襲撃
主と共に馴染みの茶屋に着いた。
主はあんみつ、俺は団子を頼み、既に目の前に運ばれてきたのだが、なかなか目を合わすことができない。
目が合いそうになれば、お互いに顔を背けてしまう始末だ。
こんなことでは主を意識しているのがバレバレだ。
これではいけないと、俺は心を落ち着かせるために茶を一口飲む。
すると、主も落ち着こうとしたのか、赤い顔のまま湯呑みを手に取った。
しかしーー
「あっ!」
慌てていたのか、主は誤って茶をこぼしてしまった。
こぼれたお茶は、机の上に大きな池を作る。
「すみません…。」
「いや、このくらい気にしなくていい。主に掛からなくてよかった。」
机の上にこぼれた茶を、手直にあった布巾で拭きつつ、ふとあの時のことを思い出す。
「そういえば、まだ主にちゃんと謝っていなかったな…。」
「…なんのことですか?」
「主に茶を掛けてしまった時のことだ。」
以前のイタズラのことを既に忘れかけていたのか、主は思い出すような仕草をする。
主の秘密がバレてしまうきっかけとなったイタズラだったというのに、もう覚えていないのかーー。
そう思うと同時に、あの時見た主の肌を思い出してしまい、頭を振る。
「…ああ、あの時のことですか。そんな改まって謝るほどのことでもないですよ?」
「いや、さすがにやりすぎたと思ってな…。あの時はすまなかった。」
俺は懐から1枚の栞を取り出す。
あの時、渡せなかった花を押し花にして作った栞だ。
何となく、そのまま枯らしてしまうのが惜しくて、歌仙にやり方を教えてもらった。
「部屋に行った時に渡そうと思っていた花だったんだが…。なかなか渡せなかったからな。…受け取ってくれるか?」
主に栞を差し出すと、意外にも素直に受け取ってくれた。
そして、嬉しそうに頬をゆるめる。
「ありがとうございます。この花…庭に咲いていたものですよね?好きな花なので嬉しいですーー。」
大事そうに栞を手提げにしまう主に、こちらまで嬉しくなる。
「主はこの花が好きなのか?」
「はい…。現世にいた頃から何かと縁がある花で…気づいたら好きになってました。」
これは特別な花だと笑う主を見て、胸に何かが込み上げてくる。
むず痒いような、叫びたくなるような感情が俺を支配する。
なんというか、もう衝動に近い。
主が可愛くて可愛くて仕方がない。
まさか、自分がこんな風に恋に溺れるとは思ってもみなかった。
「…これは驚きだ。」
俺は主を見ていられなくなり、机に突っ伏した。
「鶴丸様?どうしたんですか?」
「…なんでもない。」
顔のほてりを抑えつつ、これからどうしようか、むしろどうしてやろうかと考えているとーー
ドォンッ!!
大きな爆発音が辺りに響き渡る。
「っ!何だ!?」
急いで外に出て、周りを見やると、ここから通りを2つ超えた場所で轟々と黒い煙が上がっている。
「時間遡行軍だ!」
どこかで悲鳴と誰かが叫ぶ声が聞こえた。
人の波が向きを変え、煙から逃げるように押し寄せる。
それに続き、銃声や刀と刀がぶつかり合う音も聞こえてきた。
「鶴丸様!」
主が後ろから追いかけてきた。
素早く周囲を見渡した主は、瞬時に状況が理解出来たのか、俺に指示を出す。
「恐らく、他本丸の刀剣男士が戦闘中です。鶴丸様は援護へ向かってください。」
「主はどうするつもりだ?」
「見たところ、まだ審神者になって間もない方が多くいらっしゃいます。その方々を転移装置の方へ誘導し、順次避難を行います。」
「自分の身はどうやって守るつもりなんだ。俺が主を放っておけるような臣下に見えるか?」
「自分の身は自分で守れるだけの力はあるつもりです。こう見えても、結界術は得意なんですよ?」
主は俺の目を見据え
「鶴丸様、お願いしますーー。」
そう言い放った。
自分の意思を変える気は無いようだ。
主の目からは固い決意がみてとれた。
「っ…!絶対に無理をするんじゃないぞ!」
「はい!」
主は思い出したように手提げを漁り、何かを差し出してきた。
「御守りです。…無事に戻ってきてくださいね。」
俺は主の手から御守りを受け取る。
「おいおい、心配症か?」
不安げな主を安心させるよう主の頭を撫でる。
「俺を誰の刀だと思っている?やる時はやる、そんな主の刀なんだ。大船に乗ったつもりで任せておけ。」
少しだけ主の緊張が解けたことを確認した俺は、急いで煙の挙がっている場所へ向かった。
戦場に到着すると、既に何人かの刀剣男士が戦闘中だった。
しかし、次から次へと現れる時間遡行軍に手を焼いているようで、戦況は芳しくない。
戦況を分析していると、頭上から敵の気配を感じた。
すぐさまその場を飛び退く。
脇差の素早い剣戟が髪をかすめ、髪が数本宙を舞う。
その一瞬の間に、新たな時間遡行軍が召喚され、あっという間に囲まれてしまった。
「普段ならこの状況を楽しませてもらうところだが…主のことがあるんでな…。悪いがさっさと終わらせてもらうぞーー。」
俺は自らの刀身をスラリと抜き放ちーー
「さぁ、大舞台の始まりだ!」
戦いの渦中に身を投げたーー。
