に付き合っている暇はありません。
戻ってきた六男が頷き、静かに扉の外の音を聞いていた子ヤギ達は外からした小さな音に安堵してそっと扉から離れていきました。

呼んだのは猟師ではありません。それよりももっと厄介な。

伊東「あら、狼さん達。ごきげんよう」

なかなか開けようとしないヤギ達に強行突破を考え始めた狼達に後ろからニコニコとやって着たのはヤギ達と知り合いの狐さんでした。

風間「今は忙しい。何処かへ失せろ」

扉をこじ開けて中に入ろうとしている狼達は狐さんの方など振り返ろうともしません。
狐なんて自分たちの脅威ではないからです。しかしこの狐さんはただの狐ではありませんでした。
いつまでも自身に背を向けて立っている3人をじっと見て笑顔の奥に怪しい雰囲気を醸し出すと、狼たちの肩に手を置いてこういいました。

伊東「喋っている人の目を見れないだなんてなんて無礼な人達かしら。ほらいらっしゃい、人とのマナーって奴を叩き込んであげるから」

ずるずると引きずられるように連れていかれる3人に子ヤギ達は窓からそれらを見送りながら静かに狼達に合掌します。きっと彼らは当分は叱責されるでしょう。
そんな伊東や狼達とは入れ違いに帰ってきたお父さんヤギと次男に今まで会ったことを話すとお父さんヤギは黙って子供たちを抱きしめました。

その後、7匹の子ヤギはお父さんヤギと一緒に街に出ると伊東の開いている寺子屋で「マナーとはなにか」と書かれた黒板で正座させられている狼達を見て、猟師を呼ぶよりも酷であったことを知り苦笑いしたのは子ヤギ達しか知らない話。

藤堂「伊東さんも何だか張り切ってるよな。俺たちの授業受け持っている時より生き生きしてる」

原田「だな。きっと楽しいんだろうな。楽しいのはどうやら伊東さんだけだと思うけど」

沖田「僕伊東さんのこと嫌いだったけど今回ばかりは助かったよねぇ。帰ってきた近藤さんと鉢合わせたら大変だったし、狼さん達もいいんじゃない?あれだけで済んだんだからさ」

永倉「ほら見てみろよ、総司と同じ学年にいる南雲があんなところで笑いながら見てる」

沖田「ホントだ。カメラなんて持ってるね。明日の校内紙の一面は決まりだね。後で経緯教えてあげなくっちゃ」

原田「ほどほどにしてやれよ?総司」

こうして子ヤギ達は狼達の犠牲(?)により楽しく平和に暮らしていきましたとさ。



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