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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
目次

赤ずきんちゃん

むかしむかし、あるところにそれは可愛い女の子がいました。
可愛らしい女の子は、誰もが一目見れば「可愛らしい」という子でしたが、
誰よりもこの子のおばあさんほど、この子を可愛がる子はいませんでした。
今回はそんな女の子のお話です。

土方「おい、またなんで俺なんだ」

沖田「え?何ですか土方さん。配役は全部僕に任せるって言ったじゃないですか。
なのに今更文句ですか?」

土方「俺はお前には任せねぇって言ったんだ。女の役を俺がやる必要はねぇだろうが。」

沖田「嫁入り前の千鶴ちゃんにその恰好しろっていうんですか?土方さんって鬼のようだって言われてますけど本当に鬼なんですね。あー可哀想に、自分が嫌だからって理由で…」

土方「わかったやればいいんだろ」

おばあちゃんはこの子を見ていると、何でもしてあげたくなり、
その子の大好きな赤い頭巾をこしらえてやりました。
するとそれがまた赤ずきんに似合うこと、もう他のものは被らないと決めてしまいました。
そこで、この子は赤ずきんちゃん、と呼ばれるようになったのです。


ある日、お母さんは赤ずきんちゃんを呼んで言いました。

近藤「トシ、ちょっといいかな?ここに団子の包みが1つと、日本酒がひと瓶ある。これをおばあちゃんのところへ持って行ってくれないか。おばあちゃんは病気で弱っているからな。お前の顔を見せて元気づけてやるといい」

土方「近藤さん…もうちょっとあんたは抵抗してくれ」

近藤「しかしトシ、このような機会がなければこのような格好すらすることもないだろう。人生何事も経験というからな。」

土方「頼むからその恰好に順応しないでくれ…」

がっくりと肩を落とした赤ずきんちゃんに、お母さんはひとつだけ注意をしました。
おばあちゃんの家に行くためには村から随分離れた森の中を通るしかありません。
そこには狼がいるという噂があるのです。誰よりも可愛い赤ずきんちゃんはきっと狙われるに違いありません。お母さんは心配そうに両目に涙を浮かべながら、「気を付けるんだよ」とそっと赤ずきんの手のひらに刀を乗せて頷きました。

土方「これ子供が主人公の劇だろう?子供になんてもん持たせてんだこの母親。」

あなたは子供ではないので大丈夫です。
母親に見送られるまま、おばあさんの家へと向かった赤ずきん。
まだお昼で明るいと言えど、お母さんの言いつけ通り、寄り道をひとつせずおばあちゃんの家へと続くあぜ道を少し早歩きで歩いていきます。

?「赤ずきんちゃんこんにちは」

森へ入る途中の木の裏からひょっこりと出てきたおおかみは、赤ずきんちゃんに挨拶します。
赤ずきんちゃんは森へと一人では来た事がなかったため、オオカミがどんな怖いものなのか知りません。別段怖いとも思わずオオカミを見つめます。

土方「何やってんだ、原田」

原田「今はオオカミだって、土方さん…俺もあんたと同じように、総司の奴に無理矢理な」

土方「そうか…」

怪訝そうな顔をした赤ずきんちゃんは、オオカミさんが自分と同じ被害者と知ると急に同情する眼差しに変わります。

原田「こんな時間にどこまで行くんだ?」

土方「ばあさんのところに行く」

原田「その風呂敷の中身はなんだ?」

土方「団子の包みと日本酒の瓶だとよ。病気で弱った人間に酒を持っていくのは些か疑問だが、近藤さんからの頼まれごとだしな。」

原田「土方さんらしいな。おばあさんのおうちは何処なんだ?」

土方「…あの大きな樫の木の下の家だ。その周りに石垣があるからすぐわかるらしい…」

赤ずきんちゃんは丁寧にオオカミに教えました。
ただその目はまるで鬼のように吊り上がって見えます。
ムリもありません、幼子とは違いここの赤ずきんちゃんはオオカミよりコワイ鬼なのです。
オオカミは「まさか何かしようってんじゃねぇだろうな?」と言いたげな無言な圧力と、片手に添えられた刀の恐怖に耐えきれず、用事を思い出したことにしてその場を足早に去りました。
去り際に「その少し行ったところに花が咲いているよ」とオオカミに聞いた赤ずきんちゃんは、多少オオカミに対しての疑惑の目を緩めると、言われた通りの方へと歩いていきました。
案外素直なのがここの赤ずきんちゃんなのです。


