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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
目次

ヘンゼルとグレーテル③


千鶴「離して!やめて!」

小柄な千鶴の足は地面から宙に浮き、おばあさんはそんな千鶴の様子などお構いなしに2人の父や周りにいる村人たちに「それ以上近付けばこの子供の頭をへし折ってやる」と脅しました。
それにはずっと村の子供に手を出されてきた魔女を討伐すべく意気込んで村人たちも尻込みをしてしまいます。重要なのは平助と千鶴を無事に村へと連れて帰ることでした。

原田「千鶴…!テメェ…」

平助は双子の妹の辛そうな顔に、自分が彼女のいう事を聞かずに此処へ来てしまったことを悔やみます。あの時は何故か、頭に靄がかかったように「ここにきてお菓子の家を見せてやらなければ」と思って疑わなかったのです。それすらも魔女の思案だとは知らずに。
だから、必死に千鶴を捕まえるおばあさんに食らいつきますが、おばあさんはそんな平助をいとも簡単に跳ね飛ばしてしまいます。

原田「平助…!」

自分の子供たちが粗末に扱われている状況に、お父さんはすぐにでも駆け寄って助けてやりたい気持ちと、そんな事すれば無事に2人が帰ってこないことを悟り歯がゆく感じていました。

そもそもが、自分が子供たちだけで森へと行かせなければよかったのだと。
そうすればきっと、2人は今まで通り、幸せに暮らしていたのでしょう。

一触即発、そう思われた時に、おばあさんを照らしていた太陽が一瞬陰り、木の上から落ちてきた何かがあっという間におばあさんを踏みつぶしてしまいました。
それにはお父さんも、傍に見ていた平助やその衝撃で跳ね飛ばされた千鶴も唖然とします。

風間「貴様!我が妻に何をする!」

藤堂「げっ!?なんでお前がいんだよ風間!?」

不知火「俺たちもいるぜー」

天霧「ご無沙汰しております」

沖田「何で君たちがここに居るのさ」

風間「我妻の悲鳴を聞いた。それだけだ」

沖田「君の妻じゃないから。痛い妄想はよしてよ」

おばあさんを踏みつけて降りてきたのは金髪の鬼さんでした。
綺麗に頭を踏みつけられたおばあさんは頭が地面へとめり込みぐったりとしています。
それに藤堂が口元をひくつかせると風間はそんな彼を見て「殺しておらぬわ」としゃがみこんでいる千鶴の腕を掴み立ち上がらせました。

藤堂「何はともあれ…ありがとうな、風間…助かったよ。まさかお前に助けられるとは思わなかったけど」

風間「ふん。救世主とは遅れてくるものだと聞いてな」

藤堂「どこで聞いたんだよそんな知識。というか隣町のお坊ちゃんがこんな森で何をしてんだ?」

風間「貴様らこそこんな森奥深くで何をしている。この辺はこの魔女がいるとうわさが流れていたはずだが」

藤堂「そ、それは」

沖田「君は何できた訳。暇なの?」

風間「言っておくが俺は昨日森へ入ったきり戻ってこない子供がいると聞いてやってきただけだ。それが未来の妻とあれば駆け付けるのは当たり前の事」

昨日平助と千鶴が行方不明になった話は隣町まで及んでいた。
そしてその噂は隣町の地主であった風間家当主、風間千景の耳にも入っていた。
天霧と不知火で解決するようにと遣いに向けようとした風間であったが、そんな時に、風間家の領地のそのまた隣の町にある、鈴鹿家からやって着ていた千姫がお供の君菊に連れられてやってくるなり風間の胸倉を掴んで言いました。

千姫「千鶴ちゃんが行方不明だって聞いた!?どうしよう、千鶴ちゃんきっと怖がっているわ…もう、さっさと見つけにいきなさい!!」

二階の窓から胸倉を掴まれながらひょいっと投げ落とされた風間は、地面に叩きつけられる前にひょいっと態勢を整え着地すると隣にやって着た天霧と不知火を連れて、森へ共にやってくることにしました。

そうしてやってきた森で、おばあさんに捕まっている千鶴を見つけて渾身の飛び蹴りをお見舞いしたという訳です。

原田「風間、千鶴を助けてくれてありがとう。本当に助かった」

風間「貴様に礼など言われる筋合いはない。お父様」

原田「誰がお父様だ。娘は嫁にはやらねぇぞ。」

不知火「ほら、風間。無事を確認出来たんだし、俺たちはそろそろ帰ろうぜ。」

風間「いいや、家に帰るまで安全かわからん。こやつらに任せておいたらまた…」

天霧「ワガママを申されるな、風間。この後我々には会合があると申し上げた筈」

風間「ならば俺が千鶴を家へと送り届けるから天霧、お前が会合に出ろ。」

天霧「そんな事まかり通る訳がありますまい。それに鈴鹿姫から、無事を確認したらすぐに屋敷に戻りその事を報告するようにと言いつけられております」

風間「そんなもの後にしろ。」

天霧「いいえ、そう言う訳には」

ずるずると天霧に引きずられながら、縄でひっ捕らえられたおばあさんを連れて退散していった風間達に、残された平助、千鶴、父と沖田を含む村人達は唖然と立ち尽くすとやがてそれぞれの家路につきました。

家に着くと、平助と千鶴は父に謝りながら大きな声を上げて泣き、そんな2人を見た父はそっと2人を抱きしめると、平助と千鶴の無事を喜びました。


大きな森の麓にある小さな家。
そこではお父さんと一緒に2人の子供が暮らしていました。
2人の子供のうち、男の子が平助、女の子が千鶴。
生活は決して裕福なものではありませんでしたが、親子3人力を合わせて暮らす生活に不満などなく。そんな彼らは今日、森の道を進んだ先にある開けた場所の果実園へと親子3人でやってくると、お弁当を広げてピクニックをしていました。

原田「今度はこうして俺が休みの日に3人で来ような」

藤堂「そうだな、こうして3人でお弁当を持ってきたら楽しいや」

千鶴「ふふ、平助君は楽しみで昨日から眠れなかったもんね」

藤堂「ち、千鶴~それは言わないでくれって頼んだだろ?」

おばあさんに扮していた魔女は、風間家が責任をもって対処するということでもう村で子供が居なくなる奇妙な事件もなくなり、安心して森へ入ってくることが出来るようになりましたが。
2人で散策に来るよりもっとお父さんとくるピクニックは楽しく平助も千鶴も幸せになりました。


「ヘンゼルとグレーテル」 完
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