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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
目次

狼と七匹の子ヤギ②


風間「なぜ開けないんだ。俺の作戦は完璧であった筈」

道端に落ちている石ころを蹴飛ばしながら金色に輝くたてがみを持つ狼は至極不服そうな顔で先頭を歩いていました。
あの後、結局取り入る隙もなく一向に玄関を開けてもくれない子ヤギたちに渋々と引き上げてきた一行でしたが諦める兆しはまだありません。何としてでもあそこにいる子ヤギたちを外へ引きずり出してやろうという思案でいっぱいです。

不知火「いや欠陥だらけだよ。大体何しに足を見せる必要があるんだ。
あの後俺は近所の奥様方にひそひそ話で色々言われたんだぜ?」

しかし被害者は金髪の狼、ではなくその後ろにいた肌が褐色の狼の方でした。
彼は子ヤギたちを誘惑すべく出したことすらない裏声で必死に呼びかけたのを内側にいる子ヤギのひとりのことごとくバッサリと斬り捨てられたのです。
しまいには「おじさん暇なの?」だなんて言われたらもう暫くは立ち直れません。
それもこれも隣にいる風間の思い付きのせいなのです。

天霧「窓口に足を置くなんて行儀の悪い、と言われていましたね」

不知火「中にいる子ヤギにも「お母さんにそんなとこに足乗せたらダメって教わらなかったの?」なんて冷静に返されたしな。大体自分の案にそんなに自信があるならお前がやりゃ良かったじゃねぇか」

風間「俺はお前と違って育ちがいいからな」

不知火「………」

天霧「気を確かに」

拳を振り上げた不知火の肩をぽんぽんと叩き宥めた天霧は浅くため息を吐くと、前を何の迷いもなく歩く風間に「諦めて帰りましょう」と言いました。
しかしそれで納得いくわけもない風間。ふっと目に留まったパン屋を見てしばし考えてからくるりと後ろを振り返り不知火の方をじっと見つめると、何かを察した不知火はサッと顔色をその顔に負けないくらいに青ざめさせて首を横に振って先に断ります。

不知火「何考えついたか知らねぇが俺はやらねぇぞ!?」

風間「まだ何も言ってはいない」

不知火「お前のその顔はろくなことを考えてない時だ!」

風間「ほう?俺のことを分かり切っているとでもいいたげだな。もしかしたら普通の発言をするやもしれぬというのに」

不知火「いーや!お前のその犯罪者みたいな笑顔はろくなことじゃねぇ!」

風間「ちょっとあそこのパン屋に行って、小麦粉足に塗ってもらってこい」

不知火「ほらな、ロクなことじゃねぇ!」

パン屋を指さした風間はそのまま不知火の背中を押して「ほら行けそら行け」と拒否する間もなくパン屋の方へと押していき、それに天霧はさすがに不憫に思い「風間、あの子ヤギたちがその程度で騙されますまい」と助言をすると風間はしばし固まり、天霧の方を向き、不知火を引っ張っていた手を放しました。その際短い悲鳴が上がりましたが2人は気にすることもなく話を続けます。

風間「ならばどうすれば話が通じると?」

天霧「何かあの子ヤギたちが気を許す人物に成りすます必要があるのでは」

風間「それならば先程父親のふりをしただろう。こやつの演技が下手で即刻バレたが」

天霧「あれはきっと近しい人だったから違いを見破られたのでしょう。次はもう少し離れた他の者にしましょう」

風間「あやつらが油断をするくらいの…千鶴か!?」

不知火「お前がやれよそれ。髪の毛結わえて女物の着物着てやれよ」

最早止めようともしない不知火は、そんな声も聞こえずひとり思考に走っている風間にきっと自分がその役をやらされるのだろう未来を想像して深いため息をつきました。

その後なんとか天霧の説得の上、村に住むひとりの老人に化けようということで話が着いた3人は早速村の外れの古い呉服店へと入りいくつか見繕ってもらうと今度は天霧がその役をやることになりました。その際に不知火が「似合ってるな!」と笑顔で天霧の肩を叩いたのに対して「もしや私が老けて見えると?」と尋ね返した天霧に、不知火はそっと視線をそらしました。

天霧におじいさんの恰好をさせた3人は、早速子ヤギたちの家へとやってくると風間が天霧に促して、少し咳払いをした天霧は年寄りのふりをして小屋の扉をノックします。

「町外れのおじいさんじゃよ、どれ子ヤギ達の顔をみたくてやってきた」

そこら辺にいたおじいさんの口調を真似をしながらおじいさんの演技をした天霧を近くの木の裏から見ていた風間は満足そうに「これで騙されるだろう」と得意げに言いましたが、不知火は到底これで子ヤギたちが騙されて表に出てくるとは思えませんでした。
やはりというべきか、窓口のほうへと不知火が目を向けると藍色の子ヤギと茶髪の子ヤギ、それと黒髪の子ヤギが窓からひょこりと顔を出しおじいさんのほうをじっと睨むように見つめるとやがて藍色の子ヤギが口を開きます。

斎藤「町外れに住んでいるのはおじいさん、の見た目をしているがおばあさんだったはずだが。」

沖田「そうそう。それにあの人今時のギャル風に話すのになんでそんなヨレヨレの口調なの?僕らの事騙そうって言うならちゃんと調査くらいしてきなよ」

天霧は暫く固まってから、油の切れたからくりのようにギギギっと音を鳴らしそうなくらいぎこちなく風間と不知火のいる方を見つめると、無言のまま「たすけて」と目が訴えているのが2人から見えました。そんな天霧に不知火は立ち上がろうとしましたが、風間はそっと口元に手を当てると天霧に向かってこう言います。

風間「甘えるんじゃない」

不知火「どの口が言うんだコイツ」

さてはて、子ヤギ達が小屋から出てくる日は来るのでしょうか。
天霧と3匹の子ヤギのにらみ合い(片方はおろおろしています)が勃発していますが今日はここまで。

つづく

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