オオカミの言う通り、一面の花畑を見た赤ずきんちゃんは、早速書いた俳句に満足し、
オオカミに向けていた鋭い瞳はどこへやら。満足そうに花畑を後にした赤ずきんちゃんは、
寄り道はここまでにして早くおばあちゃんの家へと向かうことにしました。


おばあちゃんの家へ来て見ると、戸が開いたままになっているので、不思議に思いながらも中へ入った赤ずきんちゃんは、部屋の中を見て、床に敷かれている一組のお布団を見つけました。
中に誰かが横たわっているのが見え、赤ずきんちゃんは、おばあちゃんに挨拶をします。
しかし返事はありません。もう一度挨拶をしますが、それでも反応はありませんでした。
そこで赤ずきんちゃんは、草履を脱ぎ、部屋へと上がると布団の傍までやって着ました。

土方「寝てんのか?」

赤ずきんちゃんは、頭から布を被っているおばあちゃんに不審に思います。
布の隙間から見える赤髪を凝視したまま動かない赤ずきんちゃんに、部屋の中は緊迫とした空気に変わっていきました。

赤ずきんちゃんは、おばあちゃんのいる布団をただただ睨みつけていましたが、やがて思い出したように口を開きます。

土方「なんて大きい耳

?「お前の耳が良く聞こえるようにさ」

土方「なんて大きなおめめ」

?「お前のいるのが良く見えるようにさ」

土方「なんて赤い髪」

?「………赤ずきんちゃんがあんまりに見つめるから照れたんだよ」

赤ずきんちゃんは無駄に良い声で言うおばあちゃんに口元をひくつかせました。
やがて、赤ずきんちゃんは何を思ったのでしょう。おばあちゃんへのお土産が入っていた風呂敷を近くに降ろすと、おばあちゃんの頭から被っている布を掴み引っ張ったのです。
もちろんおばあちゃんは抵抗します。なんせおばあちゃんはこれを取られては困るのです。
布団の中から出てきた手が布をおさえ、赤ずきんちゃんはそれに怯むことなくもう片方の手も添えて全力で引きはがしにかかります。

?「ちょっと待てよ土方さん!?ここは俺があんたを食べ…」

土方「てめぇいつまでそんなもん被ってやがる。布の隙間からてめぇの赤い髪が丸見えなんだよ原田ァ!」

なんと布団に入っていたのはオオカミさんだったのです。
赤ずきんちゃんを油断させてぺろりとその大きな口で一飲みしてしまおうとしたオオカミは、赤ずきんちゃんの凄みにすっかりベッドの端で丸くなってしまいます。

土方「てめぇうちのばあさん何処にやった。その腹にいんのか?コラ」

刀を持ち、凶悪顔をする赤ずきんちゃんに、もうどちらが悪者かわかりません。
オオカミは赤ずきんちゃんの持つ刀に青ざめていると赤ずきんの後ろの戸が開き「左之―帰ったぜー」と軽い声がしました。

?「いや悪いな。総司には待ってるように言われたんだけどよ。まだ土方さん来てない……だろ……あれ?」

入ってきたのはおばあさん。どうやらオオカミさんは来るなりおばあさんに留守番を押し付けられ、なかなか帰ってこないおばあさんと、予定より早くやってきてしまった赤ずきんちゃんに、「おばあちゃんをもう食べた提」で話を進めたようです。

おばあちゃんは刀を突き付けられたオオカミさんと、鋭い眼光の赤ずきんちゃんを見て固まった後、無言で戸を閉めました。

「新八ィィィ!?」


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