主はあんみつ、俺は団子を頼み、既に目の前に運ばれてきたのだが、なかなか目を合わすことができない。
目が合いそうになれば、お互いに顔を背けてしまう始末だ。
こんなことでは主を意識しているのがバレバレだ。
これではいけないと、俺は心を落ち着かせるために茶を一口飲む。
すると、主も落ち着こうとしたのか、赤い顔のまま湯呑みを手に取った。
しかしーー
「あっ!」
慌てていたのか、主は誤って茶をこぼしてしまった。
こぼれたお茶は、机の上に大きな池を作る。
「すみません…。」
「いや、このくらい気にしなくていい。主に掛からなくてよかった。」
机の上にこぼれた茶を、手直にあった布巾で拭きつつ、ふとあの時のことを思い出す。
「そういえば、まだ主にちゃんと謝っていなかったな…。」
「…なんのことですか?」
「主に茶を掛けてしまった時のことだ。」
以前のイタズラのことを既に忘れかけていたのか、主は思い出すような仕草をする。
主の秘密がバレてしまうきっかけとなったイタズラだったというのに、もう覚えていないのかーー。
そう思うと同時に、あの時見た主の肌を思い出してしまい、頭を振る。
「…ああ、あの時のことですか。そんな改まって謝るほどのことでもないですよ?」
「いや、さすがにやりすぎたと思ってな…。あの時はすまなかった。」
俺は懐から1枚の栞を取り出す。
あの時、渡せなかった花を押し花にして作った栞だ。
何となく、そのまま枯らしてしまうのが惜しくて、歌仙にやり方を教えてもらった。
「部屋に行った時に渡そうと思っていた花だったんだが…。なかなか渡せなかったからな。…受け取ってくれるか?」
主に栞を差し出すと、意外にも素直に受け取ってくれた。
そして、嬉しそうに頬をゆるめる。
「ありがとうございます。この花…庭に咲いていたものですよね?好きな花なので嬉しいですーー。」
大事そうに栞を手提げにしまう主に、こちらまで嬉しくなる。
「主はこの花が好きなのか?」
「はい…。現世にいた頃から何かと縁がある花で…気づいたら好きになってました。」
これは特別な花だと笑う主を見て、胸に何かが込み上げてくる。
むず痒いような、叫びたくなるような感情が俺を支配する。
なんというか、もう衝動に近い。
主が可愛くて可愛くて仕方がない。
まさか、自分がこんな風に恋に溺れるとは思ってもみなかった。
「…これは驚きだ。」
俺は主を見ていられなくなり、机に突っ伏した。
「鶴丸様?どうしたんですか?」
「…なんでもない。」
顔のほてりを抑えつつ、これからどうしようか、むしろどうしてやろうかと考えているとーー
ドォンッ!!
大きな爆発音が辺りに響き渡る。
「っ!何だ!?」
急いで外に出て、周りを見やると、ここから通りを2つ超えた場所で轟々と黒い煙が上がっている。
「時間遡行軍だ!」
どこかで悲鳴と誰かが叫ぶ声が聞こえた。
人の波が向きを変え、煙から逃げるように押し寄せる。
それに続き、銃声や刀と刀がぶつかり合う音も聞こえてきた。
「鶴丸様!」
主が後ろから追いかけてきた。
素早く周囲を見渡した主は、瞬時に状況が理解出来たのか、俺に指示を出す。
「恐らく、他本丸の刀剣男士が戦闘中です。鶴丸様は援護へ向かってください。」
「主はどうするつもりだ?」
「見たところ、まだ審神者になって間もない方が多くいらっしゃいます。その方々を転移装置の方へ誘導し、順次避難を行います。」
「自分の身はどうやって守るつもりなんだ。俺が主を放っておけるような臣下に見えるか?」
「自分の身は自分で守れるだけの力はあるつもりです。こう見えても、結界術は得意なんですよ?」
主は俺の目を見据え
「鶴丸様、お願いしますーー。」
そう言い放った。
自分の意思を変える気は無いようだ。
主の目からは固い決意がみてとれた。
「っ…!絶対に無理をするんじゃないぞ!」
「はい!」
主は思い出したように手提げを漁り、何かを差し出してきた。
「御守りです。…無事に戻ってきてくださいね。」
俺は主の手から御守りを受け取る。
「おいおい、心配症か?」
不安げな主を安心させるよう主の頭を撫でる。
「俺を誰の刀だと思っている?やる時はやる、そんな主の刀なんだ。大船に乗ったつもりで任せておけ。」
少しだけ主の緊張が解けたことを確認した俺は、急いで煙の挙がっている場所へ向かった。
戦場に到着すると、既に何人かの刀剣男士が戦闘中だった。
しかし、次から次へと現れる時間遡行軍に手を焼いているようで、戦況は芳しくない。
戦況を分析していると、頭上から敵の気配を感じた。
すぐさまその場を飛び退く。
脇差の素早い剣戟が髪をかすめ、髪が数本宙を舞う。
その一瞬の間に、新たな時間遡行軍が召喚され、あっという間に囲まれてしまった。
「普段ならこの状況を楽しませてもらうところだが…主のことがあるんでな…。悪いがさっさと終わらせてもらうぞーー。」
俺は自らの刀身をスラリと抜き放ちーー
「さぁ、大舞台の始まりだ!」
戦いの渦中に身を投げたーー。
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