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勇者レオナルドとお供の大きなソニック

原作: その他 (原作:血界戦線) 作者: お茶菓子
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はじまりは突然に

打ち付けるような激しい頭の痛みを覚えてハッと目を覚ました。視界には蒼く広い空が広がり、植物の香りが鼻腔をくすぐる。ここはどこだ?もともと僕はどこにいた?なんでここに?色々な疑問で埋め尽くされる。上半身を持ち上げてみる。
関節がギシギシ悲鳴をあげる。全身酷く打ち付けたようだ。見える範囲だけでも数カ所の青痣がみえる。大丈夫、この程度の怪我ならいつもしているから慣れている。??いつも?いつもっていつだ?
ツキンと針で刺されたような頭痛の後、あのめちゃくちゃで、はちゃめちゃで、憂鬱で、最高にクレイジーな街を思い出した。
“ヘルサレムズザロット”
あのクソッたれな街をだ。妹に視力を奪われる覚悟をさせた街、妹の視力を奪った街。異界と現世の交わる街。
僕とライブラを引き合わせた街。
あぁそうだ、僕は任務を遂行していた。あの気まぐれな堕落王ヘムトが登場するまでは。

「ハァイ?ラァァァァァイブラの諸君??今日も元気にくだらない世界を救ってるかい????」
例のごとくHL中のテレビをハイジャックした金髪の自称”神”は頭を振り乱しながら画面の中で暴れていた。
異界から逃げ出した巨大生物をライブラ構成員でハントしようとしていた矢先だ。
今まさに血法をかまそうとしていた構成員達が固まる。

「まったく、こんなに晴れた日にそんな鬱々とした事をしているから君達はいつまでも辛気臭い集団なんだぞぅ?ってことで!!!!!」

「このっ!」

「私がっ!!!」

「プゥゥゥゥゥゥレゼンッッをくれてやろうっ!!!!」

街中に響き渡る大音量で叫ぶヘムトを前にレオナルド・ウオッチは空いた口が塞がらない。あぁん?と液晶画面にオラつくSS先輩。
まったく、いつものことながら勝手なことだ。頭を抱えるスティーブンさんの様子が目に見える。

「失礼を承知で、貴殿の目的を聞いても良いだろうか」
我らがリーダーが真摯に尋ねる。返り血で染まった袖よりも画面を睨む瞳が怖い。

「もくてきぃ??そんなものは決まっているだろう!!」
くるりと回転する堕落王。

「退!」

「屈!」

「凌ぎさ!!!」
予想されていた回答であるが、相変わらず理不尽極まりない内容を聞かされると共に、
無線機から『少年は、ザップと合流するように』との命令が下る。

「そんなことより、ゲームを始めようじゃぁないか!」
ルールは簡単と、許可なくヘムトは話し続ける。

ボロボロになった街の中で目立った銀髪を見つけた。少し安堵を覚えるのは日頃の刷り込みなのだろうか。

「ザップさっ………」

慌てて駆け寄ろうと片足を地面に着いた。
が、そこにあるはずの地面がない。慌てる余裕もなく、どこかを掴もうとした手は虚しく空を掻く。
独特のの浮遊感に包まれさっきまで立っていた地面も消え去るのを感じた。

「うそぉぉぉぉぉぉ!!!!あぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」

上げる悲鳴は足元に落ちていく。
レオナルドは真っ逆さまにいつのまにかパックリと口を開けた地面に吸い込まれていった。最後に見たのはあんな顔するんだというほど焦ったザップ・レンフロの顔だった。

「うぉぉっ!思い出した!!」

ヘムトの顔を思い出すとなんだか腹が立ってくる。
大きな声に驚いたのか、どんな所にも付いてきてくれるアイドル兼相棒のソニックがキキッと反応した。

「ソニック!怪我はない?」
スリスリと指に頬ずりする仕草にたまらなく癒される。
しかし、よく見てみるとソニックの様子が少しおかしい。明らかにレオナルドよりも大きいのだ。

レオナルドもナチュラルにソニックを見上げ時間遅れで、驚こうとした。しかし、自分の中で何か落ち着いてしまったらしく、ソニックも怪我なさそうだしまぁいつか元に戻るだろうと諦めた。
しかし、大きくなったソニックもそうだが、自分自身の格好にも違和感がある。普段から愛用しているシャツの影はなく、爽やかに吹く風を全身に感じる。
全身に。
“全身”
そう。レオナルドウオッチは生を授かったいつかと同様の格好をしていた。
正しくは全裸とでもいおうか。
ソニックとお揃いの装いである。
僅かながら、違いがあるとすると、ソニックには毛が生えており、レオナルドにはこれといった毛が生えていないという事だろうか。

レオナルドは本日二度目の悲鳴を上げた。

ありがたいことに着るものは木陰に丁寧に用意されていた。”これを着たまえ!”という立て札まで丁寧に添えられていた。
装いは勇者のそれのようで、風になびくマントと腰に下げられた剣。そしてこれは落ちたころからかぶっていたようだが、王冠のような物が頭にある。足元は履き慣れない革製のブーツである。
カッコいいに部類する装いであろう。例えばスティーブンさんの様な伊達男や、ハマーさんのような甘いマスクの男性なら。しかし当のレオナルドウオッチはチンチクリンである。服に着られているという表現を聞くがまさにそれを体現した格好である。そして重い。身につける全てが重く剣に関してはいつ地面を突き刺すか分からない程である。

しかし、レオナルドはこの世界を一度全てを諦めた男である。よし、問題はないと山積みの問題を目の前にとりあえず歩き出した。
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